ご飯のお供でおなじみのしらすは、イワシ類の稚魚です。捕れたての生しらすや釜揚げしたしらす、天日干ししたちりめんじゃこなど、さまざまな食べ方で親しまれています。
春の季語にもなっているように、5月は漁獲が全盛となり、しらすの「し」を4と見立てて5月4日はしらすの日とされています。そんなしらすの旬の時期を知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、しらすを美味しく食べられる季節から名産地まで徹底解説します。ご飯にかけるだけでなく、ひと手間加えたおすすめのレシピも紹介しているので、ぜひ美味しいしらすを楽しんでくださいね。
しらすの旬と産地
しらすの一般的な旬は、新物が出回り始める春先から秋にかけての漁獲が多くなるシーズンです。そのため、春先から秋にかけては比較的値段が安い時期でもあります。
しかし、産地によっては旬の時期が異なる場合があり、夏が旬の産地や冬まで美味しい産地などさまざま。ここでは、しらすが有名な関東から関西の名産地をメインに紹介します。産地によって美味しい時期が変わるので、ぜひチェックしてくださいね。
名産地①兵庫県の旬
海の幸の宝庫である瀬戸内海に面している兵庫県では、淡路島がしらすの産地として有名です。潮流が早く餌が豊富な明石海峡で獲った淡路島のしらすは、その鮮度の良さと品質の高さで知られています。
淡路島では4月下旬から11月末までしらす漁が行われており、この期間中であれば天候不良のときを除き、いつでも美味しいしらすを食べることができます。淡路島では新鮮なしらすを使った生しらす丼が有名。
特に、4月〜5月と9月中旬〜11月が旬の時期なので、食べに行くならこの時期がおすすめです。
名産地②愛知県の旬
愛知県はしらす漁獲量で全国でも有数の産地で、特に「しらす日本一の島」と呼ばれている篠島が有名です。ほかにも、知多半島の先にある南知多町の日間賀島や師崎でも多くのしらすが水揚げされています。
篠島ではしらすをイメージした「しらっぴー」というキャラクターも人気です。愛知県のしらすの多くはカタクチイワシの稚魚であり、4月〜11月に多く漁獲されています。特に、6月〜8月には旬のピークを迎え、栄養がたっぷりな美味しいしらすが食べられますよ。
名産地③静岡県の旬
静岡県は駿河湾と相模湾に面しているため、多くの漁場を抱えており、さまざまな魚が水揚げされています。しらすも静岡で穫れる有名な魚の一つであり、由比港や福田漁港、田子の浦、浜松の舞阪漁港などで盛んに水揚げされています。
それらの漁港でとれたしらすは、観光地として有名な熱海や伊豆、沼津、焼津などで生しらす丼として食べることができますよ。また、静岡では生桜えびもしらすと並ぶ海の幸として有名です。由比港では生しらすに加えて新鮮な生桜えびも楽しむことができます。
名産地④茨城県の旬
しらすは茨城県の水産物を代表する魚で、年間生産量は3,395tで全国4位(農林水産省「漁業センサス」平成30年調べ)です。
茨城県では鹿嶋市、那珂湊、日立市などさまざまな漁港でしらすが漁獲されていますが、茨城県で特に有名なのが大洗町。大洗町では毎年「大洗海の幸まつり(旧大洗しらす祭り)」が開催されており、獲れたての新鮮なしらすを食べに県内外から多くの観光客が訪れています。
茨城県のしらすは9月〜10月が美味しくなる時期といわれているので、購入の際はぜひチェックしてみてくださいね。
名産地⑤大阪府の旬
大阪府も関西のしらす産地として知られています。旬は漁獲量が多くなる4月〜11月の間。大阪ではしらすのことを「かえり」と呼ぶこともあるそうです。
今までは、和歌山県などの加工業者の手に渡ることもあり水揚げ量は少なかったそう。しかし、平成29年に岸和田漁港地蔵浜にしらすの荷捌き場が開設されたことで、水揚げ箇所が集約されるようになりました。それからは、大阪でも鮮度を保った高品質なしらすを生産できるようになったそうです。
名産地⑥神奈川の旬
神奈川県も漁獲量は少ないですがしらすの産地として有名です。相模湾で漁獲されるしらすを総称して「湘南しらす」と呼んでおり、横須賀や三崎を始めとして小田原、平塚、大磯など各地の漁港で水揚げされています。
湘南しらすは3月〜12月の期間で漁獲されており、 春は小ぶりでぷりぷりとしたしらす、秋は脂がのったしらすを楽しむことができます。水揚げされたしらすは、神奈川県の観光地として有名な鎌倉、茅ヶ崎、江ノ島などの湘南地域で新鮮に丼などにして食べることができますよ。
産地はほかにもたくさん
しらすの産地は上述した他にも多く全国各地で漁獲されています。
