【Ⅰさん宅(東京都)】
Ⅰさんのお宅が立つのは、都心の閑静な住宅街の中の旗ざお状敷地。隣家に囲まれているうえ、道路からのアプローチ部分を除いた面積は約20坪と、家族4人が快適に暮らす家を建てるにはなかなか厳しい条件でした。けれど、そんな悪条件を逆手にとり、見事に暮らしやすさと個性に変えた、のびやかな新居をご紹介します。
『私が設計しました』
ノアノア空間工房
大塚 泰子さん
やわらかな雰囲気が魅力の大塚さん。事務所名のノアノアとは、タヒチ語で「香りのいい」「かぐわしい大地」という意味。画家ゴーギャンのアトリエ名でもあるとか。
1F リビング
吹き抜けとデッキで、とにかく明るいリビング。「木製フェンスのおかげで、外からの視線を気にせずにくつろげます」と奥さま。
1F リビング&デッキ
室内とデッキの床の高さをそろえ、さらにフルオープンサッシにしたので、あけ放すと部屋の中と外が一体化したような感覚に。
1F LDK
デッキ側からLDKを見て。まっすぐなラインが多い中、らせん階段がアクセントに。普通の階段より省スペースという利点も。
さまざまなテクスチャーの白を集めた空間に日がさし込み、美しい光と影が。引き戸をあけると、水回りにつながります。
1F DK
大塚さんがデザインしたオーダーキッチン。奥さまの希望で食器も炊飯器もすっきりおさまる収納に。
1F キッチン
火力の強いガスオーブンや「ミーレ」の食洗機を設置。壁面のタイルは斜め張りにして、個性を演出。
1F LD
【写真左】玄関とLDKの間に扉は設けず、廊下をL字型にすることで空間をゆるやかにゾーニング。右手の扉の中が大型収納庫です。
【写真右】「暮らしのストレスを減らしたい」という大塚さんデザインのテーブルは、脚が斜めなのでひざの出し入れがスムーズ。
2F 子ども部屋
吹き抜けに面した大胆なつくり。外壁の一部はプライバシーを守りながら採光できるガラスブロック。
将来、2分割できる設計。ベッドヘッド側の壁の裏はウォークインクローゼット。ご主人の案で奥の寝室から通り抜けられる動線に。
オープンなのに不思議と落ち着けるコーナー。食事のときなど、下から呼ぶと声が届くのも便利。
2F 寝室
ファブリックもすべて白で統一。引き戸の部分をアールにして、やわらかい表情に。
1F サニタリー
洗面室を兼ねたトイレ。タンクレスの便器や楕円形の洗面ボウルですっきりと。たっぷり収納できる棚も便利。
1F バスルーム
家族だけが使うスペースなので、コストを抑えるためユニットバスに。清潔感あふれる白を選択。
1F 玄関
門扉でプライバシーを守っているので、玄関扉はガラス製でも安心。流木の取っ手に、大塚さんのセンスのよさが光ります。
外観
【写真左】門扉の奥はすぐ玄関とウッドデッキ。門扉はアプローチとプライベートゾーンを分けていますが、閉ざしすぎない抜けのあるデザイン。
【写真右】旗ざお状敷地を逆手にとり、「訪れる人をワクワクさせるアプローチに」と大塚さん。個性的な門扉が期待感を高めます。
DATA. Iさん宅 (東京都)
Profile.
Iさん親子
ご夫妻と中1のお嬢さん、小2の息子さんの4人家族。奥さまはお菓子づくりやフラワーアレンジメント、お嬢さんは読書が趣味。毎年家族そろってスキーに行くのも楽しみとか。
【インタビュー】理想の家づくりを終えて
「大塚さんのテイストが気に入っていたので、安心してお任せできました」「本当に自由にのびのびやらせていただきました(笑)」
ウッドデッキが広がりを生む リゾート感覚の住まい
——コンパクトな旗ざお状敷地という土地で、不安はありませんでしたか?
Ⅰさん テレビなどで建築家の建てた家を見ていたので、建て方によってはうまくできるんじゃないかと。大塚さんの作品をインターネットで見て、主人も私も開放感がすっかり気に入ってお願いしました。デッキのある、とにかく開放的な家にしたかったんです。
大塚さん 道路から奥まっているので、プライバシーの面で安心してデッキを設けられました。建物は道路から見えにくい側に寄せたので、より安心です。
——敷地の難点を逆手にとったのですね。それにしても驚きの明るさです。
大塚さん 窓を大きく設けた吹き抜けとデッキの効果です。デッキの先は隣家の庭なので、風通しもいいんです。やはり、光と風は常に意識しています。
Ⅰさん 自分の家を言いすぎかもしれませんが、リゾートのようというか(笑)。本当に気持ちがいいんです。
大塚さん 旗ざお状敷地ならではのアプローチも重視しました。奥に何があるんだろう、と思わせたくて、中がチラッと見えるようなモニュメントを入れた門扉をデザインしたんです。
Ⅰさん すごく気に入っています。ガラスに流木の取っ手をつけた玄関扉も、お客さまに好評です。
——家全体も、木のぬくもりと、ガラス、タイル、スチールなどの冷たい質感とのバランスが絶妙ですね。
Ⅰさん 具体的な素材選びや空間のとり方は大塚さんに任せっきりだったのですが、大正解でした!
