「この家、気持ちいい!」―多くの人がそう感じる家は、太陽の光が降り注ぎ、 気持ちいい風が通り抜ける家。アトリエSORAの井内清志さんに 光と風を十分にとり込むための家づくりのヒントを教えてもらいました。
光が気持ちいい家をつくるテクニック
中庭をつくる! 「家の中央に庭をつくれば各部屋に光をとり込めます」
住宅が密集したエリアで、日当たりのいい方角に窓がつくれない……。そんなときは建物の中央に中庭や坪庭を設け、庭に向けて各部屋に窓をつくれば、どの部屋にもまんべんなく光が届き、風通しもよくなります。じつはこれは日本人が古くから慣れ親しんだ手法で、京都の町家もこのスタイルをとり入れたつくり。光と風をとり込む目的なら、1坪もあれば十分です。また樹木を植えれば、より心地よい空間に。(香川県・Sさん宅)
ガラスの仕切りをつくる! 「光が入りにくい場所では仕切りを透明に」
水回りなど光がとり込みにくい場所なら、間仕切りをガラスにする方法もおすすめ。家族間でも“まる見え”に抵抗がある場合は、表面を加工したフロストガラスをセレクトしても。ほどよく目隠ししながら陽光をとり込み、光が拡散するので木もれ日のような心地よい光を楽しめます。ガラスブロックも同様の効果がありますが、割れにくく断熱性にすぐれる半面、コストが高いという難点も。(岡山県・Ⅰさん宅)
高窓&地窓をつくる! 「住宅密集地では、ハイ&ローサイドから光を引き込んで」
隣家が迫っている場所などでは、窓を高い位置や低い位置に配すれば、視線を遮りながらも光をとり込めます。高い位置の窓を「高窓(ハイサイドライト)」、低い位置の窓を「地窓(ローサイドライト)」といい、縦長のスリット窓も同様の目的で使えます。小さな窓からのミニマムな光や、スリット窓から入るひとすじの光の陰影には美しい表情があり、大きな窓に負けず魅力的です。(香川県・宇多津モデルハウス)
2階に大きな窓をつくる! 「上階からの光を導いて家族の居場所に光を届けよう」
戸建ての家では、1階より2階のほうが周囲からの視線を気にせずにすみ、大きな窓をつくりやすいもの。家族が集まるLDKを2階に配置するプランもありますが、1階にあったほうが使い勝手がいいという場合、2階にダイナミックに窓を設け、階段や吹き抜けから1階に光を導く手法も。高い位置からの光は室内の奥まで届きやすいので、明るく快適な空間がつくれます。壁を白くするとより効果的。 (岡山県・Mさん宅)
トップライトをつくる! 「天窓をつくれば光が3倍も! とり込める」
「天窓」とも呼ばれるトップライトは屋根面に設けた窓のことをいい、普通の窓に比べて3倍の光がとり込めるといわれます(建築基準法では壁窓の3倍の光量としてカウント)。また、採光性はもちろん、部屋から月や星を眺めるなどの楽しみも。ただし直射日光が当たる方角につくる場合は、光と熱が強烈になりすぎることもあるので、断熱ガラスや遮光カーテンを設置して光量をセーブ。(香川県・宇多津モデルハウス)
内なる開口部をつくる! 「開口部は外でなきゃ、なんてことはありません」
大きな窓があれば光が十分にとり込めることはわかっていても、防犯やプライバシーの側面から、通りに面して大きな窓を設けることがためらわれるケースも多々あります。そんなときは、内側に向けて大きく開口部をつくれば、周囲の目などを気にせず、心からくつろげる家に。天井までの大開口や、近頃人気の“カーテンをつけない暮らし”も、内側に向いた窓ならではの醍醐味。(香川県・Yさん宅)
吹き抜けをつくる! 「ハイライトサイドもつくって光を家じゅうに回そう」
上下階をつなぐ吹き抜けは開放感があって人気ですが、窓のつけ方しだいで心地よい光をとり込める“使える”空間でもあります。吹き抜けのハイサイドライト(高窓)からの光は、壁全体に反射させることで増幅。室内をたくさんの光で包み込みます。また下から見上げたときに広がる大きな窓と青い空は、もちろん最高の眺め! 室内の開放感と相まって、最高に気持ちいい空間がつくれます。(兵庫県・姫路モデルハウス)
デッキをつくる! 「室内からつづくスペースをつくって屋外の気持ちよさをとり込もう」
いろいろな工夫を試みても室内にダイナミックに光を引き込むのが難しい場合は、屋外空間を暮らしにとり込むという発想も。リビングなど暮らしの中心となる場所にデッキやバルコニーを設け、スライディングやフォールディングの「フルオープンになる窓」で一体感をもたせます。また、バスルームからつづくバルコニーはまるでリゾートホテルのような心地よさ。“お父さんの憧れNo.1空間”との声も。 (熊本県・Nさん宅)
【実例】屋上緑化で 光と風を存分に楽しむ家
海辺の風光明媚な場所に立つKさんのお宅は、海が一望できる屋上をただの屋根で終わらせるわけにはいかない!と土を敷き、芝を張って屋上緑化を試みたのがミソ。エコ&ナチュラルなライフスタイルとともに注目される〝屋上緑化〟は、庭のように楽しめるだけでなく、植物と土が太陽熱をカットして室内環境を快適にしてくれる素敵なシステムです。(福岡県・Kさん宅)
屋上緑化には排水や防水などの処理が必要なので新築時に計画するのがベスト。
「屋上は一番居心地のいい場所!」
風が気持ちいい家をつくるテクニック
室内窓をつくる! 「部屋と部屋の間につくった窓は、風の抜け道になります!」
家じゅうに風を通すには、屋外に向けた窓だけでなく室内窓や扉にも工夫して、部屋から部屋への風の抜け道を確保することも大切。たとえば吹き抜け空間に2階の部屋とつながる窓をつくれば、天井近くの暖まった空気が流れ、効果的な風の通り道に。また上階から下階がのぞけるなどの楽しさも! 建具にアンダーカットなどの通風用の仕掛けをしたり、開閉可能な欄間をつくるなどのアイディアも。 (高知県・Kさん宅)