まず、東北以北では宮城県の閖上や北海道の寿都が挙げられます。次に、関東では千葉県の銚子や旭市の飯岡が有名。特に飯岡漁港は県内有数のしらすの水揚げ高で、新鮮な生しらすは県内でも限られたところでしか味わうことができません。
続いて、海の幸で有名な富山県や和歌山県では湯浅、広島県では倉橋が有名です。四国では香川県、愛媛県、徳島県、高知県と全県でしらすが穫れ、特に徳島県の和田島では、和田島ちりめんという品質が高いしらすで有名です。最後に、九州でも熊本県の水俣や大分県が有名な産地として挙げられます。
しらすの禁漁期間と解禁時期
しらす漁には「禁漁期間」といって、漁が禁止される期間があります。禁漁期間が設けられている理由は、年々漁獲量が現象してきているしらすを保護するためです。
この禁漁期間は土地によって異なり、禁漁期間がないところもあります。そして、禁漁期間にはしらすが水揚げされないため、「生しらす」が食べられない時期でもあります。
そのため、生しらすを食べに行く際は事前にしらす漁の状況をチェックする必要があります。馴染みのある産地を中心に紹介するので、できれば漁が解禁している時期に訪れるようにしてくださいね。
①神奈川県
【禁漁期間】1/1~3/10【解禁時期】3/11ごろ
神奈川県ではしらすの禁漁期間は1/1〜3/10です。この禁漁期間では相模湾での漁獲ができないため、江ノ島などの湘南や鎌倉の腰越でも生しらすを食べることはできません。
しらすの漁獲ができるようになる解禁時期は3/11から。解禁されてからは鎌倉や茅ヶ崎、江ノ島などの湘南で美味しいしらすを食べられるようになりますよ。ただし、解禁しても海の状態によって漁ができない場合は、生しらすが食べられないときもあります。
②静岡県
【禁漁期間】1/15~3/20【解禁時期】3/21ごろ
駿河湾に面している用宗漁港や由比漁港などで、多くのしらすが水揚げされる静岡県では1/15〜3/20が禁漁期間です。そして、翌日の3/21には漁が解禁され、静岡県の各地でしらすが水揚げされます。
また、静岡県ではしらすに並んで有名な桜えびにも禁漁期間が設けられています。桜えびは産卵期である6/11〜9/30が禁漁期間であり、さらに漁師が自主的に1月〜3月を禁漁としています。そのため、桜えびは3月下旬~6月上旬の「春漁」と、10月下旬~12月下旬の「秋漁」の年2回漁がされています。
③兵庫県
【禁漁期間】12月~3月【解禁時期】4月ごろ
兵庫県のしらすの禁漁期間は12月〜3月とされています。そして、4月頃に解禁され、11月末まで盛んに水揚げされます。
兵庫県の淡路島は新鮮なしらすが魅力で、生しらす丼はご当地グルメとして知られています。美味しい生しらすが提供できる秘訣は、水揚げするとセリをとばして、すぐに殺菌し-40℃で急速冷凍するためです。
これによって鮮度を保ったまま美味しい生しらすを提供できるようになったのです。そのため、淡路島に行く際には解禁時期をチェックして、新鮮な生しらすをぜひ堪能してくださいね。
④愛知県
【禁漁期間】毎月第2・4土曜日【解禁時期】毎月第2・4日曜日~
愛知県では禁漁期間は毎月第2・4土曜日とされています。そのため、年間を通してしらすが盛んに水揚げされており、11,433トンと全国でも第2位の漁獲量を誇ります(愛知県公式ホームページ:2019年度調査)。
また、解禁時期でも限られた資源を取りすぎないよう、漁の開始時間と終了時間が漁業者間で厳しく決められています。このように制限しながらも、年中新鮮なしらすを味わうことができるのが愛知県のしらすの魅力です。
⑤和歌山県
【禁漁期間】なし【解禁時期】なし
和歌山県では、湯浅町を始めとして和歌浦、田辺市などでしらすが多く水揚げされていますが、実は和歌山では禁漁期間がありません。そのため、年間を通してしらすが水揚げされており、1年中美味しい生しらすを食べることができます。
その中でも、3月〜5月の春しらす、9月〜10月の秋しらすは甘みがあり、特に美味しい時期として知られています。また、和歌浦湾で獲れるしらすは「わかしらす」としてブランド化されています。
⑥鹿児島県
【禁漁期間】なし【解禁時期】なし
九州でしらすの産地として鹿児島県でも禁漁期間は設けられておらず、一年中新鮮なしらすを食べることができます。土地柄、鹿児島県は2本の暖流が流れているため、日本でも唯一一年中しらす漁ができるのです。そのため、鹿児島県では冷凍ではない超新鮮な生しらすを食べられますよ。
しらすの栄養とレシピ
ここまでしらすの名産地から地域ごとの旬まで紹介しました。禁漁期間が分かれば、あとは美味しく食べるだけ!以下では、しらすを使った絶品レシピを3つ紹介します。
また、しらすに含まれる豊富な栄養素についても解説します。栄養満点なしらすをぜひ美味しく食べてくださいね。
しらすはたんぱく質が豊富!
