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コラム

魚をめぐる状況が変わりつつある。天然魚が減っているのはなぜ?

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魚をめぐる状況が変わりつつある。天然魚が減っているのはなぜ?

2023年4月鎌倉・今泉台にオープンした“地域がつながるさかなの協同販売所”「サカナヤマルカマ」。同店の立ち上げメンバーで理事を務めている狩野真実さんが語る、日本のお魚事情とは?

【この記事から続く】日本の天然魚を食べ続けたい。鎌倉の『サカナヤマルカマ』が挑む新しい魚屋のカタチ

海に囲まれた日本で、なぜ新鮮な天然魚が手に入らないの?

海に囲まれ、水産資源に恵まれているのに、街では新鮮な天然魚が手に入りづらいという不思議な状況にある日本。なぜこのようなことになってしまったのでしょうか。

「原因は複合的です。一番大きいのは海水温の上昇ですね。魚は水温の変化に敏感で、適水温じゃないと生きていけない。だから、海水温が上がると、魚は住む場所を変えたり、数が減ったりして、漁獲量に影響を及ぼします。

水温が高くなった影響と言えば、海藻が枯れてしまう磯焼けも深刻です。海藻に卵を産んだり、海藻の周りを棲家としている魚も多く、それがなくなると、魚の育つ場所が失われ、当然魚の数も減ってしまいます。

対策として海藻を植える試みがされていますが、なかなかうまくいかないみたいで…。ウニや草食性の魚が新芽を食べちゃうので、なかなか育たないんです。

このような状況が続くと、漁師さんも天然の魚を獲るのを諦めて、養殖にシフトしていくケースもあり、そういう動きが加速しています。養殖が主流になると、天然の魚がますます手に入りにくくなってしまう」

食の欧米化により、日本人の味覚も変わってきた。

魚の養殖は畜産に比べて環境負荷が少ないこともあり、世界的にも養殖ビジネスはポジティブな話題とか。世界の人口が増え続ける中で、動物性たんぱく質の供給源として魚のニーズは高まっているそうです。

しかし、日本では、ここ何十年も魚の消費量が右肩下がり。食の欧米化、肉食化が進み、2006年には国民一人あたりの肉の消費量が魚を上回りました。ちなみに、40年前は、今の5倍の魚を食べていたのだとか。

「日本人は昔から、魚と米と野菜を中心とした食生活を送ってきました。でも、ライフスタイルが欧米化して、肉食中心の食生活に変わりました。肉食が中心になると、当然魚を食べる機会が減りますよね」

「脂がのっているから美味しい」?円安影響や流通の問題も。

「今の日本では、どんな魚でも『脂がのっているから美味しい!』って評価することが多いですよね。

例えば、サバ。脂がのっているノルウェーサバは高値で取引されますが、日本のサバは時期によっては脂が少ないから安く買い叩かれてしまうこともある。脂がのっている魚も美味しいですけど、魚の美味しさは「脂」だけではないと思っています。

長く続く円安も影響しています。これまで日本は、世界の水産業にとって魅力的な輸出相手国でしたが、円安で日本のバイヤーが高値を付けられなくなって、魚食の需要が増えた諸外国に買い負けしてしまい、いい魚が入りづらくなりました。国内の漁業事情が芳しくないから輸入に頼っていたのに――。こんな八方ふさがり状態では、魚はどんどん日本の食卓から遠ざかってしまう」

流通の問題も大きく、それはまるでブラックボックスのようだと狩野さんは言います。

国産生鮮魚介類の原産地は、生産水域名(又は養殖地名)を記載することが原則。水域名の記載が困難な場合は、水揚げ港名またはその属する都道府県名を記載することができます。

「野菜なら、どこで収穫したか明確にわかりますが、魚はわかりにくい。どこでいつ獲ってきて、どのタイミングで水揚げして、それをどう処理して、どうやって運んできたか――。

まあ、そこまで気にして買う人もいないでしょうが、同じ『〇〇産』表示の魚でも、釣りあげて船上に放置してそのまま死んでしまった魚もいれば、活け締め(*)などの丁寧な処理をした魚もいる。見た目は同じでも品質は全く違うものということになります。

港によっては、誰が獲ったものでも、同じ種類の魚だったら同じカゴにガサッと入れてしまう。どんなに手間をかけて処理をしても、全て同じ値段でセリにかけられるのであれば、当然、手間をかけなくなりますよね。

トレーサビリティシステムを導入して、魚についたQRコードを読み込むと、前述したような情報がわかるようにする計画もありますが、お金も人手もかなりかかるので、今は実証実験だけで終わっている状態です」

(*)活け締めとは、魚の鮮度と美味しさを保つために施す処理のこと。臭みの発生や腐敗が遅くなり、新鮮な状態を長く維持することができるけれど、一般的にそこまで手間をかけていることはまだ少ないそう

日常的に魚が並ばなくなった日本の食卓。近くの魚市場からさまざまな種類の魚を仕入れて提供してくれていた“昔ながらの魚屋さん”もまた、右肩下がりで減少しています。

スーパーとの競合、店主の高齢化、後継者不足なども影響して、その数はピーク時の5分の1に。なんと、毎年1000軒以上も廃業しているのだとか。

たしかに、最近は街のお魚屋さんを見かけなくなり、魚はスーパーで買うのが当たり前になっています。

どうすれば美味しい魚を手に入れられるの?

魚が獲れなくなったこと、食生活の変化、養殖へのシフト、流通の問題、魚屋さんの減少ーー。

今の日本が抱える魚まわりの問題は、そう簡単に解決しないのかもしれません。でもやっぱり、いや、危機的な状況にあると聞けばなおさら、美味しい天然の魚が食べたい!私たちが美味しい魚を手に入れる秘訣はあるのでしょうか。

「魚の知識が豊富で、美味しい魚の選び方や調理方法を教えてくれる“魚のプロ”がいるお店に行くのが一番です。数は減ったけれど、いい魚を扱っている魚屋さんはまだあります。これ以上減らさないためにも、ぜひ魚屋さんで買ってほしいです」

“いま一番美味しい旬の魚は?”どんな調理法がおすすめ?“など、相談しながら選べるのが、魚屋さんで買う醍醐味とか。ほかにも、”塩焼きで食べたい“”アクアパッツアにしたい“など具体的な調理法を伝えたり、”美味しい日本酒があるので、それに合う魚を教えてほしい“”ご飯じゃなくパンで食べたい“なんてアプローチもあり。

せっかくなら丸ごと買ってドーンと食卓へ!

「せっかくなら、切り身ではなく丸ごと買うのが絶対おすすめ。魚屋さんでウロコと内臓とエラを取ってもらえば、あとはそのまま煮るなり焼くなり、オーブンにおまかせするなり、お好み次第です。

魚の種類が変わっても、基本は一緒。丸のまま使えばダシが出るので、例えば鍋料理なら、昆布と塩さえあればオッケー。思っているよりずっと簡単に、本格的な味に仕上がりますよ。

丸ごとの魚をどーんと食卓に出したら、気分良くないですか?満足度が違う。お子さんがいるなら、食育にもなるので、なおさらおすすめ。テンションが上がること間違いなしです」

伝統の魚食文化を守るために、漁業や水産業が抱える問題を少しでも改善させるために、何より、この先もずっと美味しい魚を食べられるために、私たちができること。それは、旬の美味しい魚を選んで、たくさん食べること!

お気に入りの魚屋さんで新鮮な丸魚を買って、テンションの上がる魚料理をパパッと作れるようになることが、目下の目標となりました。

撮影/榊 水麗 取材・文/島端麻里

Collaboration with Daiwa

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