O さん宅 千葉
家族が自然に集まる開放感あふれるLDK
DKに続くバルコニーの床は室内と同じ石タイル。テーブルは家具ショップ「RUSTIC TWENTY SEVEN」に特注しました。
秋から春は温水床暖房に利用できる多機能薪ストーブが活躍。夏は家じゅうの窓を開け、エアコンなしの暮らしを楽しみます。
自然いっぱいの中で子育てをしたいと移住を決意
「野鳥のさえずりは一日じゅう聞こえるし、夏は鈴虫のオーケストラが。寒い季節は湖面に朝もやがかかり、幻想的なシーンに出会えます。車もほとんど通らないから、遊びに来る友人からは〝隠れ里〟と呼ばれているよね(笑)」
眼下に広がる湖を眺めながら、2年目になる森の暮らしを楽しそうに語ってくれたOさん夫妻。「ぼくが育ったのは九州の小さな町で、中心をはずれれば田んぼや畑や森が身近にありました。生き物たちからは楽しいことをいっぱい教えてもらった。何もなかったけれど、ある意味、豊かだったのだと思います」
2人目のお子さんが誕生したとき、自然に囲まれながらのんびりと子育てをしたいと、思いきって東京を離れることを決断。まもなく、海も山もある湘南エリアを中心に土地探しが始まりました。休みのたびに遠くは大磯まで足を延ばしましたが、予算に見合うと感じられる土地にはなかなか出会えず、あっという間に2年が経過してしまいます。
「絶望的な気持ちになりながらスマホで地図を眺めていたら、千葉県が目に入って。東京から100㎞圏内だし、そのときなぜかピンときましたね」とご主人。けれど、奥さまは「絶対いや」と。それならば、実際に見てもらおうと候補の別荘地に誘いました。すると、「一瞬で私のツボにはまりました(笑)。これまでに感じたことのない心地よい風が木立の中を吹き抜けていたのです」。
DIYで仕上げれば愛着が増し、コストの節約にも
「森の中に建てるなら」とご夫妻がイメージしたのは、アメリカのナンタケット島に残る開拓時代の住宅や、絵本作家ターシャ・テューダーが暮らした家。「年月を経るごとに表情豊かになっていく魅力を、思う存分に味わいたいと思って」
そんな家づくりのパートナーに選んだのは「タキタロウ ウッドハウス」の瀧口和朗さんでした。初対面で意気投合し、「ほかのチョイスはない」と、その日のうちにプロデュースを依頼。すべて自然素材を使うこと、部屋数は少なくてもゆったり開放的な空間が欲しいと伝え、ディテールについては何時間も話し込んだといいます。「建築様式やインテリアにくわしいだけでなく、ぼくの知らない素材もご存じで、リクエストにこたえるのに必死でした」と瀧口さん。
さらに、Oさんの家づくりにはもうひとつテーマが。それは壁や床の一部を自分たちで仕上げること。「この先、子どもに何を残してあげられるのだろうと考えたとき、家のどこかに親みずからが手をかけた思い出があってもいいかな、と。それに、施工に参加するって楽しいでしょう?」。瀧口さんの自邸もセルフビルドで建てたと知り、頼りになる相棒がそばにいてくれて心強かった、とも。
Oさんファミリーの「のんびりハウス」は現在進行形。「子ども部屋の壁は、数年後に子どもと一緒に塗るつもり。地下室もガレージも未完成。一体いつになったら終わるのだろう」。まだまだ続くワクワク感。ご家族の楽しそうな姿が印象的です。
吹き抜けをとり込んだ気持ちのいい空間。石タイルは半年かけてご主人が貼りました。
標高100mの丘にどっしりと立つOさん宅。約740坪の敷地は雑木を伐採して整地。切った木は無駄なくストーブの薪にします。
木々の向こうにはダム湖が。
バルコニーにはフルオープンのテラス窓を採用。フレームいっぱいに壮大な景色が広がります。「1日の始まりは、ここで過ごすコーヒータイム。四季を通しての日課です」とご主人。
ご主人の大好きな作業のひとつが薪割り。割ったものはこのまま2年間放置して乾燥させるのだそう。「どさっと斧を振り下ろす瞬間、なんともいえずスカッとします(笑)」
外装も内装もとことん自然素材で
森の家にふさわしいデザインにしたいと、大きな屋根をのせた北米スタイルに。ポーチのキャノピーはティンバーフレームのトラス組み、屋根の上にはかわいいゲーブルドーマーが。
ハンモックが大好きな瑛二くんと陽日くん。友人のお子さんたちにも好評なのだそう。夏は木陰+ハンモックで最高の昼寝ベッドに。
年月を経ると屋根も外壁もシルバーグレーに
レッドシダーシェイクの屋根と無塗装のレッドシダーを目板張りにした外壁は、Oさん宅の最大の特徴。シダー材で葺いた屋根は、遠くから見てもぬくもりを感じます。
