【Sさん宅(神奈川県)】
結婚後にSさん夫妻が入居したのは、築30年の一戸建て。とにかく冬が寒く、建てかえる予定でいましたが、なかなか計画が進まないまま15年以上もたってしまったとか。その間、新築も考えるようになり、土地探しを始め、ハウスメーカーのモデルハウスを回り、奥さまはインテリアコーディネーターの資格も取得……と、着々と準備を重ねました。そしてついに環境抜群の、思いどおりの土地を購入。
設計を依頼したのは、これまでいくつかのビルダーで実績を積み、数多くの住宅の設計を担当してきた木村善久さん。「以前所属されていたビルダーで木村さんが手がけたお宅を拝見して、ナチュラルな作風がすっかり気に入りました。ちょうど木村さんが独立したばかりだったので、ぜひ!とお願いしたんです」
奥さまが新居に求めたのは、「珪藻土の壁や無垢のフローリングなど、自然素材の質感がやさしい、空気のきれいな家」。ほかにも夏涼しく冬あたたかい高気密・高断熱性能や、おしゃれなオーダーキッチン、機能的な動線、適材適所の収納など、数々の要望を盛り込んで見積もりをとったところ、予算をオーバーしてしまいました。
そこで木村さんは、設備機器や素材を変えることでコストダウンできそうな30の〝予算低減項目〟をあげ、ご夫妻と検討。温水パネル暖房を今回は断念し、トイレは見直し、一方でバスルームはユニットにはしないで予定どおり造作工事で……など、コストを抑えるためにあきらめられる部分とそうでない部分を、ていねいに見極めていったのです。結果、こだわりは生かしたまま、本体工事費を当初より約350万円抑えることに成功。「意見をじっくり聞いてもらえたおかげで、100パーセント納得できる、大満足の家になりました」
Sさん宅の工夫
予算内におさめる工夫
設備機器や素材などを変更すればコストが下がる“予算低減項目”をあげて、ひとつひとつ検討。変更可能なものと予定どおり採用したいものを、しっかり見極めました。
好みのインテリアにする工夫
「避暑地の林に佇むフレンチレストラン」のイメージ実現のため、大人っぽいナチュラルテイストが得意なビルダーに依頼。スムーズに希望が伝わりました。
暮らしやすさのための工夫
スムーズな動線にこだわり、ぐるりと回れる回遊動線を採用。行き止まりがないのでストレスがありません。家事の能率もアップ!
1F DK
フローリングはやさしい質感のカバザクラ材。仕上げはナチュラルな蜜蝋ワックスにこだわりました。キッチンキャビネットは床材と相性のいいホワイトバーチ材。
1F ダイニング
【Point】自然素材を多用してナチュラル&エレガントに
水回り以外の1階全体と階段、2階の廊下の壁は、すべて珪藻土仕上げ。調湿作用があり、梅雨どきも快適というメリットが。
チェリー材のテーブルは群馬の「カグオカ」でオーダー。アーコールチェアは吉祥寺の「トランジスタ」で。照明は「ハウス&ガーデン」のもの。ひとつひとつに愛着が。
1F キッチン
【Point】ぐるりと回れるアイランド型で大正解!
アイランド型にするか、壁づけのペニンシュラ型にするか、かなり悩んだそうですが、このほうが両側を通れて動線がスムーズ。
【Point】キッチンと洗面室をつなげて家事をしやすく
扉の向こうは洗面室。キッチンでの作業と洗濯を同時進行させるときなど行き来がスムーズなので、家事のストレスが軽減。
ステンレス製のシンク一体型カウンター、シャープなデザインのレンジフードというプランから、ホウロウシンク、タイルトップカウンター、白いレンジフードに変更。おしゃれなナチュラルキッチンに。
【Point】食洗機から食器を戻す動線も考慮!
