「洗面室はその家の個性が出る」と感じているという、ピーズ・サプライの井上さんに洗面室づくりのチェックポイントを施工例写真をまじえて教わりました。
1. 湿気対策
浴室の湿気を気にする人は多いのですが、洗面室の湿気を気にする人はあまりいません。しかし、お風呂から人が出た瞬間、湿気は一気に温度の低い洗面室に流れ込み、浴室の換気扇だけでは排出しきれません。
ですから、戸建て住宅の場合は、洗面室にぜひ窓を設けてください。
おすすめなのは、室内に風をとり込みやすい縦すべり出し窓。ミラーの位置との関係性やプライバシーの確保も考えて、縦長の窓を2つ設けるなど開口部の位置を工夫してください。
開閉しにくい位置に設ける場合は、オペレーターハンドル(開閉装置)つきの窓にしておきましょう。さらに換気扇も設置しておけば安心です。特に室内干しをする目的がある場合は、乾燥機や扇風機などの設備も検討を。
外気を室内にとりこみやすい縦すべり出し窓を、ミラーと並べて設置。(Iさん宅)
2. 内装材選び
洗面室の壁に調湿効果のある珪藻土を使いたいというかたがいるのですが、おすすめしません。
なぜなら、珪藻土は湿気を吸い過ぎて飽和状態になり、場合によってはカビが発生してしまうこともあるからです。それくらい、洗面室の湿気はすごいのです。
通常はビニールクロスですが、タイル貼りや板張りでもいいと思います。
床は掃除しやすいクッションフロアが一般的で、今はデザインや雰囲気のよいものも出回っています。
サイザル麻やコルク、竹のカーペットなどもよいでしょう。フローリングにする場合は、バスマットなどで保護する工夫を。
わが家では、無垢の杉板をすのこ状に張った床仕上げにしていますが、これも通気もよくておすすめです。
テラコッタタイルのように見える素敵な床は、国内メーカーのクッションフロア。(Sさん宅)
3. 洗面ボウルの数
子どもが小さいうちは想像しにくいのですが、お年頃になると朝は家族で洗面ボウルとミラーの争奪戦。女性が多ければなおさらです。
わが家にも娘が2人いますが、当然、私は娘たちの支度が終わるまで待っているしかありません。
「世の中のお父さんに同じ思いをさせたくない」、そう考えて女性の多いお宅には洗面ボウルを複数設けることをおすすめしています。
「そんなことできるんですか?」と驚くかたが多いのですが、ボウルを増やすからといって、高級ホテルのようにゴージャスに仕上げる必要はありません。
シンプルなボウルとミラー、小物を置く場所さえつくれば、朝の支度はできます。少し広めの洗面室にして2ボウルでプランニングすれば、毎日の身支度がスムーズに。
「INAX」のユーティリティシンクを2つ並べたシンプルな洗面室。これから鏡を2つつける予定。(Kさん宅)
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4. 洗面室に何を収納するのか
洗面室に収納するものとして一般的なのは、シャンプーやせっけんなどのストック、ヘアケア製品、体重計、タオルや浴槽掃除用の洗剤など。洗濯機があれば、洗濯用洗剤やネットなども必要でしょう。
しかし、寝室から下着を持ってくる手間を省くため、下着やパジャマも洗面室に収納したいというお宅もありますし、逆に湿気が気になるのでタオルは収納したくないというお宅もあります。
また、バケツや雑巾などの掃除用具をおさめたいというお宅、洗濯物を干すハンガーを収納したいというお宅、コンタクトレンズ用品や化粧品を収納したいというお宅もあります。
家庭によってさまざまで、「あたりまえ」なことがありません。自分の家では何を収納したいのかをあらい出し、設計者に伝えてください。
オープン棚にはタオルなどを。(Hさん宅)
5. 洗面室のコンセントはいくつ必要か
洗面室で最近、特に注意しているのがコンセントの数と位置です。
以前は、アースつきのコンセントを洗濯機用に準備し、あとはドライヤーや電気シェーバーの充電用くらいで十分でしたが、先日プランニングしたお宅で、一家4人が電動歯ブラシを使っているので、それを充電できるスペースが必要という事例がありました。
充電器を並べるだけでも洗面台の上にスペースとコンセントの数が必要ですし、別回路を用意しなければならないかもしれません。思えば、洗面室で使う家電はいろいろあります。
タオルウォーマーなどを使う場合は、下のほうにコンセントを設けるほうが便利かもしれません、洗面室で使いたい家電をリストアップし、同時に何を使うのかを想定してみましょう。
