【Oさん宅(神奈川県) 本体工事費約2225万円 建築面積約13坪】
ご夫妻と10歳の長女、8歳の長男、3歳の次女の5人家族。以前は近くの社宅にお住まいで、「街や環境が気に入っていたので、このあたりで土地が売りに出されるのを気長に待ち、見つけたときは即決でした」 「子どもたちはふざけて『うちは4階建て!』なんて言っています」と笑うOさん夫妻。
その言葉どおり、新居は2階建てのボリュームの中に4層のフロアが積み重ねてあります。玄関のある1階から、子どもたちの遊び場を兼ねた踊り場へ。そこからDK、さらに最上階のリビングへと上っていくにつれ、空間の表情が刻々と変化していきます。
「すべての空間がつながっていて、家全体がワンルームのような感覚。しかも玄関や階段、踊り場までが生活や遊びの場なので、移動するためだけの無駄なスペースがまったくないんですよ」。
さらに、水回りの上にあいた空間を収納として生かしたり、寝室と子ども部屋では高さを半分ずつ分け合ったり。 「これ以上使えるスペースはないです!と設計士さんに言われたほど(笑)、縦にも横にも目いっぱいスペースを生かしました」。
デッドスペースをつくらない、1つの空間を2つの用途に使うなどの工夫は、狭さ解消だけでなく、限られた予算を有効に使うことにも貢献しています。 ビニールクロスなどの工業製品をできるだけ使わないというのもこだわり。
シナ合板やラワンの構造材をとり入れ、コストを抑えながら素材感を生かしました。「木で仕上げておけば、あとで手を加えるのも簡単。DIYやメンテナンスが楽しみのひとつになりました」
「予算内」達成のコツ3カ条 by Oさん夫妻
- 建築面積をしぼって土台にかかるコストを削減
- 希望の内装材は、パブリックスペースで優先的に採用することに
- コストへの影響が大きい外壁の素材を、熟慮のうえで変更
2F キッチン
カウンター下をつくり込まずにコストを下げた分、天板は一体成型のステンレスに。ガスコンロの武骨なデザインにもこだわりました。
【コストダウンIDEA】 引き戸の面材はリーズナブルなシナ合板。
食器棚も新調しなくてすむよう造りつけに。好きな位置に棚板を設定できるので、食器や家電、ケースなどを自由におさめています。外壁が斜めに張り出した部分はパントリーとして活用。掃除用具やストック品はこちらに。
2F 踊り場
【コストダウンIDEA】移動のための空間を別の用途にも使えるようにプラン。
玄関のあるフロアから半階上がったところ。ただの踊り場ではなく、子どもたちの遊び場としても使えるよう、4畳の広さをとりました。長女のバレエのレッスンもここで。壁の一部と引き戸を鏡張りにして、バーもとりつけ。
2F 寝室
【コストダウンIDEA】ラワンの構造材をそのまま内装として仕上げのコストをカット。
ベッドを置いた部分の床下は、下階にある子ども部屋。「寝るだけの場所は天井が低くてもいいと考えて、高さを下階に譲りました」
工夫に満ちたプランで “数字にあらわれない広さ”を実感!