しらすは、カルシウムやビタミンD、ビタミンB12、タンパク質などが豊富に含まれています。これらの栄養素は加工方法で異なり、半乾燥のしらすには100gあたり520mgのカルシウムが含まれていますが、釜揚げしたしらすには半分以下の量しか含まれておりません。
しらす(釜揚げ)に含まれる成分は以下の通りです。
- たんぱく質:17.6g
- 脂質:1.7g
- 炭水化物:-g
- ナトリウム:840mg
- カリウム:120mg
- カルシウム:190mg
- マグネシウム:48mg
- リン:320mg
- ビタミンA:140μg
- ビタミンD:4.2μg
- ビタミンE:0.8mg
- ナイアシン:2.1mg
- ビタミンB12:1.5μg
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
また、筋肉や臓器を作る上で必要なタンパク質も多く、さらにタンパク質に必要な核酸の合成に関与しているビタミン12も含まれているため効率よく栄養を摂取することができます。ただ、しらすにはコレステロールも含まれているため、吸収を抑えてくれる食物繊維を多く含む野菜と一緒に摂るのがおすすめですよ。
K .brocante さんのアイデア
定番!しらす丼
材料 : しらす / 紫蘇 / ポン酢等
素朴な味わいが魅力のしらす丼。新鮮なしらすのぷりぷりとした食感が口の中に広がります。調味料をかけなくても釜揚げしらすの塩気が食欲をそそります。ポン酢やだし醤油などで味付けするのもおすすめ。シンプルな味わいに心がほっと癒される、素朴な美味しさが魅力の贅沢な海の幸をぜひ味わってみてくださいね。
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santababyさんのアイデア
茄子のしらすぽん酢
材料 : 茄子 / ごま油 / ぽん酢・しらす・青ねぎ(小口切り)
夏の風物詩である茄子としらすをぽん酢の心地よい爽やかさで味付けした一品。一口食べると、ふんわりと広がるぽん酢の爽やかな酸味が舌を刺激し食欲をそそります。しらすの塩気と茄子の自然な甘みはおつまみにもぴったり。栄養豊富で見た目も涼やかで食卓にぴったりのレシピなので、短い夏の間に存分に楽しんでくださいね。
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happydaimamaさんのアイデア
しらす大根おろし丼
材料 : ご飯 / 大根おろし / シラス / 刻み葱 / ポン酢・醤油
爽やかな風味が魅力のしらす大根おろし丼。一口食べると、新鮮なしらすのぷりぷりとした食感が口いっぱいに広がります。さらっとした大根おろしの爽やかな辛みが、しらすの風味を引き立ててご飯がすすむこと間違いなし。手軽に準備できて彩り豊かな一品で、美味しさと満足感を味わえますよ。さっと作って、さっと食べて、心も体もリフレッシュしましょう!
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美味しいしらすを見分けるポイント
最後に、美味しいしらすを見分けるポイントを紹介します。スーパーで購入する際はぜひチェックしてみてくださいね。
新鮮そうなものを選ぶのは当たり前ですが、加工方法によって見分け方が異なります。例えば、釜揚げしらすの場合は一つ一つの身がしっかりしていて、みずみずしくフレッシュなものを選ぶのがベストです。
一方、身がボロボロしてしまっているものは避けるのがベター。しらす干しの場合も、一つ一つの身がしっかりしているかがポイントです。また、くの字に曲がっているものや、折れてしまっているものは避けましょう。
まとめ
ごはんのお供として馴染みのあるしらすですが、旬の時期が地域によって異なることを知っている人は少なかったのではないでしょうか。
栄養満点で加工方法ごとに楽しめるしらすをぜひ食卓に並べてみてくださいね。新鮮な生しらすは漁港の近くでしか食べられないので、ぜひ禁漁期間に注意しながら味わいに訪れてみるのもいいですよ。
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