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コラム

フードスタイリスト・江口恵子さんの「テーブル」〜“好き”に囲まれると暮らしがうるおう〜

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フードスタイリスト・江口恵子さんの「テーブル」〜“好き”に囲まれると暮らしがうるおう〜

料理家やスタイリスト、カフェのオーナー、手芸作家……「好き」を生かしながら活躍する、あの人の普段のライフスタイルをたっぷりと見せていただく、この連載。

お一人目は、食を中心にインテリアの分野でもスタイリストとして活躍しながら、吉祥寺でナチュラルフードのカフェ&デリ「ORIDO.」を営む、江口恵子さん。プライベートでは、中学生から小学生までの3人のお子さんのお母さんでもあります。

お気に入りの器使いで忙しい中にもひとさじの余裕を

キッチンに立つ江口さんとお話ししていると、忙しくてもきっと、暮らしを自分らしく楽しんでいるのだろうなという雰囲気が端々から感じられます。

「周りの人にもそう言われたりしますが、仕事や家族のことで常に走っていて、実際はゆっくりしている時間なんてほぼなくて(笑)。でも、たとえば、毎日の料理を本当に気に入った器に盛り付けていると、少し心持ちが違うのかも。そういうことの積み重ねが、少しの余裕みたいなものに繋がっているのかなと思います」

フードスタイリストという仕事柄、さまざまな器を持っているそうですが、普段に使う器は、ごくわずかだといいます。「結局、自然と手が伸びる器は同じ。盛り付けしやすい大きさや形をしていて、幅広い料理に使い回せる器が活躍します」

『普段使いの器は5つでじゅうぶん』(ジービー)という著書もあり、「All about」では食器・カトラリーガイドも務めている江口さん。今回は、毎日笑顔が生まれ、気分が上がる、江口さんが普段使う器やテーブル周りのことについてうかがいました。

大好きな「使える」器が少しあればじゅうぶん

これが、江口さんのスタメン級の皿や鉢。直径24〜26㎝ぐらいの大皿は、煮物などの汁気が少しある料理にも対応できる、少し深さがあるものを。メインディッシュやパスタなどの盛り付けに合います。

直径19〜17㎝の中鉢は、おかずはもちろん、サラダやフルーツを盛る時、丼もののごはんにする時にも使え、比較的小さなサイズのものは取り皿としても便利です。

和の器が多いですが、シンプルで洋風のメニューを盛っても、自然と映えるものばかり。小鹿田焼の中鉢は、北欧の食器にも合うような雰囲気をまとい、色とりどりのシーフードサラダもおおらかに受け止めてくれます。

アクセントとなる色無地の器も少し加えて。淡いグリーンがさわやかな大皿は、大好きな中園晋作さんの作。「シンプルでありながら、和洋中、すべてを引き立ててくれる力がある器です」。黒の大皿は、「料理が引き締まり、いつものごはんを盛っても素敵に見えます。おもてなしにもおすすめです」

「そろいの器」をやめて、もっと自由に

続いて、家族の飯碗。どれもシンプルではありますが、色や柄はそれぞれ。ご主人には、厚みがあって安定感のある、ストライプの碗を。江口さんと中学生のお子さんには、軽く、すっと立ち上がり、女性の手でも持ちやすい形のものに。まだ小学生の二人のお子さんには、口が広く高さが低くて食べやすい碗を選んで。

「家族それぞれに合う形は違うし、そろえたところで、割れたら困るじゃないですか。元からそろいのものにしなければ、気分もラク。そしてデザインがバラバラでも、好きなものを集めているから、食卓の上で自然とまとまって見えませんか?」

確かに! 碗ものだけでなく、皿や鉢もそろえないというのが江口さんのルール。「そろいの器は、収納面でも大変。器の枚数が減り、管理がぐっとラクになりますよ」

子どもにこそ、本物を与える意味がある

江口さんの食器棚に見つけた、白い小さな器やカップ。お子さんたちの離乳食の時期に買い求めたものです。

「子どもには最初から、プラスチック製の器ではなく、木の器や陶器のものを与えました。口当たりのよさということ以外に、大切に扱うことを覚えてほしかったから。小さいころに、食器を割ってしまう体験をすると、器を大切に扱わなきゃいけないことを体感しますよね」



「子どもの時こそ、本物に触れることが大事、というのも私のこだわり。汁椀は漆塗りのものを普段から使っています」と江口さん。箸も専門店で、子ども一人一人に合うものを探し求めたら、「先の合わせがきれいで、素材のよさもあるんでしょうか、少しぎこちなかった箸の持ち方が、自然ときれいになったんです」。きちんとしたものを使い、知ることで、人は育つということを、改めて思い知らされたエピソードでした。

気分を変えたいなら、テーブルの布使いで

ママ友が来る日、ちょっとしたハレの日……、特別な日のテーブルコーディネートはどうしているのでしょうか? 「テーブルの気分をパッと変えたいなら、テーブルセンターがおすすめ」と江口さん。「敷くだけでテーブルが締まり、華やかな印象になりませんか? 大皿の下に敷くと、汚れを受け止めてくれ、洗うのに手間がかからないのもいいんです」 

ちなみにこのテーブルセンターは、イケアのもの。「イケアは新柄もよく登場して、いいものがあるとよく買い足します。汚れるものですから、価格の面でやさしいのも魅力ですね」

その分、テーブルクロスは黒や深みのあるグレーやこげ茶がお気に入り。「テーブルセンターが華やかな分、かっこよく引き締めてくれます」

簡単な布使いは、特別な日だけでなく、普段の日にもぜひ、と江口さん。「いい日もあれば、悩んだり、落ち着かない日もありますよね。そんな日に、テーブルを少し華やかにするだけで、テーブルだけでなく、自分の気持ちのスイッチもうまく切り替えられる気がします」

「本当に好きなもの」を知ることが毎日を豊かにする近道

「飽きのこない、シンプルなデザインのものを選んで、壊れるまで、長く使い続けるのが好き」という、江口さん。どんな料理を作ってもうまく盛り付けが決まり、テーブルが自分らしくなる、大好きな器がいつもある。それだけで、忙しい毎日の中でも、ふと心が満たされるはず。豊かな暮らしって、自分の「本当に好きなもの」を知り、生活に取り入れる積み重ねによって築かれていくんですね。

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江口恵子さん
フードスタイリスト。雑誌や書籍、広告などで活躍。東京・吉祥寺にある「ORIDO.(オリド)」のオーナーでもあり、カフェや料理教室、ケータリングなども行う。著書に『普段使いの器は5つでじゅうぶん。』(ジービー)など。中2の長女、小5の長男、小2の次女の3児の母でもある。http://www.orido.life

取材・まとめ:秋山香織
撮影:土屋哲朗(主婦の友写真課)

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