コストを予算内におさめられたもうひとつの理由は、外壁材の選び方。「ずっと左官仕上げを希望していたので、設計をお願いしたアトリエハコさんからサイディングを提案されたときは、正直言って『それはない!』と思いました。
でも、家の模型を見ながらプランの説明を聞いていたら目が覚めて。サイディングのよさを生かせる外観デザインがあることや、ここでコストを落とすことで何ができるのかなど、納得できる内容ばかりだったんです」。あのまま左官仕上げの外壁にこだわっていたら、この快適さは手に入らなかった、とOさん。
外壁で大きくコストを落とせた分、LDKの内装や幅広サッシなど、かけるべきところに十分な予算を割くことができ、満足度の高い家づくりにつながりました。
2F DK
キッチンからリビング方向を見たところ。右手の壁を斜めにしたことで、季節ごとにさまざまな光と陰影を楽しめます。 「家具もけっこう高いので、テーブルとベンチは大工さんに依頼。その分の予算で『Yチェア』など好みの椅子を手に入れました」 本来は移動するだけの階段が、暮らしの場に。「DKでは自然と誰かがステップに腰かけておしゃべりしています」
2F リビング
リビングやDKの掃き出し窓は、住宅用より幅の広いビル用の製品。価格は高めですが、明るさや開放感、デザインを重視して採用することに。 パブリックスペースでは内装材にもこだわり、無垢のナラ材や珪藻土を採用。
1F 子ども部屋
子ども部屋は13畳ほどの細長い空間。右側にベッドスペース、左側にカウンターデスクが設けてあり、将来は3人で仕切って使えます。
デスクは大工工事で製作したもの。つながりながらも、ほどよい独立感が。
1F 浴室・洗面室・トイレ
【コストダウンIDEA】カウンターをつくらず実験用シンクを壁づけに。
システムバスは「LIXIL」。在来工法の浴室よりローコストなことに加え、デザインのよさと掃除のしやすさが決め手になったそう。水回りも構造材打ち放しのラフな雰囲気に。床は水もれの気にならないタイル貼り。寒さ対策にはタオルウォーマーが活躍します。配管などにコストがかかるトイレは1カ所だけに。内装の仕上げは洗面室とそろえ、「LIXIL」の「サティス」を採用しました。
1F 玄関ホール
「雨の日の遊び場にしたり、長男がサッカーのリフティングをしたりできるように、たたきを広くしました」
左手の引き戸の中は洗面室&浴室。その上にはロフト状の収納スペースが。ここでも高さを無駄なく活用。 玄関ホールの壁面いっぱいにつくった靴収納。扉を開けると、室内側からとり出せるポストと傘立てが。おかげで玄関はすっきり。愛らしい手洗いボウルは「サンワカンパニー」で。「玄関ホールのアイキャッチになっていいかなと思って」。壁のタイルは家族でDIY。
外観
【コストダウンIDEA】左官よりも安価なサイディング。外観のデザインにも役立てて。
アシンメトリーなフォルムとサイディングの水平ラインがモダンな印象。1階より2階を張り出させたことで、施工費のかさむ基礎部分の面積を抑えられました。
DATA. Oさん宅(神奈川)
設計のPOINT
アトリエハコ建築設計事務所
七島 幸之さん 佐野 友美さん
建物の規模を建ぺい率ギリギリにせず、建坪をしぼることでコストを大きく削減。また、このエリアでは3階建て以上の建物は準耐火構造にしなくてはならず、工事費もかさんでしまうため、2階建てを0.5階ずつに割ったスキップフロアとしました。そのため建物のボリューム自体はコンパクトでも、内部では面積と高さを無駄なく使うことができ、広がりのある生活空間が生まれました。特に縦方向に空間がつながることで、畳数以上の広さを感じられると思います。
【Profile】
七島さんは1970年福岡県生まれ、九州芸術工科大学大学院修了。佐野さんは75年静岡県生まれ、日本大学生産工学部建築工学科卒業。ともに古市徹雄都市建築研究所を経て、2006年に現事務所を設立。
家族構成 |
夫婦+子ども3人 |
敷地面積 |
85.21㎡(25.78坪) |
建築面積 |
43.38㎡(13.12坪) |
延べ床面積 |
72.79㎡(22.02坪) 1F39.26㎡+2F33.53㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2014年6月~12月 |
本体工事費 |
約2225万円 |
3.3㎡単価 |
約101万円 |
設計 |
アトリエハコ建築設計事務所(七島幸之/佐野友美) TEL:03-5942-6037 |
施工 |
サンヨー住宅 TEL:045-620-4025 |
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