家全体がワンルームのようなシンプルで無駄のない家の間取り実例

【Tさん宅 (東京都)】

結婚して5年のご夫妻。「ふたりとも実家が戸建てだったせいか、自然とマンションではなく家がほしいねという話が持ち上がりました」。新居ではガーデニングが新しい趣味に。

ご夫婦ともに北欧インテリアが大好きというTさん。デンマークやスウェーデン、フィンランドを旅して、雑貨ハンティングを楽しんだこともあるそう。「新居のイメージも、北欧雑貨が似合うシンプルでぬくもりのある家。でも予算には限りがあったので、ローコストで希望のイメージを実現してくれる依頼先を探しました」

住宅雑誌で目を引いたのが、建築家の菊地一幸さんの実例。「こんな感じ！」と、おふたりが描いていたイメージとも一致しました。「木をたっぷり使ったやさしい雰囲気なのに、デザインそのものはシンプル。どのお宅にも吹き抜けがプランされていて、小さくても開放的に暮らせそう、という印象も受けました」。そしてなにより、1000万円台の家を数多く手がけていたことが決め手に。Tさんも1500万円という予算内で理想の住まいを実現しました。

コストを抑えられた最大のポイントは、どこにも無駄のない間取り。LDKに水回りを直接つなげたり、玄関から階段、2階のホールまでをひとつの空間にとり込んだりして、廊下などの“移動するだけのスペース”を省きました。一方、4畳分のクローゼットや小屋裏収納など、こだわりの部分にはしっかり予算と面積を確保。「おかげで雑多な生活用品がすっきりおさまって、大好きなインテリアを存分に楽しんでいます」

理想の住まいが 「1000万円台」で実現したポイント

①廊下などの無駄なスペースを省き、そこにかかるコストをカット。

②水回りは、リーズナブルな既製品のパーツと造作工事の組み合わせに。

③壁や床、天井などの仕上げ材の種類を絞り、費用を抑えてすっきりと。

１F　リビング

LDの奥に予備室をプラン。「使いみちを限定しない部屋を1階につくっておくと、将来、子ども部屋や寝室として自由に使えます」と菊地さん。ふだんは引き戸をあけてのびのびと。

１F　DK

【こだわりPoint】吊り戸棚のない対面式キッチンは見通しのよさが◎

キッチンカウンターの天板とシンクは「ノーリツ」。手頃な既製品のパーツのみを使って造作することで、ローコストとデザイン性を両立させました。背面側の食器棚は「MOMO natural」で。

１F　LDK

【こだわりPoint】柱のない吹き抜け空間が開放感いっぱい

玄関を入ると目の前に広がるダイナミックな吹き抜け空間。2階の寝室まで空間がつながり、家全体をワンルームのように使えます。階段は圧迫感のないスケルトンに。

階段下のスペースを生かしてテレビをレイアウト。3段のステップ部分は、ハッチ式の扉をつけて内部を収納に役立てています。壁面に飾っているのは、お気に入りの手ぬぐい。

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１F　キッチン

キッチンカウンターの天板とシンクは「ノーリツ」。手頃な既製品のパーツのみを使って造作することで、ローコストとデザイン性を両立させました。背面側の　食器棚は「MOMO natural」で。

１F　デッキ

【こだわりPoint】室内に広がりをもたらすウッドデッキ

入居して3カ月後にDIYで施工したデッキ。床が外につながっていく印象が生まれ、「リビングが急に広く見えたのにはびっくりでした」。周囲にはフェンスを立てて視線をカット。

１F　予備室

LDにつなげた予備室は、現在はソファを置いてもうひとつのくつろぎの場に。シンプルなインテリアの中で、楽しみにしていた北欧雑貨のディスプレイを満喫しています。

２F　ワークスペース

どこにいても家族の声が聞こえる一体感も魅力のひとつ

【こだわりPoint】リビングの延長のようなワークスペース

階段上のホールを広めにプランして、ワークスペースとして活用しました。吹き抜けの開放感とハイサイドライトから入る光で、居心地のよさは抜群。LDKの家族と話をしながら、趣味の時間を過ごせます。

２F　寝室

【こだわりPoint】室内をすっきりさせるため収納はたっぷりと

【写真右】寝室には2畳大のクローゼットが2つ。コの字型に棚をつけ、その下に「無印良品」のラックをプラス。

【写真左】将来子ども部屋としても使えるよう、梁に沿って2部屋に仕切れるプランに。ベッドの上部には大容量の小屋裏収納があり、クリスマスツリーなどの季節ものをしまっています。

１F　洗面室

【こだわりPoint】洗面台はデザインにこだわってベッセル型に

奥さまのこだわりを生かして、既製品の洗面化粧台ではなく、好みのパーツを組み合わせて造作。「INAX」の洗面ボウルを木製カウンターに置いた、シンプルなデザインに。

１F　浴室

ローコストでお手入れしやすいシステムバスを選択。キッチンの部材とともに「ノーリツ」でそろえました。Tさん宅では、建物の構造や仕上げではなく設備選びで賢くコストダウン。

１F　トイレ

トイレも一般的なグレードのもの。ニッチ風の棚を設けて雑貨を飾っています。トイレや洗面室は、廊下をはさまずLDKに直接つなげて、面積とコストの無駄をカット。

１F　玄関ホール

広めのたたきから直接リビングへ。ポリカーボネートの引き戸で仕切ることもできます。たたきはモルタルで仕上げ、目地風のラインを入れて、大判タイルを張ったような印象に。

木枠でケーシングした正方形の窓が、ほのぼのとした素朴なエントランスを演出。木製のフックと飾り棚は「無印良品」。シンプルなデザインが北欧雑貨の愛らしさを引き立てます。

外観

シルバーの箱を積み重ねたようなシンプルなデザイン。外壁に使ったガルバリウム鋼板は、将来のメンテナンスがラクというメリットも。デッキを囲む木製フェンスが、シャープな外観にぬくもりを加えて。

DATA.Tさん宅（東京都）の間取り図

設計のポイント

MONO設計工房一級建築士事務所
菊地 一幸さん

34坪という敷地面積も考えて、できるだけ無駄のないコンパクトなプランを提案。水回りを廊下で隔てない、階段上のホールを単なる通路にしてしまわないなどの工夫で、限られた面積をめいっぱい活用しつつコストを抑えました。一方、デッキや吹き抜け、1階の予備室など、ゆとりの感じられる部分にはコストと面積をしっかり確保。各スペースは小さくてものびのびした印象になり、将来家族がふえたときや、ご夫妻が年を重ねてからの暮らしにも対応しやすいと思います。

設計士プロフィール

1962年大分県生まれ。東京工芸大学工学部建築学科卒業。92年に現事務所を設立。ローコスト住宅を数多く手がけ、神奈川県秦野市にある自宅兼オフィスも1000万円台で建築。

ご家庭プロフィール

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