コラム

チェーン店のコーヒー店のテーブルにさまざまな情報を広げる|うさぎの耳〈第七話〉谷村志穂

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チェーン店のコーヒー店のテーブルにさまざまな情報を広げる|うさぎの耳〈第七話〉谷村志穂

初めから読む 母子の部屋は、一階にあるその角部屋である|うさぎの耳〈第一話〉

一週間もしないうちに、白坂から電話があった。メールを見てほしいと言われて、文面を確認した。

〈僕らの仲間を探しています。

写真左の男性 高山隆也 29歳

身長178センチ 中肉中背。

失踪して半年になります。消息を知る方は、ご一報ください。ご家族も待っています。

高山、連絡がほしい。

C大 馬術部60期一同〉

 

同期だった白坂が、自分のメールアドレスやスマホの電話番号まで公表して、フェイスブックで拡散してくれるという。

それこそ、問題が起きないかと訊くと、

「俺、独身だし、仕事は家業だしな、皆でも話したんだけど、今のところ、困ることはないと思うよ。

彼は、関東に何店舗かある仏具屋の後継だ。一人っ子で、兄弟代わりに馬を買ってもらった、と話していた。

「皆で検討したのは、拡散希望、という言葉を入れるかだったけど、一応、それは入れないことにしたの。拡散していいか聞かれたら、頼むことにする。他の同年代も協力してくれることになったから」

家の廊下で取った電話だった。電話口の声を聞いていたとき、手の甲に気づかないうちに涙が落ちていた。

「ちょっと美夏さん、電話なの?今、俳句を詠んでるのよ」

だがその声で、はっとした。

「すべてお任せしたいです。ありがとう」

義母の厳しい口調が電話口にも響いたのか、しばし、黙っていた白坂が、

「おう、じゃあ、任せて」

と、通話を切った。

 

それから三日もしないうちに、ぽつぽつと白坂の元にメールが届くようになったそうだ。目撃情報は、明らかに異(ちが)っているように見えるものや、悪戯っぽいのもあれば、探偵会社からの営業のメールもどんどん入ったようだ。

小説『うさぎの耳』|谷村志穂
子どもの障がい、夫の失踪、ギスギスした義母との暮らし。そんななかで、主人公の美夏は公園で出会った莉子と心を通わせていく。その莉子にも複雑な事情があり…。毛糸の指人形と子どもの果てしない生命力。喪失を抱えるすべての女...
小説『うさぎの耳』|谷村志穂
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