更年期になると女性ホルモンのバランスが変わるため、乾燥トラブルで悩む女性が多くなってきます。
ひとことに「乾燥」といっても、小じわやあかぎれ、爪のひび割れ、髪のパサつきなど症状は人それぞれ。
クリームなどを塗ってからだの外側を保湿するだけでは、乾燥対策としては不十分です。更年期の肌乾燥を根本的に改善させるためには、からだの内側から働きかける意識が欠かせません。
からだの中から潤いを取り戻したい方には、心とからだ全体のバランスの乱れを回復させる働きをもつ漢方薬がおすすめです。
今回は、婦人科の治療でも使われており、更年期の乾燥トラブルにおすすめの漢方薬を解説します。
(文/薬剤師 竹田由子)
漢方の考え方で見る「更年期の乾燥」
更年期に乾燥トラブルが増える理由を、漢方医学の立場から解説します。
漢方では「女性は7の倍数の年齢でからだに変化が訪れる」といわれています。
具体的には35歳で容姿が衰え始め、42歳で白髪が目立ち始め、49歳で閉経や更年期の不調が起こりやすくなると考えられており、これは現代医学にも通じる節目年齢といえるでしょう。
閉経の前後5年間を更年期といいます。更年期には月経による血液排出のリズムが乱れ、「血(けつ)」の巡りに影響が出やすくなるのです。
漢方における気・血・水とは?
漢方医学では、「気」「血」「水」という3つの要素が人間のからだを構成するとされています。
気は心やからだを動かすエネルギーで自律神経などに大きく関わり、血は全身に酸素や栄養を与え、ホルモンバランスにも大きく影響します。そして、水は鼻水、尿などのからだの中の水分のことで、免疫力に大きく影響します。
これら3つのバランスが損なわれると、からだの不調につながるのです。
更年期の乾燥はどんな状態?
更年期に起こる乾燥は、血の不足状態によるものと考えられています。
血の不足は「血虚(けっきょ)」と呼ばれ、皮膚全体に栄養が行き渡りづらい状態を意味します。血虚は皮脂の分泌低下にもつながるため、皮脂が減って肌内部の水分が保持できず、乾燥しやすくなるのです。
また、血行不良も皮膚に栄養が届かない状態を引き起こします。そのため、肌の乾燥を防ぐには保湿剤を塗るだけではなく、血の不足を補って巡りをよくすることが大切です。
たんぱく質や鉄分豊富な食事や運動などで、からだの内側から働きかけていきましょう。さらに、根本的な解決策として、漢方薬を服用するのがおすすめです。
症状別!乾燥対策におすすめの漢方薬
更年期に起こりやすい乾燥の症状と、それぞれにおすすめの漢方薬を紹介します。
1.乾燥からくる小じわ
肌が乾燥すると小じわが目立ちやすくなります。血虚による乾燥を改善する漢方薬として、四物湯(しもつとう)や当帰飲子(とうきいんし)などが挙げられます。
・四物湯(しもつとう)
皮膚が乾燥して色ツヤが悪く、胃腸障害のない方に用いる漢方薬です。血虚を改善する代表的な漢方薬で、冷え症やしみ、しもやけなどに用いられます。
・当帰飲子(とうきいんし)
かさかさした皮膚のかゆみや湿疹のある方に用いる漢方薬です。当帰飲子には、四物湯の配合生薬をベースにして、気を補う生薬やかゆみを和らげる生薬が加わっています。あまり体力のない、冷え性を伴う乾燥肌の人に向くとされる漢方薬です。
2.手指のひび・あかぎれ
血の巡りが悪いと、からだが冷えて手指のひび割れやあかぎれ、爪割れなどが起こりやすくなります。十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などがおすすめです。
・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
体力が低下して疲労感が強く、食欲が落ちており、手足の冷えや貧血のある方などに用いられる漢方薬です。十全大補湯は気と血が不足している方に向いており、全身の状態をよくして体力回復へと導きます。
・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
比較的体力がない方、冷え症で貧血の傾向がある方などの、しもやけやむくみなどに用いる漢方薬です。当帰芍薬散は婦人科でよく用いられる漢方薬であり、月経痛や更年期障害の諸症状などで服用している方も多い薬です。
3.髪のパサつき・ツヤ低下
更年期には髪が乾燥してパサついたり、頭皮乾燥や血流悪化で抜け毛が増えたりと、髪に関係したトラブルも増えます。
髪は、漢方医学では血余(けつよ)と呼ばれ、血から作られるものと考えられています。血の巡りをよくすることが、髪の健康にも欠かせません。
・温経湯(うんけいとう)
手足がほてり、唇が乾いている方に対して、更年期障害の諸症状や冷えなどに用いられます。
血行をよくして手足のほてりを抑える一方で、からだ全体を温め、乾燥した皮膚を潤す働きがあります。
どの漢方を選べばいいかわからないときは?
症状別に代表的な漢方薬を解説しましたが、「実際に自分にはどの漢方薬が合っているんだろう?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
漢方薬選びの重要なポイントは、「自分の状態や体質に合っているか見極めなければならない」という点です。症状の出方や体力には個人差が大きく、適した漢方薬を選ばないと効果を感じられないだけでなく、副作用が生じることもあるので要注意。
さらに、更年期の不調は、もちろん肌乾燥だけではありません。イライラやのぼせなど複数の症状がある場合、漢方薬選びはとても難しくなります。
自分に合った漢方薬を見極められない……そんな場合には、プロの力を借りてみてはいかがでしょうか?「あんしん漢方」などのオンライン漢方サービスでは、あなたに不調にぴったり合った漢方薬をオーダーメイドで提案します。
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漢方薬で更年期の肌乾燥をケアしよう
漢方医学では、更年期には血が不足して肌の潤いが失われると考えられています。からだの内側からバランスを整えて、乾燥肌対策をしていきましょう。
自分に合った漢方薬を選ぶには、専門家に相談するのがおすすめです。あなたに最適な漢方薬を見つけるために、気軽に相談してみてくださいね!
<この記事を書いた人>
あんしん漢方(オンラインAI漢方)薬剤師 竹田 由子
薬剤師。元漢方・生薬認定薬剤師で薬膳漢方マイスター。
大学院では臨床薬学を専攻、病院に10年間勤務。結婚後は調剤薬局へ勤務するのと並行して、ライターとしての活動も始める。
腎機能低下を機に、月経痛への鎮痛剤使用量を漢方で減量成功した経験があり、「日常の不調はまず漢方」をモットーに生活を送る。
病院時代の長いDI経験を生かし、薬の面から分かり易くサポートしたいと考えている。
現在は、漢方のプロがAIを活用して自分に適した漢方薬を選びお手頃価格で自宅に郵送してくれる「あんしん漢方」でも情報発信をしている。
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