【Kさん宅(東京都)】
いちばん条件のいい場所に設けた多目的室。本棚とカウンター以外は、余計な造作のない広々とした空間に。壁の一部をペイントしたり、ウォールステッカーを貼ったりと楽しい演出も。
Kさん宅の子どもたちは、6歳と3歳の男の子。やんちゃ盛りのこの兄弟が、「家全体を自由に使って、のびのび遊べるようにしたい」――これが家づくりにあたってのご夫妻の希望でした。 「住宅雑誌を見ていたら、ちょうどうちの子くらいの男の子が梁によじ登って遊んでいる写真を見つけたんです。そのシーンにひと目惚れしてしまって、わが家もこんな楽しいプランにしたい!と、そのお宅を設計した瀬野和広さんにコンタクトをとってみました」 瀬野さんは都内に事務所を構える建築家。購入した土地のご近所だったことも、親近感を抱くきっかけになったとか。 話し合いを進めるうちに、「家じゅうどこでも子ども部屋」というコンセプトで意気投合。いわゆる子ども部屋をつくらない、オープンな多目的室を中心としたプランを採用することになりました。そのためKさんの新居では、仕切られた個室は寝室のみ。間取りで言うと2LDKのシンプルなプランになりました。 「子どもが2人いるから子ども部屋を2つつくる、という考え方になじめなくて。『子どもは放っておいても好きな場所を遊び場にするよ』という瀬野さんの考え方に共感したんです。実際に住んでみると、本当に子どもってどこでも遊び場にしますね(笑)。結局、わが家ではロフトから階段ホール、階段の下、納戸やトイレまで使って遊んでいます」
ライブラリーも親子で共用。「本を通したふれあいがふえました」
階段の手すりを兼ねた本棚は、ご主人のリクエストで実現。「興味の幅を広げてほしいから」と、大人の本と子どもの本を分けずに収納できるようにしました。
2階に配置した多目的室は、南から明るい日ざしが降り注ぐ、のびやかな空間。間仕切りがないため、子どもたちは床いっぱいにおもちゃを広げ、自由に駆け回って遊んでいます。 「このプランに感じたもうひとつの魅力は“可変性”です。多目的室はいずれ壁や建具などで好きなように仕切れますし、あいている梁の上に床を張れば、ロフトをふやすこともできます。家族が成長すれば暮らし方も変わりますから、それに合わせていくためにも、できるだけざっくりした箱をつくろうと心がけました」 さらに「“家は建物が100%”ではないと思うんです」と話してくれたKさん。建物が50%で、あとの50%は家族や生活。入れ物と中身が両方そろってはじめて家ができる、という考え方です。新居のおおらかなプランには、この思いが存分に反映されているよう。これから親子でゆっくりと“残りの50%”をつくり上げていくのが楽しみだといいます。 「多目的室は大きくなるまではこのまま使って、いずれ自分の部屋を欲しがるようになったら、どこでどう仕切るかを本人たちに決めさせるつもり。仕切ると1部屋は狭くなりますが、そのほうが居心地が悪くて、早く独立してくれるかな、というねらいもあります」 将来のビジョンも明確。男の子だけに、しっかりした自立心をもってほしいという願いも込められています。
ハイサイドライトからとり入れた光を1階まで届けるため、床の一部をすのこ状に。声や気配も届きやすくなりました。多目的室には壁を立てれば個室ができ、梁の上に床を張れば収納やベッドスペースをつくることもできます。
【写真左】階段ホールにはキャットウォークが。「ここから飛び下りるのも遊びのひとつ。慣れているので
落ちることはないです」
【写真右】多目的室からも寝室からも出入りできる納戸。一角に押入れをつくり、季節外の布団などを
しまっています。
今は家族4人で共用している寝室。衣類などは納戸にしまえるため、ベッドだけを置いて広々と使っています。
「子どもと楽しむ」家づくり
子どもたちの写真や作品、保育園の先生の手作りカードなどを毎日楽しめるように、1階にも2階にもギャラリースペースをつくりました。「子どもの絵が身近にあるとなごみますね」
「この本読んで!」が毎晩の楽しみに
寝室の入り口脇の壁面も本棚として活用。「ここに絵本をまとめておいたら、寝る前に自分で好きなものを選んで持ってくるように。読み聞かせの習慣が自然とつきました」と奥さま。
ロフトに上るのもアスレチック気分!