スケルトン階段をつくる! 「上下階に風の流れをつくる階段。スケルトンなら通気性が倍」
上下階の風の通り道として最も有効なのが、じつは“吹き抜け空間”でもある階段。踏み板とフレームだけで構成されたスケルトン階段なら、蹴り込み部分がない分、さらに通風度合いが増します。また、より効果的に階段を利用したい場合は、上階に窓をつくると上昇気流によって押し上げられた空気が窓から抜け、風の通りがいっそうよくなります。(兵庫県・姫路モデルハウス)
グレーチングの床をつくる! 「2階の床をグレーチングにすれば上階から下階に風が通る」
グレーチングとは本来、排水溝のふたとして使う、格子状の鋼板のこと(軽量のFRP材のものもあり)。立体駐車場などに使われている「下が見える床」というと、イメージしやすいかもしれません。格子が風や光を通すので、上階の床の一部にとり入れることで、上下階の通気をよくすることもできます。バルコニーの床をグレーチングにして、1階のテラスに光と風を落とし込む方法も。(香川県・宇多津モデルハウス)
天井近くの窓をつくる! 「こもりがちな熱気を逃す役割を果たします」
暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へ……と流れる性質を利用する方法も。天井に近い位置に窓をつくれば、天井付近にたまった熱気が外に逃げ、室内に空気の対流をつくることができます。特に夏の熱い空気を逃がすには効果的。屋根からの太陽熱がこもりがちなロフトは、この方法を利用したい場所。小さな窓を設けて空気を逃がしてあげれば、ロフトも下の部屋も快適!です。(岡山県・Mさん宅)
格子をつくる! 「格子や壁で視線を遮りながら風を通そう」
プライバシー面が気になるけれど、やっぱり外に向けて大開口の窓を設けたいという場合、格子や適度な開口部を設けた壁でほどよく囲い、視線を遮りながら心地よい風をとり込むプランも。あわせて、テラスやデッキも併設するのもおすすめです。外部からの視線を気にすることなく、アウトドアリビングとして過ごせる心地よい場所に。風と光だけでなく、緑や空も満喫できます!(高知県・高知モデルハウス)
風が入る窓&出る窓をつくる! 「風が入る窓の対面に”出る窓”をセットで設けること」
部屋に空気の入り口と出口があれば、必然的に空気が流れて風となります。裏を返せば、リビングに大きな窓をつくっても出ていく窓がなければ、空気はスムーズに動かず、風も生まれないということ。通風のためなら、たとえ小さくてもOKなので、窓を設けることがなにより大切。効率のよい風の流れをつくるには、「真正面よりも対角線上に」設けるのがコツです! (岡山県・Kさん宅)
外の部屋をつくる! 「心地よい風を満喫できる”半戸外”の空間は格別です」
室内に風をとり込む工夫を目いっぱい盛り込んだとしても、やはり屋外で感じる風に勝るものはありません。まるで外にいるような気持ちよさを感じられるスペースをつくるのも、「心地よい風と暮らす」アイディアのひとつ。たとえば暮らしの中心となるリビングからつづくデッキや中庭などがおすすめです。床の高さを揃えてフルオープンの窓を設けると、室内と一体感のある心地よい場所に。(香川県・宇多津モデルハウス)
キッチンに小窓をつくる! 「こもりがちなにおいと湿気を排出してくれます」
においや湿気がこもりがちなキッチンには、小さな窓があると便利。レンジフードや換気扇で排気するにも、窓から空気をとり込むことで、効率的に排出できます。洗面室や脱衣室などの湿気がこもりやすい場所も同様。小窓で風の通り道をつくると光もとり込むことができ、快適な水回りに。収納棚の上や鏡の脇などの小さな小さなスペースでも、小窓なら十分設置できるはず。(岡山県・Kさん宅)
【実例】開閉式テントのあるデッキを囲む開放感極上! の家
家のまん中に広大なデッキがあり、そのデッキに向けてすべての部屋がフルオープンになるTさんのお宅。家じゅうがひとつの大空間になる、なんとも開放的で心地よさそうな、ダイナミックな住まいです。デッキの屋根は開閉式のテントで、気候に合わせて自由自在にあけ閉め可能。いく通りにも楽しめるので、家族はついデッキに集うそう。(岡山県・Tさん宅)
リビングもキッチンも子ども部屋も外とつながる開放感が素敵。
テントをフルオープンにしたデッキ。
【実例】土地の傾斜に沿った階段を光と風が走り抜ける家
小高い丘の傾斜地に立つYさんのお宅は、土地の形状を生かした階段が主役の家! ただし、その階段はスキップフロアなどという生やさしいものではありません。LDKにも匹敵する広さで、まさにYさん宅の暮らしの中心的存在。心地よい風と光が階段を通って家じゅうに広がる、大地そのものを暮らしにとり込んだ楽しい住まいです。
傾斜地にフィットした外観。
約12畳のスペースがまるまる階段!
座っておしゃべりしたり、走り回ったり。
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Advice.
気持ちいい家づくりの達人
アトリエSORA
井内 清志さん
屋外の心地よさを室内にとり込んだ空とつながるような家づくりが人気の「アトリエSORA」代表。「日々の暮らしをちょっとおしゃれに&いつも心地よく過ごせる家づくり」がモットー。
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