6. メイクスペースは必要か
洗面室でお化粧する女性は、全体の半数くらいでしょうか。でも本人はそれがあたりまえと思っていることが多く、「みなさん、洗面室でしないんですか?」という反応。
洗面室でお化粧することを希望するなら、設計者に事前に伝えておいたほうがいいでしょう。
なぜなら、お化粧に適した影が出にくい照明を選ぶことも必要ですし、一般的なミラーはガラスに緑色の色素が入っているので、メイクの色の仕上がりを確認するにはクリアなガラスを使ったミラーの選択が必要かもしれません。
また、女性の多いお宅では、朝のメイクタイムが大混雑にならないよう、横長のミラーにするなどのプランニングの工夫も必要に。メイク道具の収納スペースも忘れないようにしてください。
奥さまとお嬢さん2人がいるお宅。女性3人が朝並んでメイクできるように、横長の鍵をつけました。(Oさん宅)
7. 洗面室を何階に設置するか
洗面室・浴室を1階に設けた場合、寝室のある2階にも手を洗ったり歯をみがいたりできる洗面コーナーをつくるお宅が増えています。
また、洗面室・浴室を2階に設けた場合には、来客にも気兼ねなく使ってもらえる手洗いコーナーを1階に設けることも多いです。
いずれにしても、サブの洗面コーナーをつくれば、1カ所は機能重視、もう1ヶ所はデザイン重視にすることも可能ですし、家族の身支度時の混雑軽減にも役立ちます。
洗面ボウルとミラーと照明さえあれば洗面室の機能は果たせますし、廊下や玄関近くのコーナーでも小さな洗面スペースはつくれますから、プランニングの際に検討してみてください。
タイルカウンターにTOTOの洗面ボウルとグローエの水栓器具を組み合わせた1階の洗面室。(Iさん宅)
2階に設けたシンプルな洗面コーナー。(Iさん宅)
8. 洗面室に洗濯機を置くのか
洗濯機は、ドラム式と縦型ではサイズが異なります。また、日本の洗濯機は洗濯・乾燥の機能一体型が多いので、サイズも大きくなってきています。
洗濯機を洗面室に置くならば、あらかじめゆとりのあるプランニングしておきましょう。
また、ドラム式洗濯機は、扉の開閉方向を選べるので、新築と同時に購入を検討するなら、開き方をどちらにするかも考えておきましょう。
洗濯機をキッチンに置くお宅もあるので、必ずしも洗面室に置くものと決めつけずに、洗濯物を干したりとり込んだりする動線も考えて置き場を考えてください。洗剤やハンガーなどの収納場所も考えて確保しましょう。
9. 室内干しのスペースは必要か
最近では、共働きで日中に洗濯物をとり込めない家庭や、花粉アレルギーなどで外に洗濯物を干せない家庭もあり、室内干しスペースの需要が増えています。
せっかく新築した家のリビングが物干しスペースにならないよう、室内干しをする可能性があるなら、あらかじめプランニングに組み込んでおきましょう。
おすすめしているのは、洗面室にもう1畳プラスして室内干しスペースを兼ねるプランや、もう2畳プラスしてランドリー&ユーティリティスペースをプランニングし、室内干しができる場所をつくること。
居室を1〜2畳広くするよりも暮らしやすさがアップする、おすすめのプランです。
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さいごに
小さなスペースにさまざまな目的が詰め込まれた洗面室。「2畳ほどの狭い空間に、一般的には洗面、脱衣、洗濯と、それに付随する収納スペースが必要です。
しかも家族構成による違いや暮らしのクセが住まいの中でいちばん出るのが洗面室。にもかかわらず、建主さんとの打ち合わせでも要望が出てきません。なぜなら、暮らしのクセはその家族ではあたりまえと思っている行動だから。
しかしよく聞いてみると、そこでお化粧をするのか、下着を収納するのか、洗濯のタイミングも千差万別です」と井上さん。
「毎日の暮らしに直結する場所だからこそ、自分たちの行動を客観的に振り返って、ぴったりの洗面室をつくってください。」
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取材協力
ピーズ・サプライ 代表 井上 徹さん
素朴でありながら洗練された、ナチュラルスタイルの家づくりを得意とするハウスビルダー「ピーズ・サプライ」(http://www.ps-supply.com/)の代表。ショールームはインテリアショップも併設。
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