Sさん宅(愛知県)
吹き抜けやデッキへと続く空間の広がりで、実質以上の広さを感じる杉本さん宅。その開放感に加えて、階段2段分フロアを高くしたリビングは、この家いちばんの見せ場です。
「ほかの家にはない遊びが欲しかったので、スキップフロアは見た目重視でお願いしました。でも、床を上げたことで収納スペースが生まれ、機能的にもよい結果になりました。ステップに気楽に腰かけられるので、友人にも自由にくつろいでもらえます」
こだわりを実現させながら、コスト調整に成功した杉本さんですが、家づくりは計画的というより衝動的だったとか。紆余曲折ありましたが、最初につまずいてしまったおかげで、逆に満足できる家が完成したようです。
コストダウン3カ条
1.空間を分断しないことで開放感を得ながら建築費を削減
2.プライベートスペースにはリーズナブルな素材を使用
3.建具や家具など既製品と造作を上手に使い分ける
1LDK
造作のTVラックは圧迫感のない、宙に浮いているようなデザイン。吹き抜けの窓から存分に光が入るよう、バルコニーの屋根に開口部を設けています。
吹き抜け+間仕切りをなくしたことで、開放感いっぱいのLDK。階段の造形も空間のアクセントに。「ienowa」のソファも映えます。
「絶対に採用したかった」というスキップフロア。床下には隠れ部屋のような収納スペースが!
外観
高低差のある敷地に擁壁を築造するのではなく芝生で土留めを設置しました。軒裏に張ったレッドシダーと、斜めにカットした袖壁がポイントの外観。芝生の緑と「BONBOBI」のポストの赤が好相性です。
当初、ご主人の希望は全面吹きつけ。「かなり序盤で無理とわかりましたが、正面だけにしぼったら予算内でいけました!」軒裏に張ったレッドシダーと斜めにカットした袖壁で個性を演出。正面だけ吹きつけ塗装を施し、側面や裏側はサイディング張りのままにしてコストダウン。
1F デッキ
「屋外リビングとして、どうしても欲しかった」というベイスギ材の広々としたデッキ。開口部を設けてシマトネリコを植えています。リビングとひとつながりでバーベキューも楽しめます。
家族の気配を感じるオープンなプラン。結果として、コストダウンにも貢献
結婚して近所のアパートに暮らしていた杉本さん夫妻。「全然その気はなかったのに、営業で訪ねてきたハウスメーカーのかたと話をしているうちに買えそうな気がしてきて。ところが契約時、両親にサインをもらいに行ったら、1社しか見ていないのに決めるなんて、と猛反対されました。自由度がまったくない家だったので、今思えば断ってよかったです(笑)」
ですが、すっかり気持ちに火がついてしまったお二人。家に対するビジョンをもたずにいたことを反省し、何がいちばん大事かをシンプルに考え、「無垢材の床で、日当たりのいい家」という結論を出しました。「そこから重点的に調べたら、こちらの要望をとり入れて、自由なものをつくってくれそうな『フリーダムアーキテクツデザイン』にたどり着きました」
土地の価格が予定より高く、その分を建物で抑える必要がありましたが、最初に設計担当の近藤道太郎さんから言われたのは、「予算無視で、したいことをすべて言ってください」。まず理想の家を設計し、そこから費用を削る工夫をしていきました。「比較的安価でおしゃれな既製品を多用するほか、LEDではなく白熱球タイプの蛍光灯にするなど、見た目をさほど変えずに数千円、数万円のコストダウンを地道に重ねました」
一日じゅう日の当たる、開放的な家。音楽仲間など友人も呼びやすくなり、みんなで演奏やバーベキューを楽しむこともしばしば。家族だけの休日も、お二人でギターを弾いたり、お子さんとハンモックに揺られたり、のんびり家で過ごすことが楽しくなったそう。「家賃と違い、この家のために支払っていると思うと気分も上がる(笑)。帰宅するたびに、いい家ができたなとしみじみ思います」
1F DK
天井が低くなっているスペースなので、こもり感があって落ち着きます。ダイニングもリビングも見渡せるキッチンは、孤立感ゼロ。
玄関とダイニングは個性的な造作棚を仕切りに。リーズナブルなシナ材を使用して予算をセーブしています。背板を一部抜いているので、キッチンにいても玄関の様子がわかります。
1F キッチン
ニッチのある腰壁を設け、家に合わせたシンプルデザインに。背面収納は、“見せる”と“隠す”をバランスよく。戸棚は、コストカットのため背板をつけませんでした。
「LIXIL」のキッチン。「LDから見えない場所なので、シンクには好きな色を使いました」 風を通すならドアでなくてもOKなので、元々は勝手口を付ける予定でしたが、窓に変更してコストダウンをはかりました。
腰壁のニッチには、奥さまが色みとサイズを指定したタイルを貼って。お子さんのカラフルな絵本もダイニングを明るくします。
1F リビング下の収納スペース
隠し部屋的なリビング下の収納スペースは、階段下が入り口になっています。下地材のままにしてご主人が塗装することでコストダウン。「家じゅう白なので、ここだけはブルーに」
階段を5段ほど下がると、高さ110㎝、広さ3.7畳の空間が。主に季節用品を収納。
プライベート空間は無駄をなくしてシンプルに
2F 子ども部屋
10.6畳の広々とした子ども部屋。クローゼットは、コストカット目的と同時に、子どもたちが好きにアレンジできるように扉をつけず、中もつくり込みませんでした。扉をつけずカーテンで代用することでコストダウン。
2部屋にもできるよう、ドアは2つ設置しました。2階の床は1階のオーク材より低コストのバーチ材を採用。
2F 寝室
子ども部屋を広くするため、寝室はコンパクトに。少しでも広くするため、廊下の予定だったスペースを寝室にあてました。扉類はすべてリーズナブルな既製品。
1F 洗面室
洗面台の壁面にも、キッチンの腰壁と同じタイルを貼ってアクセントに。少し飛び出すようにデザインした鏡の枠は、「棚がわりになって便利です」。洗面台は既製品よりコストのかからないシンプルな造作もの。
1F 浴室
システムバスは、「LIXIL」のショールームでセレクト。「家との統一感を考えて木目調にしました」
1F トイレ
ゲストも使う1階のトイレはタンクレスに。「サンワカンパニー」の埋め込み式手洗い器は、奥行き17㎝の省スペース仕様。トイレは壁の1面のみクロスの色を変えてアクセントにしました。
2F トイレ
プライベートスペースのトイレは、コスト安なタンクつきに。1階、2階ともにトイレの床は、木目がリアルなクッションフロアを使用。
1F エントランス
土間のようなモルタル仕上げ。正面の靴箱は壁や天井と同じ白色にし、存在感を消しています。←玄関をLDKにとり込むことで無駄なスペースをなくし、空間を広く見せています。
靴箱は背板を張らず壁面をそのまま利用してコストダウン
玄関とリビングの仕切りやドアをなくして、造作棚で目隠し。仕切りやドアがないのでコストダウンに。
家づくりの本音トーク!
