こだわりの家を建てたいけれど、予算があまりなくて…。と理想の家づくりをあきらめている人はいませんか?
大丈夫、建てられます!!
建主の思いと設計者の知恵とアイディアがたっぷり詰まった素敵な事例を紹介します。
Uさん宅(高知県)
結婚した当初から「いずれは一戸建てを」と思っていたというUさん夫妻。お子さんが生まれ、いよいよ本格的に家づくりを考え始めたときに「こんなのがいいな」と感じたのが、高知市内にある草屋根が印象的なカフェでした。この物件を手がけたのが「キリコ設計事務所」。「植物と共存しているナチュラルな雰囲気にひかれて、お願いすることにしました」
建設地は豊かな自然が残るご主人の実家の敷地内。キリコ設計事務所の上森さんは、目の前に川が流れ、広い田畑の先にどっしりと山がそびえる景色を目の当たりにした瞬間、「1日の大半を過ごすLDKを2階にしましょう」と提案してくれたそう。
一方、Uさん夫妻の要望は「カフェのような雰囲気」。また、コーヒーとたばこ、音楽と植物が好きなご主人にとって、これらを楽しめるスペースが欲しいというのも必須条件でした。そうしてプランニングされたのが、眺めのいい北と北西の2面に大きな窓のあるスキップフロア。北側には植物を育てたり、たばこを吸えるバルコニーを設け、ダイニングの壁には大量のCDを並べられるラックを完備。愛用のコーヒー道具が並ぶキッチン横の棚とCDラック、バルコニーは直線でつながり、「このラインが憩いの場です」とご主人。
コストに関してはファーストプランからほぼ予算どおり。暮らしていくうえでの楽しみを削減するのではなく、建材を安く入手したり、無駄のない建材の使い方に、コスト減の秘密があるようです。
コストダウン3カ条
1.地元の設計事務所の人脈で安く手に入る地元産の建材を使う
2.オープンな間取りにして扉を必要以上につけない
3.すべてをつくり込みすぎず、住みながらDIYでととのえる
おだやかな空気感が、日々の充実度を物語る
2F ダイニング
音楽鑑賞が趣味のご主人のために、ダイニングの一角に機材やCDが置ける棚を設置。棚はすべて可動式で、自由に棚板をふやせます。設計事務所の顔がきく地元産の木材を使用したことでコストダウンをはかりました。どこからでもいい音が聴けるように天井にスピーカーを内蔵しています。
「夏には川風が吹くので涼しく過ごせます。フルオープンにできて掃除もしやすく、換気もバッチリで助かっています」「ルイスポールセン」の「AJロイヤル」は天井にも光が当たり、ダウンライトがなくても十分な明るさ。
植物を育てることにはまっているご主人。あちらこちらにグリーンが置かれ、心地いいアクセントに。植物+雑貨のアレンジも見事。
景色を最大限に楽しむため、窓を引き込み式に。視界を遮りません。サッシ下枠の凹凸がないので掃除がラクなのもうれしい。
DKからリビングはスキップフロアになっていて、いろいろな角度から景色を眺めることができます。「季節ごとに異なる表情を見せてくれるので眺めていて飽きません」
2F バルコニー
お気に入りの植物が並んだダイニング側のバルコニーは主に鑑賞目的。洗濯物はパントリー側のバルコニーに干しています。
2F キッチン
白い空間に天井のラワン合板のラフさがベストマッチ。勾配天井が部屋に広がりを感じさせます。
シンプルで空間にすっとなじむ「サンワカンパニー」のレンジフードは、奥さまのお気に入り。あえて収納棚は設けず、パントリーをひとつつくったほうがコストの節約に。また、扉をつけないことでさらに経費が抑えられて、通気性も確保できます。
「朝イチの仕事はコーヒーをいれること」とご主人。独立した場所に道具を置いておくことで、動線が重なることもありません。
余った建材でつくったウォールバーにはお子さんのバッグを引っ掛けて。「子どもでも手の届く低い位置にあるので便利です」
2F パントリー
「具体的に何を収納するかが決まってから棚の高さを決めたほうが、スペースを無駄なく使えます」とご主人。外枠だけつくってもらって引き出し部分はDIYで仕上げました。
2F リビング
リビングの端から端まで続く棚。「今は子どもの本やおもちゃが並んでいますが、将来はパソコンを置いたりしても」
少し段差をつければ、不思議と空間に変化が生まれるスキップフロアを採用。
リビングとキッチンの間の壁に小窓をつくって、採光と通気性を確保。窓を開けたり閉めたりと楽しげな息子さん。お母さんの顔を眺めて満足気な様子がかわいい。窓にはガラスではなくアクリルを入れているので、小さなお子さんがさわっても安心です。
リビングの北側は置き畳にして、お子さんの勉強コーナーに。文机の高さに合わせた90×180㎝の構造用合板の棚が机がわりにしてコストダウン。CDラックなども同じ材にしてコストを削減しています。
階段はご主人のくつろぎスペースにも。
まだ家づくりをしている感覚。住まいも植物も手を加えていけるのが楽しい
「予算内のプランニング」をポリシーとするキリコ設計事務所では、豊かな森林資源に恵まれた地元・高知県の良質な材木を独自のルートで安価に入手することで、建築におけるコストを抑えています。また、構造用の板を棚やラック、ウォールバー用に無駄なく板取りし、大工仕事で仕上げてくれたことも、コスト減の大きな要因。
さらに自ら手を動かすのが好きなUさん。すべてを完璧につくってもらうのではなく、DIYで仕上げたことが経費削減につながりました。「パントリーの収納に棚板をふやしたり、庭を自分でつくったり。子どもの成長とともに手を加えるところも出てきそうなので、まだ家づくりをしているような感覚です」。建てたら終わりではなく、ともに育つ家。それくらいのゆるさがハッピーコストダウンの秘訣かもしれません。
1F 子ども部屋
