【Tさん宅(愛知県)】
司令塔のように、リビング、ダイニング、和室が見渡せるキッチン。
お気に入りの器や道具を飾りながら収納できるように、オープン棚もたっぷり設けました。
自宅を新築して少したった頃から、リビングで“暮らしを素敵にしてくれるものたち”を集めたお店「ツバメ舎」を
始めたTさん。ご主人と2人のお子さんとの4人暮らし。
お子さんが成長して、以前の住まいが手狭になったのを機に、家づくりをスタートさせたTさん。いずれ家を建てるときのために雑誌の好きなシーンを切り抜いて、理想の家のイメージを思い描いていました。「以前はナチュラルでかわいい感じが好きでしたが、だんだん黒やシャープな質感が好きになってきて……。北欧の雑貨や映画『かもめ食堂』の雰囲気は、昔から変わらず好きなテイストです」。完成した新居は、まさにTさんの「好きなイメージがそのまま形になった家」となりました。
Tさん宅の工夫
予算内におさめる工夫
理想のイメージとこだわりたい部材(無垢材の床、珪藻土の壁)を設計士さんにしっかり理解してもらったうえで、おまかせしてコストコントロールをしてもらいました。
好みのインテリアにする工夫
「やさしいけれど甘くない」がTさんのコンセプト。やさしい木の質感を生かしながら黒で引き締めたり、
パイン材の床をグレーの塗装でシックに仕上げるなどの工夫を。
暮らしやすさの工夫
スキップフロアを生かして大容量の床下収納を確保。1階はキッチンを中心に、ダイニング、
リビング、和室に一体感をもたせつつ、ほどよく仕切る壁でゆるやかにゾーニング。
1F キッチン
【写真左】納戸(スキップフロア部分の床下収納)の扉を黒板塗料でペイント。周囲の黒い板壁になじませながら、おしゃれな雰囲気に。チョークの描き文字もカフェのよう。
【写真右】キッチン本体は、機能性とコストを考慮してシステムキッチンを採用。周囲を大工仕事でつくり込み、Tさん好みの雰囲気に仕上げました。
甘さを抑えたクールなタイルで 味わいをプラス
キッチン背面のオープン棚には、“やさしいけれど甘くない”小ぶりのレクタングル(長方形)タイルを張って
アクセントに。
手元を隠しながら こまかなものをおしゃれに収納
作業中の手元を目隠しできるよう、シンク前の立ち上がり部分に木製の棚を設置。調味料などの収納に便利です。
1F ダイニング
【写真左】ダイニングテーブルは、Tさんが以前勤めていたライフスタイルショップ「プレジャー」のオーナーが、新築祝いにDIYでつくってくれたもの。
【写真右】窓辺にテーブルを置いて北欧スタイルのダイニングに。自然に囲まれた環境を生かし、“家の中から外の風景を楽しむ”もT家の隠れテーマ。リネンのカーテン越しに注ぐやわらかな日ざしが、窓辺をやさしい印象に。
壁の1面をペイント(アーバンベージュ)。「家の中のところどころにアクセントウォールをつくってもらいました。場所ごとに色をかえて楽しんでいます」
1F 勝手口
【Point】菜園とつながる土間スタイルの勝手口
「土間っぽい空間が欲しい」というリクエストがかなった勝手口。菜園で収穫した泥つき野菜を保管する場としても重宝します。
【写真左】黒い板壁の内側は和室。壁を一部くりぬいて、風と光の通り道を設けました。
【写真右】ダイニングから菜園に続く勝手口のアプローチを長めにとって土間空間に。床のコンクリートと黒い板壁のコントラストや、室内が外につながっていく感じがお気に入り。
1F 和室
キッチンからスキップフロアのリビングに向かう階段横のスペースを、畳敷きのセカンドリビング(茶の間)に。
「とっても居心地のいい場所で、夏はお昼寝をしたり、冬はここにこたつを出して、家族でぬくぬくしています」。
切りとられた壁の向こうは土間勝手口。遊び心をもたせながら光と風をとり込んでいます。
1F リビング
【Point】吹き抜けの高さを生かしてプロジェクター投影
週末は家族でDVD観賞。定番のプログラムは『かもめ食堂』。「最近は『白鯨』や『荒野の七人』など、昔の映画ばかり見ています」
【写真左】薪ストーブを囲む、居心地のよさそうなリビング。プロジェクターの映像がアートのようでおしゃれです。「じつはわが家はテレビがないんです。テレビのアンテナケーブルを引き込むのに80万円かかるとかで、だったらプロジェクターだけでいいや、と。でも結果オーライです(笑)」
【写真右】北欧のユーズド家具でコーディネートしたソファプレイスは、休日の家族の指定席。
【Point】スキップフロアの床下を活用して収納をたっぷり確保
和室側から出し入れできる収納はほんの一部。リビングの床下はすべて、大容量の納戸に。
階段を上った先に広がるリビング。開口部に扉はつけず、DKや和室と一体感をもたせ、リネンのカーテンで光と風を通しながらほどよく間仕切りしています。
【Point】平日のリビングを利用してショップをオープン
リビングのあきスペースを利用して自宅ショップ「ツバメ舎」をオープン。
ショップオープン時のリビングの様子。Tさん自身がともに暮らしたい&身につけたいと思う「暮らしのもの」「おいしいもの」「おしゃれのもの」を集めて販売しています。
夏は海からの風を受け、冬は薪ストーブを囲んで――
心地よい時間の流れる場所