希望したプランをそのまま進めたら、どれくらい予算オーバーしましたか?
A 「予算のことはいったん忘れていいから」と、やりたいことをすべて盛り込んだ理想の家を最初に設計してくださったのですが、それは1500万円ほどオーバーしていました(汗)。
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最終的にいくらくらいのコストカットに成功しましたか?
A 土地代を含めて予算組みをしていたのですが、土地が予定より高くなってしまったので、その分の350万円ほどをコストカットしたことになります。
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コストにおける意外な盲点やつまずきポイントがあれば教えてください。
A 川が近いために土の質が悪く、地盤改良が必要で、その費用が思いのほかかかりました。それと、勝手に建築費の中に含まれていると思い、設計料を忘れていました(笑)。
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これから家づくりを始める人にぜひアドバイスをお願いします。
A 実現できるできないは別として、希望はとにかく伝えてみる。それも設計担当者さんに直接話すと、すぐに回答がもらえて、不可能な場合も代案の相談ができます。あとは、オープンハウスやハウジングセンターなどを見学する際に、自分が何をしたいかの「核」をもっていく。それがないとブレまくって、先方から言われたことを全部受け入れてしまったりするので、気をつけてくださいね!
PROFILE
ライブハウスでの音楽活動を通じて知り合ったという杉本さん夫妻。1歳になる娘さんと、ポメラニアンの「こむぎ」くんとの、3人+1匹暮らし。今年の12月には新しい家族が誕生する予定です。
主な仕様
床/[1階LDK]ナラ無垢フローリング [2階洋室・寝室]バーチ無垢フローリング [1階・2階トイレ・洗面室]クッションフロア
壁/[1階]ビニールクロス [2階]ビニールクロス
給湯/ガス給湯器:エコジョーズ
キッチン/本体:「LIXIL アレスタ」(Ⅰ型・幅255㎝)
浴室/浴槽:「LIXIL キレイユ UB1616」
洗面/ボウル:ネック「サンワカンパニー」 水栓金具:「サンワカンパニー」
トイレ/[1階]「LIXIL サティスSタイプ」 [2階]「LIXIL アメージュ」
サッシ/「DUOPG」ペアガラスサッシ
玄関ドア/「YKK AP スマートドアヴェナート」
屋根/ガルバリウム鋼板
外壁/サイディング:「ニチハ モエンエクセラード16」 サイディング張りの上にリシン吹きつけ 軒裏・一部壁面:レッドシダー キシラデコール塗装
断熱方法・材質/屋根:スタイロフォーム t65 壁:高性能グラスウール t100 床:スタイロフォーム t50
DATA
家族構成 |
夫婦+子ども1人 |
敷地面積 |
174.24㎡(52.71坪) |
建築面積 |
68.91㎡(20.85坪) |
延べ床面積 |
108.56㎡(32.84坪) 1F 59.63㎡ + 2F 48.93㎡(床下収納8.69㎡は除く) |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2014年1月~6月 |
本体工事費 |
約2023万円(そのほか照明器具21万円、外構工事105万円、設計料12%〈現在は13%〉) |
3.3㎡単価 |
約56万円(吹き抜け施工を加えた施工床面積35.78坪で計算) |
設計 |
フリーダムアーキテクツデザイン株式会社 0120-489-175 |
構造設計 |
株式会社岩田建築事務所 ☎058-234-2113 |
施工 |
堀建築 ☎058-274-0306 |
設計のポイント
フリーダムアーキテクツデザイン
1995年の創業以来、「ニュートラルからの発想」をポリシーに、全国に数百棟の実績をもつ「フリーダム」。資金計画から土地探し、設計・監理までトータルにサポートしています。
シンプルな外観ながら、白い壁と木質感をやさしく調和させたフレームで囲い、杉本さん宅ならではの個性を演出しました。LDKには間仕切りを設けず、家じゅうどこにいても家族の様子がわかるプランに。また、吹き抜けの2階部分に大きな開口部を設け、室内に明るい日だまりをつくるようにしています。スキップさせたリビングや、その下に設けた“隠し部屋”、また個性的な造作棚など、空間に遊びを加え、日々の暮らしが楽しくなる家をめざしました。
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