大塚さん ゆるすぎず緊張しすぎない空気感になったと思います。
成長とともに変化できる 家族の絆を深める空間
——収納にもこだわったとか……。
Ⅰさん モノを出さずにすっきりさせたくて。キッチンとLDは一体化するようオープンにしたので、食器や炊飯器までしまえる収納棚をお願いしました。トランクルームに預けていた荷物もあったので、ダイニング横には大型収納庫を設けました。
——2階にはウォークインクローゼットもありますね。
Ⅰさん クローゼットへの入り口の扉をなくして、寝室と子ども部屋のクローゼットの間の仕切りもとり払ったので、動線がスムーズで、使い勝手がとてもいいです。
——その子ども部屋ですが、吹き抜けに面しているオープンなつくりというのはかなり大胆ですね。中1のお嬢さんと小2の息子さんの反応は?
Ⅰさん 子どもには「個人の部屋はないの?」と聞かれましたが、「ないのよ」と(笑)。でも、デスクスペースはオープンなのになぜか落ち着けて、上の子のお気に入りです。寝るときも、家族の気配を感じられて安心みたいです。ベッドを並べたので、弟は「もうちょっと、あっち行って!」なんて言われているみたいですけど(笑)。
大塚さん 大切なコミュニケーションですよね。大人になったら絶対できませんから。打ち合わせのときの「あともう少しの間は一緒の生活ができるはず」というご主人の言葉に共感したんです。“今”という家族の時間を大切にされているのがひしひしと伝わってきて。女の子と男の子なので、はじめから分けてしまえばラクなのですが、将来仕切れるつくりにして、あえてオープンにしました。この新しい家で、家族の絆がより深められ、成長とともに家も変化したらいいな、と思います。
ノアノア空間工房
大塚 泰子さん
『ワクワクする"気持ち"をデザイン したいです!』
大学院卒業後に入社した設計事務所で手がけた「ちっちゃな家シリーズ」が反響を呼び、32才で独立。その後も「うさぎの家シリーズ」など、小さくても光あふれる、開放感抜群の家づくりで人気の大塚泰子さん。快適さを生み出す設計ポリシーに迫りました。
生年月日 |
1971年4月6日 |
出身地 |
千葉県 |
家族構成 |
本人+猫1匹 |
経歴 |
1996年、日本大学大学院生産工学部建築工学修士課程修了。㈱アーツ&クラフツ建築研究所に入社し、はじめての担当作品は、敷地わずか9.6坪の実母の家「ちっちゃな家#1」。その後、「ちっちゃな家シリーズ」として反響を呼ぶ。2003年、現事務所を設立。 |
趣味 |
写真と旅行。写真は遊びのような感覚で。その街ならではの雰囲気のあるものを見つけて撮ったり、旅先で出会った建築や街並み、土地の人々などを。旅行は、2〜3日あれば国内旅行に。海外へも年に1度は行きたいです! これから行ってみたいのはポルトガルとトルコ。 |
好きな本 |
好きというより大切にしている本は、ヘルマン・ヘッセの「蝶」。中学時代に自宅が火事にあったとき、塾の先生にもらいました。 |
好きな音楽 |
ジャズ。最近は「フリーテンポ」にハマっています。 |
好きな街 |
京都、モロッコのフェズ、パリ……そして港のある街。 |
自分について |
おおらかで柔軟な発想ができる人になりたいですね。今できているかどうかは別として、神経質にならず、いろいろな考え方ができる人でありたいです。 |
【写真左】スタッフは20代と30代。フレッシュな職場です。
【写真右】れっきとした スタッフの “こやす”です!