入居して1年ほどたった頃、おもちゃなどがふえてきたため、収納スペースとしてロフトを増築。納戸の内側につけた階段で上り下りします。これが遊具のようで子どもたちに大人気!
「どこでも遊び場」はこんなところにも
トイレの中に落書きが! 壁を黒板塗料で仕上げたことで、トイレまでもが楽しい遊び場になりました。「お客さまが帰ったあと、メッセージが残されていることもあって笑えます」
多目的室のカウンターの一角にパソコンを設置。主に大人が使うものも、子どもの遊び場に置くことで、家族で過ごす時間がふえます。大きくなったら親子で一緒に使う予定とか。
生活スペースは1階に集約。家族が自然と一緒にいられるのが魅力
LDKは1階にレイアウト。帰宅した家族が必ずここを通るプランにしました。奥さまの希望でキッチンは対面式に。ダイニングで椅子に座った家族と目線の高さが合うように、キッチン部分だけ床を1段下げてあります。
LDには2面の壁に細長いカウンターが。雑貨を飾ったり、ちょっと腰かけたりできて便利だそう。動物のステッカーやガーランドを飾ってにぎやかに。
LDKと玄関ホール&階段ホールの間は、ポリカーボネート製の建具で仕切れる仕組み。冷暖房効率を上げるための工夫です。光を通す素材でつくったのもポイント。
階段下は子どもたちの秘密基地。おもちゃの“逃げ場”としても活躍しています。
通り土間としてつくったアプローチで、街と家をゆるやかにつなぐ
5LDKにつなげた洗面室。洗濯機もここに設置しました。キッチンから近いので、家事を同時進行するのもラク。
【写真左】道路と玄関をつなぐ“通り土間”。「格子戸をあけてここに入ると、もう家の中に入ったような安心感が
あります」
【写真右】玄関のたたきを広げ、奥を収納スペースとして活用。ベビーカーやスポーツ用具などを置くのに重宝
しているそう。右手には高さを目いっぱい使った壁面収納が。
ガルバリウム鋼板を使った意匠が目を引く外観。木製の格子戸が落ち着いた雰囲気を与えています。
DATA. Kさん宅(東京都)
設計のPoint
瀬野和広+設計アトリエ
瀬野 和広さん
子どもがのびのび育つ家にするためには、大人が仕掛けをつくりすぎないことが大切。何もない空間でも、子どもは高さと広さを自由に使って遊ぶものです。つまり、与えたいのは「部屋」ではなく「フィールド」。そのほうが可変性に富み、建築コストも抑えられるので、若いファミリーには特におすすめです。とはいえ、ただの広い空間でも「居場所」と「動線」を意識することは必要。Kさん宅の2階ではカウンターを居場所、本棚の前を人が行き来する通路と考え、中央のフィールドとは違う用途をもたせています。
プロフィール
1957年山形県生まれ。東京デザイナー学院卒業後、大成建設設計本部などを経て、88年に現事務所を設立。2009年より東京都市大学都市生活学部非常勤講師を務める。
ご夫妻と長男の太一くん、次男の詠太くん。手に入れた土地はご主人の実家のすぐ近く。「共働きなので、おじいちゃん、おばあちゃんのサポートがとってもありがたいです」と奥さま。
家族構成 |
夫婦+子ども2人 |
敷地面積 |
90.00㎡(27.23坪) |
建築面積 |
52.14㎡(15.77坪) |
延べ床面積 |
89.90㎡(27.19坪)1F 44.95㎡ + 2F 44.95㎡ |
構造・工法 |
木造2階建て(軸組み工法) |
工期 |
2010年12月〜2011年7月 |
本体工事費 |
約2300万円(外構工事、造作工事を含む) |
設計 |
瀬野和広+設計アトリエ(瀬野和広、玉村雄三) TEL: 03-3310-4156 |
施工 |
内田産業 TEL: 049-242-0980 |
★おしゃれな注文住宅を建てたい方はこちら
★注文住宅のカタログを取り寄せたい方はこちら
おすすめ記事
2018.02.26子育て中のママにとって、マイホームでは家事と育児を無理なく両立できるのが理想ですよね。とはいえ、実際にどんな間取りなら子育てしやすくて、家事もスムーズにはかどるのか、わからないことも多いはず。そこで「どんな間取りプランが子...続きを見る
コメント
全て既読にする
コメントがあるとここに表示されます