地震などの災害への備えは、今やどこの家庭でもマスト。いざというときにどうやって家族を守るか、日頃から考えておきたいですよね。
でも、「防災グッズってどこに置いておけばいいの?」という素朴な疑問もあります。
すぐに取り出せないと意味がないし、かといって生活スペースに置いておくと邪魔だし……。「普段は使わないけど万一のとき必要なもの」はどう選んで、どこに収納しておくのが正解なのでしょうか?
整理収納アドバイザーで、防災士の資格も持つ丸 マイさんから、実際に揃えている防災グッズを紹介していただきつつ、収納のポイントも解説いただきました。プロの防災士ならではのアドバイスに目ウロコ!です。
東日本大震災の経験から防災を意識
そもそも防災に興味を持ったきっかけは、2011年の東日本大震災でした。
「住まいは千葉県ですが、震災の直後、実際に食べるものがないという経験をしました。自宅に食品の買い置きがほとんどなくて、スーパーの棚もからっぽ。結局、同じマンションに住むママ友からパンなどを分けていただいたりして、数日間過ごしました」
この経験で考え方が変わったという丸さん。「少なくとも家族が1週間暮らせるだけの食品が必要!」と考えて、ストックの仕方や収納場所にも工夫。避難用リュックの中身や置き場所もじっくり考えて、準備体制を整えたといいます。
収納術01:
食品は消費しながら買い足していく“ ローリングストック"
丸さんが防災用の食品を収納しているのは、キッチンのそばのパントリー(食品庫)。納戸などにしまい込むのではなく、普段使いの食品と同じように、中身が見やすいバスケットで管理しています。
「見えない場所に入れてしまうと、賞味期限が過ぎてしまったり、何を買ってあるか忘れてしまったりしますよね。だからいつも目につくところに置いて、日頃からこまめにチェックしています」
買い置きしてあるのは缶詰やレトルト食品、ビタミン不足を防ぐための野菜ジュースなど。
2011年の震災のとき、甘いものがあったらホッとするのに……と感じたことから、フルーツの缶詰もプラスしました。
「食品は一度に揃えたのではなく、買い物のついでに1つ、2 つと増やしていきました。おかず缶詰は古くなる前に、日常の食事でどんどん使います。週末の朝ごはんで食べることが多いですね。目先が変わるので子どもも喜びます(笑)」
大切なのは“1つ使ったら1つ買い足す" こと
使いながら補充していく“ ローリングストック" がおすすめだそう。備蓄というより、普段使いの食品を多めに買い置きしておくイメージです。
丸さんいわく「普段の買い物のとき、缶詰をポンと1 つ足すだけ」。防災用の食品を一気に揃えるのは大変ですが、これなら気軽に実践できて、お財布への負担も少なくてすみそう!
「ただし、1週間分の食品をストックしておくには、ある程度の大きさの収納場所が必要です。まずはそのスペースをつくることから始めてみては?」
収納術02:
ウエディングキャンドルは立派な防災グッズ!?
パントリーの中には、食品以外の防災グッズも。カセットコンロ、ガスボンベ、携帯用トイレ、ゴムつき軍手、充電器などを、やはりバスケットで保管しています。
「災害時は気持ちが動転しているし、停電中かもしれないので、すぐに探せるのがポイント。食品と同じで普段から目につくようにしておくと、何がどこに入っているかつねにチェックできます」
さらに丸さんが取り出したのは、大きなウエディングキャンドル!
「自分たちの結婚式でキャンドルサービスに使ったもの。これが2011年の計画停電のときに大活躍したんです。余震がおさまってから使用。火が長持ちするし、安定感があるので安心して使うことができました。16年も前のものですが、これだけは捨てずに取っておいてよかった!(笑)」
キャンドルにはライターとマッチもひとまとめに。
同時に使うものは一緒にしまっておくという“ グループ収納" の考え方です。これで「ロウソクはあるのにライターがない!」という事態を予防。万一のときもあわてずにすみます。
収納術03:
子どもの避難用リュックも身近な場所に
築浅のマンションなどに住んでいると、災害時は避難所ではなく自宅待機になる可能性が高いそう。丸さんもそう考えて、電気・水道・ガスが止まっても自宅で生活できるように準備しています。
「とはいえ、火災などで家を出ることになるかもしれないので、避難用リュックも用意。避難のしやすさを考えて玄関に近い場所に置くよう心がけています。うちでは大人のリュックは玄関の近くの洋室に、子ども部屋も玄関のすぐ横なので、子どものリュックは子ども部屋に置いています」
お子さんの避難用リュックは、棚の下段にボックス収納。外から見えないのでスッキリしていますが、いざというときはサッと持ち出せます。
リュックの中身は、軍手、ビニール袋、防寒着、芯を抜いたトイレットペーパー、保険証のコピー、ペットボトルの水、カロリーメイト、公衆電話のかけ方を書いたメモなど。ヘルメットと一緒にIKEAのボックスにまとめてあります。
「子どもに重すぎるリュックはNG。緊急時にどうしても必要なものだけを厳選しました。水も最低限の350ml のペットボトルを入れてあります」
あれもこれもと中身を増やすより、すぐに取り出せたり、身軽に行動できることが大切!と丸さん。ママ防災士ならではの知恵と気配りが感じられます。
つらい実体験から学んだ災害対策に納得
丸さんは「防災士」として市のプロジェクトなどにも参加しています。
ご自分の家族だけでなく、周囲の人たちへのアドバイスも積極的に行っています。モチベーションになっているのは、やはり「3.11の経験を繰り返したくない!」という思いなのだそうです。
「もちろん被災者というほどの立場ではなかったけれど、普通の住宅地に住んでいるのに食べるものがない!電気が使えない!という生活は想像もしていなかったので、本当にショックでした」
それだけに、災害時に必要なものや役立つものを身にしみて実感。どこに収納しておけば使いやすく、普段の生活と両立できるかを考えるきっかけにもなったそう。
「よく言われるように、防災は日頃の備えがいちばん大切。防災グッズがいつも身近にあって、備蓄食品も普段から食べ慣れていれば、災害時でも平常時に近い感覚で過ごせますよね」
災害はいつ起きるかわからないもの。丸さんの体験やアドバイスを生かして、まずは今日のお買い物から“ 缶詰1つプラス" を実行してみませんか。
整理収納アドバイザー 丸 マイさん
ハウスキーピング協会認定・整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、防災士。
ご夫婦と長男(15 歳)・長女 (10歳)の4人家族。結婚を機に九州から関東へ。「当時は慣れない生活のストレスから買い物をしまくり、家じゅうものだらけ。整理収納を学ぼうと思ったきっかけも、出しっぱなしの生活用品で子どもがケガをしたことでした」。整理収納を学んでからは、生き方そのものが変わったそう。その自身の経験を生かして、現在は個人宅での整理収納サービスをはじめ、講座やセミナーなどを主催している。
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取材・文:後藤由里子
撮影:鈴木江実子
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