すべての窓にデザインのいい断熱ペアガラスサッシを採用。
アンティークドアにこだわった“ 家の顔”
友人が営むインテリアショップで購入したフランスのアンティークドア。ガラス窓には開閉式の仕掛けがあり、夏は窓を開けて風を通します。
靴入れにしている棚もフランスのアンティーク。
ダイナミックな空間が気持ちいい吹き抜け
フランスから個人輸入したシャンデリアを梁に設置。その真下にくるようにダイニングテーブルを置きました。上下階で家族のコミュニケーションがとりやすい吹き抜けですが、「構造の美しさを下から眺めるのも楽しい」とご主人。
毎日使うキッチンだからデザインにこだわって
「RUSTIC TWENTY SEVEN」に特注したシェーカースタイルのキッチン。タイルやレンジフード、シンクなど細部にもこだわりが。オープン棚には、「瓶」好きのご夫妻がさまざまな店で購入したアンティークの瓶が並んでいます。
収納=物置きではなくパントリーにもこだわりが
階段室を木製の縦桟で囲い、訪問者の気配を感じつつ、手前の居室は玄関からは見えにくいつくりに。
地下への入り口は階段室の下にあり、現在は脚立を利用して上下移動していますが、将来は階段をつくる予定。
ラックはフランスのアンティークで、本来はガーデン用なのだそう。奥のドアは勝手口です。
大きな窓で景色を存分に楽しむ
アンティーク家具でコーディネートした週末ヘアサロン。お客さまにも素晴らしい景色を楽しんでもらいたいと、窓に向けてドレッサーを置きました。
友人のインテリアショップで購入したアンティークドア。「窓の装飾がハサミのように見えたから」と、美容師さんらしい着眼点でセレクト。
おしゃれなペンダントランプは、衝動買いしたまま納戸の中にありました。「ようやくしっくりおさまる空間に出会えて」と奥さま。
サニタリーは清潔感のあるブルーをさして、すっきりと
脱衣室や洗濯室も兼ねる洗面室は広めに確保。右手の衣装キャビネットは松戸のアンティークショップで購入。タオルや衣類などを収納しています。
ブルーのモザイクタイルを貼ったカウンター、スクエアタイプの洗面ボウルでおしゃれにコーディネート。
窓の外を見ながらバスタイム
レッドシダーを壁面に張った浴室は、現場で打ち合わせ中に思いついて実現。バスタブに横になったとき外の景色を楽しめるように、低めでワイドな窓を採用。
トイレの壁は未完成。設備機器設置のために一部のみペイント。アンティーク風のピンクのミルクペイントで仕上げます。
仕切り壁は最小限にして開放感を優先
この家で唯一ドアのある部屋が、奥の寝室。手前の子ども部屋とホールは仕切りをつくらず開放感を楽しみます。
壁の仕上げが未完成の子ども部屋は、スイスしっくいにトライしようと考えているそう。
手すりを補強するためのブレースにおしゃれな金具が。こまかなところにも好きなデザインを徹底。
埋め込みスイッチを設置するため、カバーまわりは先にペイントしていましたが、ようやく塗り残し部分に着手。
プロフィール
DATA
家族構成 |
夫婦+子ども2人+犬1匹 |
敷地面積 |
2446.02㎡(739.92坪) |
建築面積 |
110.13㎡(33.31坪) |
延べ床面積 |
145.74㎡(44.09坪)1F 87.48㎡ + 2F 58.26㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2013年9月~2014年4月 |
本体工事費 |
約3800万円(オーダーキッチン、施主施工 部分材料費含む エコキュート設置工事費、暖房機能つきストーブ&床暖房費、外構工事費は別) |
3.3㎡単価 |
約86万円 |
プロデュース |
タキタロウ ウッドハウス ☎0475-35-0225 |
設計のポイント
タキタロウ ウッドハウス
瀧口和朗さん
1968年生まれ。工科美術専門学校卒業。会社勤務のかたわら建築パースなどの通信教育を受講。独立後、住宅、庭園などライフスタイルをトータルにプロデュース。
プロデューサーという立場で施工会社の選定、基本設計、素材調達、施主施工など全般をサポートしました。Oさんが最もこだわったのがスタイル。棟からバルコニーまで一体で続く左右非対称の大屋根にドーマーを設け、屋根裏を感じさせるデザインを提案。レッドシダーの屋根や外壁の仕上がりにもご満足いただきました。
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