官能小説といえば男性が読むイメージが強くありますが、最近は有名作家が書く女性向けの官能小説も増えてきています。
女性の性がオープンになった現代で、官能小説を手にするハードルは下がったとはいえ、何から手にすればいいかわからないと戸惑う方も多いのではないでしょうか?
そんな、官能小説初心者の女性に向けて『気軽に手にとれる!女性のための官能小説』4冊をご紹介したいと思います。
1冊目:直木賞作家が描く官能小説!
『ダブル・ファンタジー』(村山由香/文藝春秋)
才能に恵まれながらも、夫の抑圧に苦しむ人気脚本家の奈津。
奈津は夫の創作への関与に耐えられなくなったある日、デビュー当時から敬愛していた演出家に誘われ家を飛び出し――。
夫は奈津の才能を引き出しているのは自分だと言い、仕事を辞めて家事をしながら、奈津の仕事に口を出します。
奈津は稼ぎ頭であり、仕事に関しては夫より強い立場であるのに、なかなか不満を口にだすことができません。
そんな奈津の性は、日頃から溜まっていた鬱憤が爆発したときに花開きます。
家を飛び出した奈津は、演出家、大学の先輩、出張ホスト、俳優……と、さまざまな男性と性的関係を持ちます。
しかし、ただ欲求不満を満たすように体を重ねるわけではありません。
愛情だったり、友情だったり、どの男性とのセックスにも裏には物語がきちんと描かれています。
既婚女性なら共感できる部分も多いのではないでしょうか?
中央公論文芸賞、島清恋愛文学賞、柴田錬三郎賞と3つの賞を獲った本作は、かなりきわどい性描写もありながら文学作品としても読ませます。
2冊目:爽やかな読み心地! R-18文学賞受賞作
『青空チェリー』(豊島ミホ/新潮社)
千花の通う予備校の屋上からは、ラブホテルの中がよく見える。
千花は授業の合間にラブホを覗きながら屋上で自慰行為を行っていた、そんなある日、予備校に通う男子が同じ目的で現れて――。
第1回女による女のためのR-18文学賞受賞作である本作は、「予備校の屋上でラブホを覗きながら男の子と一緒に自慰行為をする」という内容だけならば、ものすごく官能的ですが、18歳という若い2人の性への興味を軽快なテンポで描いているため、ドロドロした雰囲気はなく実に爽やか。
主人公の友達に語りかけるような口調で進む文体も、親しみやすく魅力的です。
青春ラブストーリーの延長として気軽に読むことができるので、初めての官能小説にオススメです!
3冊目:吉原を舞台にした儚くも美しい官能小説!
『花宵道中』(宮木あや子/新潮社)
初めて愛した男の前で客に抱かれる朝霧、思い人を胸に初見世の夜を過ごす茜、弟へ禁忌の恋心を秘める霧里、美貌を持てあまし姉女郎に欲情する緑……、5人の遊女たちの儚い恋物語の本作は、第5回女による女のためのR-18文学賞受賞作。
先ほど紹介した2冊目に続き、R-18文学賞作を紹介します。
こちらは、清々しい性を描いた『青空チェリー』とは違い、しっとり描かれる大人の官能小説です。
江戸末期の新吉原を舞台に、遊女たちの切ない恋と生き様を描く連作短編集。
儚くも美しい遊女たちの生き様には、女性なら誰もが胸を打たれるはず。
とくに表題作の『花宵道中』は傑作。好
きな人の前で他の男に抱かれ、決して結ばれない愛に身を焦がす朝霧の姿は切なさで胸が押しつぶされそうになります。
また、宮木あや子さんのデビュー作とは思えない圧倒的な筆力で読ませる耽美な官能表現も魅力です。
4冊目:有名作家が贈る、刺激的な小説集!
『10分間の官能小説集』(石田衣良、あさのあつこ、岩井志麻子ほか/講談社)
石田衣良、あさのあつこ、岩井志麻子など、有名作家が贈る10分で読める短編官能小説集。
10分という短い時間で繰り広げられる超短編ばかりですが、恋愛だけでなく、時代もの、ミステリーなど、作家ごとに個性があり読みごたえたっぷりの1冊です。
官能という意味で、とくに刺激的なのは、勝目梓さんの『トゥエンティ―・ミニッツ』。
電車での通勤時間20分を使い、セックスのトレーニングをする男女を描いた作品。
電車の中で痴漢ごっこに励む姿はかなり過激です。
もっと刺激が欲しいという方にはオススメですよ!
女性向けの官能小説は、男性の官能小説とは違い、直接的表現が少ないのが特徴です。
文学作品の延長として楽しめる作品も多いので、書店でも気軽に手にとれるものばかり。
最近、刺激が足りないという方はぜひ手にしてみてはいかがでしょう。
<プロフィール>
舟崎泉美
ライター/エンタメライター。富山県出身、東京都在住。小説や脚本を執筆し、その経験を活かしライターとして雑誌やWEBなどに、本のレビュー、映画レビューなどを書く。最近はエンタメに限らず、女性向き媒体でさまざまなジャンルの記事を執筆。第一回本にしたい大賞受賞。著書「ほんとうはいないかもしれない彼女へ」(学研パブリッシング)。
写真© Photographee.
ライター/エンタメライター。富山県出身、東京都在住。
小説や脚本を執筆し、その経験を活かしライターとして雑誌やWEBなどに、本のレビュー、映画レビューなどを書く。最近はエンタメに限らず、女性向き媒体でさまざまなジャンルの記事を執筆。第一回本にしたい大賞受賞。
著書「ほんとうはいないかもしれない彼女へ」(学研パブリッシング)。
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