Tさんがイメージしたのは、「やさしいけれど甘くない家」。設計を担当した「フィールド」の平野さんは、「この微妙なニュアンスがくせ者で……(笑)。Tさんのスクラップブックを見ながら、これは甘い、これは甘くないというやりとりを繰り返し、やっとイメージをつかむことができました」。平野さんは、今もTさんが好みそうなものはすぐにわかるとか。
ニュアンスを理解してもらえたことが信頼につながり、結果的にコストも予算内でおさめることができた、とTさん。
「無垢材の床や珪藻土の壁など、いくつかの部材とちょっとしたディテール以外、間取りも空間のデザインもおまかせに。平野さんはコストをコントロールしながら創意工夫をして、私たちの好きな雰囲気を生かしながら素敵な空間をつくり上げてくれました」
ロケーションを生かし、海が見えるようにリビングを1.5階に配し、家全体をスキップフロアで構成。床下を大容量の収納に生かす工夫もとり入れました。
海が見えるリビングには憧れの薪ストーブを置いて、休日には家族でDVDを鑑賞。平日はDKが暮らしの中心で、「せっかくのリビングがあいていたので(笑)」、“ちょっといい暮らし”を提案する自宅ショップをオープン。充実した毎日を送るTさんです。
1F 玄関
【写真左】“白い箱”に“黒い箱”を組み込むようにデザインされたTさんのお宅。“黒い箱”部分の板壁が、ナチュラルな空間の引き締め役に。薪ストーブ用の薪がシンプルな玄関に味わいを添えています。
【写真右】玄関ドアはマットの右手に。奥には大容量のシューズ&コートクローゼットをつくりました。「かなり広いので、まだ十分に余裕があります。ディスプレイも楽しめそう(笑)」
1F 玄関
2WAYで出入りできるシューズ&コートクローゼット
たたき側からシューズクローゼットに、廊下側からコートクローゼットに出入りできます。中でつながっているので、とても便利。
玄関の正面にウエルカム感のあるコーナーを
遊びにきたお客さまや、家に帰って来た家族が、玄関をあけたときに心がなごんだり、季節を感じてもらえるコーナーを設けました。
2F 階段ホール
Tさんの大好きな“かもめ食堂カラー”で壁をペイント。オープン棚には装丁のかわいい本や旅行の思い出の品などを飾りながら収納して、家族の交流の場所に。「アイロン台がちょうどここにおさまったので、ユーティリティコーナーとしても活用しています(笑)」
2F 洗面室
Tさんのこだわりアイテムのひとつだった「実験用シンク」を使った、シンプルで清潔感のあるサニタリー。キッチンと同じレクタングルタイルやマリンランプをアクセントにして、“やさしいけれど甘くない”テイストにまとめました。
2F 子ども部屋
2室ある子ども部屋は、白いクロスとパイン材のフローリングですっきりシンプルに。室内には、2人のお子さんがそれぞれ好きな色を1面に塗ったペイント壁も。
外観
“白い箱”と“黒い箱”で構成された外観。“黒い箱”部分のリビング内のショップを訪れたお客さまは、外から直接入ってもらえます。小高いアプローチに期待も高まりそう。
海が見えるリビングに続く小高いアプローチ
スキップフロアで海が見える高さにしたリビング(黒い板壁部分)。庭からも出入りできるように、土を盛り上げてアプローチをつくりました。
トレードマークの番地サインとショップ「ツバメ舎」の看板。
木製ドアが映えるシンプルな玄関。積み上げられた薪が、心地よさそうな室内と、素敵な家族の暮らしを
想像させます。
わが家のお気に入り♪
スモーキーカラーで彩ったアクセントウォール
玄関の正面、ダイニング、2階の階段ホール、子ども部屋の一部の壁を、それぞれの空間に似合う好みの色でペイントしました。
北欧デザインのシンプルな薪ストーブ
「家の中で主人がいちばん乗り気だったのが薪ストーブでした」。シンプルで高性能なノルウェーのヨツール社のものを選びました。
DATA. Tさん宅(愛知県)
設計のPOINT
自然に囲まれ、海が見下ろせるという絶好のロケーションを生かして、家族のくつろぎの場であるリビングから海が見えることを第一のテーマにプランニングしました。限られた予算の中で、無垢材の床やLDKの珪藻土の壁は譲れないという要望があり、また、暮らしたい家の世界観もしっかりもっていたので、手頃な部材を使ってコスト調整をしながら、仕上げでTさんの好きな雰囲気にもっていけるように工夫を凝らしました。
フィールド平野一級建築士事務所
平野 由久さん
愛知県を中心に住宅とリフォームを手がける、“おしゃれで楽しく暮らせる家づくり”が評判の設計事務所。施主の好みをとり入れながら、豊富な経験に基づいた提案力に定評が。
家族構成 |
夫婦+子ども2人 |
敷地面積 |
343.82㎡(104.01坪) |
建築面積 |
64.18㎡(19.41坪) |
延べ床面積 |
119.25㎡(36.07坪) 1F 64.18㎡ + 2F 55.07㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2010年4月〜10月 |
本体工事費 |
約2000万円(外構は除く) |
3.3㎡単価 |
約55万円 |
設計 |
フィールド平野一級建築士事務所 TEL: 052-413-1820 |
施工 |
丸七建設興業㈱ TEL: 0564-62-5811 |
※本体工事費は建築当時のものです。物価の変動がありますので、参考価格としてお考えください
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