【写真右】キッチンの収納スペースは、奥さまが図面を描いて配置を決定。洗い終わった食器を引き出しにしまう動線も、こんなにスムーズ。
【写真左】吊り戸棚の扉には、30種ほどのサンプルから選んだ「がらすらんど」のガラスを。白いつまみと引き出しの取っ手は「イケア」で。
1F パントリー
半畳ほどのスペースですが、コの字型の棚のおかげで使い勝手は抜群。アーチ状の入り口はダイニング側から中が見えにくく、扉がないので出入りもラク。
1F デスクコーナー
キッチンの一角に設けたコンパクトなコーナーですが、家事の合間に使いやすく、パソコンや本、文具などをすっきりとおさめられます。
1F LD
LDは一部を吹き抜けにして、南面にハイサイドライトも設けました。サッシは気密性と断熱性にすぐれ、紫外線が当たるとセルフクリーニング機能も発揮するガラスを使った、「アンダーセン」のペアガラスサッシ。
1F 和室
【Point】見送った温水パネル暖房をあとで設置できるつくり
温水パネル暖房を今回は断念して、約140万円コストダウン。将来実現できるよう、和室の設置予定場所を板張りにしてコンセントも準備。
ふすまには「ローラ アシュレイ」の壁紙を。畳は壁紙に合わせて縁をブルーグレーに。スマートな神棚は木村さんのアイディアで、ご主人のご両親も気に入ってくれたとか。
1F リビング
奥さまは具体的な数値をあげて高気密・高断熱の住まいを希望。そのかいあって、吹き抜けがあっても快適な室温です。上部の小窓は、左手にあるハイサイドライトのシェードを開閉するチェーンに手が届いて便利。
2F 子ども部屋
【Point】亜里紗ちゃん希望の丸窓はメーカーを変えてコストダウン
「アンダーセン」の丸窓は高価だったため八角形にする案も出ましたが、“丸”があきらめきれず、メーカーを変えて実現。
きれいなラベンダー色は、亜里紗ちゃんと奥さまとで、何千色もあるペイントの色見本から選択。シャンデリアは照明が充実したネットショップ「アンバーフォレスト」で。
2F 寝室
【写真左】寝室、子ども部屋ともに、床はパイン材のフローリング、壁はアメリカの「ケリーモア」という、有害物質を含まない水性塗料仕上げ。エレガントな雰囲気のシャンデリアやカーテンが素敵です。
【写真右】ウォークインクローゼットには手持ちのタンスを置きたかったので、サイズを合わせて設計。通路の幅がちょうどよく、とても使いやすいとか。
1F 洗面室
【Point】洗面台は既製品ではなく造作でナチュラルに
カウンタートップは輸入品の天然石、木部はホワイトバーチ、洗面ボウルは「セラトレーディング」が扱うヴィトラ社のもの。
奥さまはいつも洗面室でメイクをするので、椅子に腰かけて使えるようにカウンター下はオープンスペースに。鏡は「サーブ」のもの。
1F トイレ
【Point】便器を見直してコストダウン
ご主人はタンクレスタイプが希望でしたが、タンクつきに変えてコストダウン。2階のトイレも当初の予定より低価格のタイプに。
トイレは手前の洗面室側にも奥の玄関ホール側にも出入り口があり、通り抜けできるつくりに。花柄のボウルやアンティーク風のミラーでエレガントな味つけを。
1F 玄関
【Point】回遊式の間取りで ストレスなし!
1階は、玄関ホールを基点に、LD、キッチン、洗面室&トイレと、ぐるりと1周できる間取り。洗濯機のある洗面室から2階へ洗濯物を干しに上がるのもラクです。
【写真左】白い珪藻土の壁に「ロブホーム」オリジナルのアイアンの手すりや、「ハウス&ガーデン」の照明が映えます。たたきはエスティアストーン(石英)を乱張りに。10㎝角の石材を張る予定でしたが、味わいが増しました。
【写真右】収納量の豊富なシューズクローゼットも。
1F 浴室
【写真左】コストを抑えるためユニットバスも検討しましたが、どうしてもあきらめられず、造作のバスルームに。天井には腐食しにくいレッドシダー材を。
【写真右】壁面はシンプルなタイルにして、一部分にイタリア製タイルをライン状にあしらってポイントに。
階段
目線の先には、吹き抜けに面した壁にあしらったアイアンパーツが。階段の幅を広くとり、勾配もゆるめに。踊り場も設けたので、ご両親が訪れたときも安心です。
外観
奥さまがイメージしていた「避暑地の林に佇むフレンチレストラン」のイメージどおりの外観。外壁はしっくい風の塗り壁、玄関ドアは北欧製の断熱ドアです。
わが家のお気に入り
暮らしに楽しみをプラスする吹き抜けの小窓
1階のお母さんから呼ばれたら亜里紗ちゃんが「は〜い!」。対面側の寝室にも同様の窓があり、吹き抜け越しに親子で会話できます。
裏表で2つのカラーを楽しめる無垢材のドア
各部屋に用いたのは無塗装の無垢材ドア。廊下側は壁と同じ白、室内側はそれぞれの部屋に合わせて雰囲気のある色にペイント。ドアをあけるたび、気持ちがなごみます。
収納から予定変更。ご主人のミニ書斎が誕生!
寝室の一角に布団収納庫を設ける予定でしたが、ご主人の希望でパソコンスペースに変更。上部に棚も設けて使い勝手よく。
DATA. Sさん宅(神奈川県)
Profile.
Sさん一家
ご夫妻と小5の亜里紗ちゃんの3人家族。「依頼したロブホームさんは群馬の会社ですが、神奈川でも引き受けてくれました」。温泉旅行を兼ねて、群馬まで家族3人で打ち合わせに行ったことも。
設計のPOINT
ロブホーム 代表 木村 善久さん
信頼できる業者さんの協力のもと、できるだけコストを抑えるようにしていますが、それでも予算をオーバーした場合は、コストダウンできそうな項目を、施主さんとひとつひとつ見直します。「これさえすればコストダウンできる」という、魔法の一手はないのです。1カ月ほどかけて項目を見直した結果、Sさんのご要望に改めて気づくというメリットもありました。また、今回の敷地は北道路だったので、建物を北に寄せて日ざしをとり込める設計にしました。
Profile.
1950年生まれ。アスカホーム、ハウス&ガーデン、ジョイホームで多くの住宅を設計。2007年にロブホーム設立。依頼主と対話を重ねて理解を深め、ていねいに家づくりにとり組む。
家族構成 |
夫婦+子ども1人 |
敷地面積 |
212.63㎡(64.32坪) |
建築面積 |
72.12㎡(21.82坪) |
延べ床面積 |
117.93㎡(35.67坪) 1F 70.00㎡ + 2F 47.93㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(2×4工法) |
工期 |
2010年4月〜8月 |
設計・施工 |
ロブホーム(木村 善久) TEL: 0279-22-0570 |
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