理想どおりのインテリアと意外性のある家の間取り・プランニング実例

Kさん（東京都）

「こんな住まいが理想だったんです」。そう言ってＫさんが見せてくれたのは、ジャッキーというくまが主人公の絵本のシリーズ。大きなテーブルを囲んでの食事シーンや、緑あふれるガーデンなど、素朴で愛らしい世界が描かれています。

「くまのキャラクターそのものというより、このあたたかな雰囲気が好き。壁のタイルや照明などもかわいくて、インテリアのお手本にしたいくらいなんです」

相談に訪れた設計事務所「プランボックス」にイメージソースとして提出したのも、この絵本の数ページ。建築家の小山和子さんは「どんな住宅写真よりも、ずっと強くイメージが伝わってきました」と言います。

外観

外観でこだわったのは、フラットなファサードと勾配屋根。敷地の奥行きを生かして、道路側には駐車スペースを。

「プランボックス」に保管されているイメージ資料。絵本のカラーコピーがスクラップされています。

1F　キッチン

タイルや無垢材の床も、キッチンのカウンタートップも、どれも繊細で淡い色合い。Kさんの思い描いていた空間がそのまま形になりました。

キッチンはぐるりと回遊できるアイランドスタイルに。カウンタートップにはリーズナブルで手入れもしやすい大判タイルをとり入れました。

すっきり暮らせる秘訣はパントリー。奥行きの浅い棚をL字形にとりつけて、収納しやすく。

1F　DK

DKはダイナミックな吹き抜け。太い梁からもおおらかさが伝わります。左奥の引き戸からは洗面室へ。「この動線がとにかく便利です」

コンロまわりは古いレンガ、収納の面材はラーチ。素材感のいいキッチンは、リビングから見ても素敵です。

グリーンをふやすのが今後の目標。家と一緒にゆっくり育てていきたい

奥さまの実家が設計士の建てた家だったこともあり、当初から建築家をパートナーに選びたいと思っていたＫさん。「ただ、かたい作風の〝建築家の先生〟ではなく、こういうやさしい家をつくってくれるかたを求めて、女性の建築家さんを探しました」。絵本から伝わるイメージをしっかり受け止めてくれた小山さん。思い描いていた内装はもちろん、プランについても想像を超える提案をしてもらえたそう。「明るくて開放的な空間が欲しかったので、私たちは単純に2階リビングを考えていたのですが、小山さんから提案されたのは1階のリビング。じつはこれが大正解だったんです」

「面積にゆとりがあり、南北に長い敷地なので、南側に庭がとれます。その明るい庭をＬＤＫにとり込まないのはもったいない！と考えて、1階のＬＤＫをおすすめしたんです」と小山さん。開放感を高めるために、2階フロアの床面積をしぼり、吹き抜けをプラン。頭上にも窓の外にも視線がのびていく、おおらかなパブリックスペースを実現できました。

「南側に浴室と洗面室をつくるアイディアも、最初に見たときはびっくり。でも、キッチンに直結していて行き来しやすいですし、洗面室で洗った洗濯物をデッキに干すのもラク。なにより明るくて快適なのが気に入っています」

こんなアクロバティックなプランも、建築家ならでは。イメージどおりのインテリアに加え、暮らしやすさや快適さの面でも満点というＫさん。はにかみながらも「本当に『おうちが最高！』と言える住まいになりました」と笑顔を見せてくれました。

1F リビング

吹き抜けのDKから一転、天井高を抑えたリビングには、ほどよい落ち着き感が。窓のない壁面をあえてつくり、家具をレイアウト。

1F　LD

階段はキッチンの正面に。家族が自然に顔を合わせられます。

シンプルなカウンターを造りつけたワークスペース。目の前が壁ではなくガラスの室内窓なので、圧迫感を感じることなく過ごせます。

1F エントランス

家族は奥のシューズクローゼットから、ゲストは手前からホールに上がるプラン。扉などは省いてコストを抑えました。

ポーチとたたきはDIYでタイル貼りに挑戦。「曲がっていたりもするけれど、かえって愛着があります」

1F ホール

玄関からLDKにつながる壁面には、さりげなくアールがついています。動線を自然に導くこんなデザインも、建築家ならでは。

1F トイレ＆手洗い

プレイルームの入り口にあたる小さな水回りは、奥さまのお気に入りのひとつ。壁づけした水栓やスクエアで深いシンクなど、こだわりがそこここに。

階段下の空間をトイレに活用。階段のデザインが、かえっておもしろいアクセントに。

1F プレイルーム

泊まりの来客があったときは、ここが客間に早変わり。すぐそばにトイレと手洗いがあるので、ゲストにも快適に使ってもらえます。

1F サニタリー

右手はデッキに面した掃き出し窓。戸外の気持ちよさを感じながら身づくろいや家事ができます。

LDKと庭、洗面室と庭が自然につながるよう、デッキをL字形にプラン。お子さんが遊んだり、洗濯物を干したりと大活躍の外空間に。

2F 多目的コーナー

吹き抜けに面していますが、全館空調のおかげで暑さ寒さがなく、快適に過ごせるそう。洗濯物をたたんだり、アイロンがけにも活躍。

2F 子ども部屋

「あとから仕切れる子ども部屋も検討しましたが、男の子と女の子なので、最初から2部屋に。広さやつくりは同じになるようにそろえました」

クローゼットの位置や大きさも2部屋で共通。今は2段ベッドを仲良く使っています。

2F トイレ

個室のあるフロアにもトイレを確保。1階のトイレはタンクレスを選びましたが、2階はリーズナブルなタンクつきをセレクト。

2F 寝室

南側を子ども部屋にすると、洗濯物干しのたびに通過することになると考え、あえて寝室に。壁の小窓からは1階を見下ろせます。

profile

ご夫妻と8歳の長女、5歳の長男の4人家族。今回購入した土地は、偶然にも以前ご主人が住んでいた独身寮のあった場所なのだそう。「運命的な出会いを感じて、すぐに購入を決めました」

DATA

設計のポイント

プランボックス一級建築士事務所
小山 和子さん

1955年広島県生まれ。女子美術大学芸術学部卒業。87年に小山一級建築士事務所、95年に湧井さんと共同で現事務所を設立。施主のこだわりを形にする家づくりを進めている。

湧井 辰夫さん
1951年東京都生まれ。工学院大学専修学校建築科卒業。95年に小山さんと共同で現事務所を設立。「ものづくり」にこだわり、現場でのアドリブ感を大切に設計活動を続けている。

南側の庭をL字形に囲む形で、LDKと水回りを配置。洗面室と浴室を突き出すようにレイアウトすることで、南側の隣家との間に距離ができ、LDKの日当たりがよくなったうえ、プライバシーの面でもメリットを得られました。屋内のプランでは、リビングではなくDKを吹き抜けにしたのがポイント。ふだん奥さまのいるスペースを2階につなげたことで、家族がどこにいても気配を感じられます。もちろんDKからはリビングも見渡せて、この家の中心的役割を果たしています。

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