今はまだお子さんが小さいので、リビングは遊び部屋、子ども部屋はみんなの寝室に。「成長して個別の部屋が必要になったときのために仕切れるようにしています」
同じ床材でも2階は着色、1階はそのままの色で使用。階段は、角を丸くするなど住み手にやさしい配慮が施されています。
1F 収納
玄関と洗面室のデッドスペースに収納が。右上は洗面室のほうから開けられるようになっているため、玄関側に扉はなし。
2F トイレ
高い位置に窓があるので、すりガラスではなく普通のガラスに。「タンクレスをやめてコストを削減しました」
1F エントランス
扉を閉めたまま通気できる玄関は、奥さまのたっての希望。「玄関の先に浴室がありますが、湿気もこもらず、いつも快適に過ごせます」網戸をとり入れて風通しのよさも確保。
1F 洗面室
白でまとめられた清潔感のある空間が美しい。浴槽や洗面台は最新モデルにこだわらず、機能面だけにこだわってセレクト。
外観
ワインレッドの外壁が個性的。「シンボルツリーには紫の花が咲くセイヨウニンジンを選びました。6月と9月の年2回、花を咲かせます」コストの高い砂利は一部にだけ使用。残りは芝生を敷いて庭づくりを楽しんでいます。
植物が好きで、自宅の日当たりに合う植物を上手に育てているUさん。葉脈に沿って茶色のぼかしが入るピレア・モリス‘ムーンバレー’は、今いちばんお気に入りの植物なのだそう。
家づくりの本音トーク!
Q 最初に家づくりをしたいと思ってから、実際に建つまでにどれくらい期間がかかりましたか?
A 結婚した当初から早いうちに建てたいと思っていましたが、気持ちが固まってからは2年くらい。消費税率が上がる前にという気持ちもありました。
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Q 希望したプランをそのまま進めたら、どれくらい予算オーバーしましたか?
A はじめに予算を伝えていたので、大幅にオーバーしたプランは上がってこず、80万円ほどでした。音楽や景観など暮らすうえで大切にしたいものをあきらめるのではなく、コンロやトイレ、洗面台などの設備のランクを少し下げ、給湯も機種を変更してガスにし、予算内におさめました。
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Q 家づくりを進める中で「まじか!?」と驚いたことがあれば教えてください。
A 設計図と実際に体感する空間の差。高さや広さが図から想像していたものと違い、建設中に驚くことがありました。実際によく現場を見に行って、しょっちゅう確認できたのがよかったです。
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Q コストにおける意外な盲点やつまずきポイントを教えてください。
A うちの場合、車庫と倉庫を壊す解体費や土地の形状をととのえる造成費用などがかかりました。宅地ではない場所に建てるなら、最初から必要経費として頭に入れておくといいと思います。
profile
高知県出身のご夫妻と、小学1年生の女の子、3歳と1歳の男の子の5人家族。新居はご主人の実家の敷地内にあった車庫と倉庫を解体して建築。ご両親の家とおばあさまの家が隣接しているため、子育てにおいても安心です。
DATA
家族構成 |
夫婦+子ども3人 |
敷地面積 |
190.67㎡(57.68坪) |
建築面積 |
51.34㎡(15.53坪) |
延べ床面積 |
91.08㎡(27.55坪)1F 48.02㎡ + 2F 43.06㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(在来軸組み工法) |
工期 |
2013年12月~2014年3月 |
本体工事費 |
約1492万円(そのほか設計料10%) |
3.3㎡単価 |
約54万円 |
設計 |
キリコ設計事務所 ☎088-825-1268 |
施工 |
セブンシーズ・コーポレーション ☎088-885-1175 |
主な仕様
床/[1階、2階]スギ無垢フローリング [ポーチ]モルタル櫛引き仕上げ
壁/[1階、2階]クロス
天井/[1階]クロス [2階]ラワン合板+ノンロット
給湯/「パーパス」エコジョーズ
キッチン/本体:「LIXIL リシェル」(L型・195×165㎝)
レンジフード:「サンワカンパニー KT06191、KT06771R」
浴室/浴槽:「LIXIL 1616」
洗面/ボウル:「TOTO リモデア」
トイレ/[1階、2階]「LIXIL GBC-Z10SU」
サッシ/「YKK AP」ペアガラスサッシ、木製サッシ(ピーラー材)
玄関ドア/木製ドア(ピーラー材)
屋根/ガルバリウム鋼板
外壁/ガリバリウム鋼板
断熱方法・材質/グラスウール・硬質ウレタンフォーム
設計のポイント
キリコ設計事務所
上森雅明さん
1949年高知市生まれ。73年東海大学工学部建築学科卒業。73年渡仏。74年から東京の設計事務所勤務を経て、79年高知にキリコ設計事務所を設立。
上森こくとうさん
1981年高知市生まれ。2004年玉川大学外国語学科卒業(02~03年グルノーブル留学)。04年から東京での勤務後、07年にキリコ設計事務所に入社。
ご主人の実家の南側にもともとあった車庫&倉庫を解体し、そこにおさまる最大の大きさでプランニングしました。敷地のそばを流れる川やパノラマ状に広がる山並みを堪能できるよう、家族が集まる主要室は2階に配置したのがこの家の特徴です。間取りとしてはワンルーム空間ですが、ダイニング&キッチンとリビングをスキップフロアによって分けることで空間に広がりが生まれ、さまざまな角度で周辺の景色を眺めることができるようになっています。
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