アインシュタイン然り、エジソン然り。偉大な学者や発明家の多くが、子ども時代、他の子と比べて少し、いやだいぶ(!)変わっていたというのはよく聞く話。
多くの人がまだ知らない、本当の「プラスチック問題」|環境化学者・大河内教授
世界で活躍する大学の先生も、やっぱり「変わり者」だったのでしょうか。今回は、全球的なマイクロプラスチックの実態と、健康への影響の調査・研究が注目を集めている環境化学者・大河内 博先生に、子ども時代についてインタビューしてきました!
「理系科目が好き、実験が好き、宇宙が好き」そういったことは全くない子どもでした(笑)
ー大河内先生は小学生時代、どんなお子さんでしたか?
保育園・幼稚園時代は小児ぜん息があり、1年の半分は園を休むような子どもでしたが、小学校にあがってからはサッカーや野球を始めて、ずいぶん体も強くなりました。小学校6年間、冬でも半ズボンで通して、外で遊んでばかりいましたね。
「大学の先生」というと、小さい時から「理系科目が好きでした」とか、「実験が好きでした」「宇宙大好きでした」という人が多いのかもしれませんが、私の場合はそういうのはまったくありません。
小学生の頃はほとんど勉強もせずに、夕方遅くまで外で遊んで、自然の中を走り回っていました。虫や蛇、トカゲ、カエルなんかを捕まえて、いたずらもたくさんしていましたね(笑)。
ただ小学校の時に、自分に吃音があることに気がついたんです。だからみんなの前で発言するのは得意ではありませんでした。元気な子どもではあったけれど、引っ込み思案だったと思います。
ー子どもの頃に吃音で苦労されたことは?
「自分の思うようにしゃべることができなくて、もどかしい」というのが一番ですよね。
当時、駅に券売機というものがなく、電車の切符は窓口で「〇〇まで行きたいです」と言わないと買えなかったんですよ。だけど私はそれが言えなくて、本当に苦労した記憶があります。
ちなみに私はもともと吃音じゃなかったんです。兄が吃音ぎみで、それを馬鹿にして口まねをしていたら、自分がそのまま吃音になったんです。こういうこと、けっこうあるみたい。
吃音は完全には治らないんですが、改善はされるんですね。私は20代の頃、吃音矯正所へ5~6年通って、自分が言いたいことが言えるようになりました。だからお子さんの吃音で悩んでいる親御さんがいたら、そんな心配しなくていいと言いたいです。
間違ったことを正してくれる大人は信用できた
ー子どもの頃、周囲の大人との関係はどうでしたか?
父は小学校の先生で、母は幼稚園の先生をしていたのですが、親から「勉強しなさい」と言われたことはありません。しょっちゅう「帰りが遅い!」と怒られてはいましたが(笑)。
父も母も働いていたので、いわゆる「かぎっ子」ですよね。家に誰もいないときは、近所のおばちゃんの家でごはんを食べさせてもらったりしていました。そのおばちゃんが、それはそれはしつけの厳しい人で!
ごはんを食べている時にごはん粒を落としたりすると、「それを拾って食べなさい!」とかね。親の目が行き届いていなくても変な道に行かずにすんだのは、しっかり面倒をみてくれるおばちゃんがいてくれたからかなと思います。
あとは小学校6年生のときの担任の先生。厳しかったけれどすごくいい先生でした。「自分の責任をきちんととりなさい」「約束事は守りなさい」ということを、しっかり教えてくれましたね。
ー厳しい大人に囲まれていますね(笑)
確かにそうですね(笑)。ただきちっと教育をしてくれた、という思いがあるので、理不尽だとは思わなかったです。自分が間違ったことをしたら、きちっと正してくれる大人の言葉を信用していました。そういう大人ってなかなかいませんよ。
公平に接してくれる、信頼のできる大人がいるというのは、子どもにとってはすごくいいですよね。ずるい大人にばかり出会っていたら、私もひねくれて、グレていたんじゃないかな~(笑)。
大事なのは、自然の中でたくさん失敗を経験すること
ーご自身の経験をふまえて、今の子どもたちにはどう育ってほしいと思いますか?
やはり自然の中で育つのがいいと思います。早朝にカブトムシを捕りに行ったり、ザリガニを捕りに行ったりすると、どこに行けば捕れるのか、どうしたら捕れるのか、自分で考えて、調べたり、工夫をしたり。そういう経験から、考える力とか、行動力がついてくるんだと思うんです。
もちろん勉強もしたほうがいいと思うけれど、自然の中でいろいろな体験をするということは、絶対的に必要。失敗をいっぱいして、経験を積んでいく。そういう経験がなく、受験勉強ばっかりやっててね。それで失敗したら、そりゃあ立ち直れないですよね。だって、失敗した経験がないんだもの。
やっぱり人間は、自然を知り、自然の中で学ばないとダメなんだと思います。
大河内 博(おおこうち・ひろし)●環境化学者。早稲田大学理工学術院 創造理工学部 環境資源工学科教授。「地球の健康管理」を目標に、水・物質循環の視点から環境化学研究を展開。酸性雨、雲の研究をはじめ、大気中のマイクロプラスチック研究に取り組む。
撮影/目黒-meguro.8- 取材・文/石橋紘子(暮らしニスタ編集部)
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