【写真左】ふだんはCDですが、事務所に大塚さん一人のときはレコードでジャズを。
【写真右】事務所の棚には、今までに手がけた作品の模型がずらり。依頼主に立体的なイメージを伝える、欠かせないツールです。
「意外とアナログ派」という大塚さんは、手描きの図面やスケッチでもプレゼン。手描きならではのぬくもりのある線が心地よい空気感を伝えます。
【インタビュー】素材とデザインにこだわって居心地のよさを生み出す
——幼少時代の経験が、少なからず家づくりに影響しているそうですが……。
大塚さん 小学生のときに、団地から建築家が建てた中古住宅に引っ越すという出来事がありました。その頃から模様がえなど部屋のことを考えるのが好きだった私は、狭い浴室を広く見せるために「お風呂を鏡張りにしたら?」と思いつきで提案したんです。すると家族も「いいね!」と賛成してくれ、とても大きな鏡を入れることになりました。結果、広く感じられましたが、あまり見たくない自分たちの裸が全身見えるという問題点も発覚(笑)。物事を一方向からだけで考えてはいけないんだ、と学びました。
——そのお宅が火事にあわれたとか。
大塚さん 中学生のときでした。それから裏庭に家を新築するまでの1年半ほど、焼け残った1部屋で家族5人暮らし。モノがない状態の中、自分にとって本当に大切なのは家族なんだと痛感しました。そして、家というのは“家族を守る器”なんだと思いました。
——災害からはもちろん、プライバシーを守るのも家の大切な役割ですね。
大塚さん そうなんです。ただし“閉ざす”という手法はあまり使いたくないんです。私にとって家づくりの大きなテーマは、自然との共存というか、自然をとり入れた居心地のいい空間づくり。環境や自然から遮断する“箱”は孤立を意味するので、閉ざさずにプライバシーを確保する素材や手法を使います。
——具体的には、どのような?
大塚さん 壁や窓にガラスブロックや半透明のガラスを使うと、視線を気にせずにまわりの気配を感じられます。また、コンクリートの塀で安易に囲むのではなく、すき間をあけて透かし積みにしたレンガで塀をつくると、光や風をとり込むことができます。私の素材選びはデザイン重視と思われがちですが、実はプライバシーを守りつつ、自然とも共存したいという思いのあらわれなんです。
——なるほど! でも、デザイン重視と思われるのも無理がないほど、美しいお宅ばかりですね。
大塚さん ありがとうございます。いくら住み手のことを考えても、見た目がよくなければ意味がないので、そう言っていただけるのはすごくうれしいです。
——ところで、依頼主の意向をくみとるために心がけていることは?
大塚さん たくさん話をして、まずその人のことを理解するようにしています。すると、家もイメージしやすいんです。私は、質問シートに希望を書き込んでもらう形式はとっていません。具体的な言葉にできない気持ちや、目に見えない雰囲気……それを、多くの会話を通してくみとり、空間としてつくり上げられたらいいなぁと思っています。とはいっても、なかなか難しいんですけどね(笑)。
——大塚さんのホームページを拝見して、「気持ち」や「雰囲気」をデザインする、というコメントが印象的でした。
大塚さん そういった感覚的なものを形にするために、「この空間を気持ちよく感じさせているものは何なのか、なぜそう感じるのか」ということは常に意識しています。素材なのか、ボリュームなのか、色なのか、という具合に。あとは高さや幅ですね。窓の高さが変わると、目線が変わって見え方が変わり、テーブルの高さや幅が変われば動作が変わる。居心地のよさという“感覚”をつくり出すための“数字”はすごく重要です。
——なるほど。綿密な計算が生む快適さなんですね。
大塚さん あと大切なのは、遊び心。マイナスをプラスにするアイディアをもって工夫を重ねれば、悪条件の土地でも居心地のいい家は建てられます。もちろん、リゾートのような贅沢な土地も、設計のしがいがありますが(笑)。
実績紹介
Hさん宅(東京都)
大きなガラス扉を活用して玄関とパティオを一体化させた、開放的で画期的な家。吹き抜けの天井からも採光できるように設計されているので、いつでも光と風を感じられます。パティオに植えたヤマボウシはシンボルツリー。
「住み手にも街にも経年変化を楽しむゆとりをもってほしい」との大塚さんの思いから、外壁の一部を板張りに。
家族構成 |
夫婦+子ども2人 |
敷地面積 |
107.22㎡(32.43坪) |
建築面積 |
52.74㎡(15.95坪) |
延べ床面積 |
96.75㎡(29.27坪) |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2007年5月~9月 |
会社情報
事務所名 |
有限会社ノアノア空間工房 |
住所 |
東京都港区六本木7-17-22 秀和六本木レジデンス701 |
TEL |
03-6434-7401 |
FAX |
03-6434-7402 |
E-MAIL |
tokyo@noanoa.cc |
交通アクセス |
東京メトロ「六本木」駅から徒歩3分、「乃木坂」駅から徒歩5分 |
営業時間 |
10:30~20:00 |
定休日 |
日曜・祝日 |
スタッフ構成 |
4名(一級建築士2名) |
相談料 |
初回無料(ファーストプランより有料) |
設計料 |
床面積3.3㎡に対し10万円 |
最近3年間に手がけた個人住宅の数(2016年4月現在)
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1000万円台 0件 2000万円台 11件 3000万円台 3件 4000万円以上 4件 リフォーム 2件
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