炊飯器。日本の家庭なら、まず全家庭が持っている家電です。
しかし今、少量炊きの炊飯器がすごく変わってきています。
理由は、人口減少により一世帯当たりの人数が少なくなったため、米の消費量が少なくなったため、こちらが主力になりつつあるためです。
5.5合だと「良くなく」て、少量炊きだと「良いこと」って何〜だ?
「イイ家電を推奨して欲しい」
筆者にはよくある依頼です。ただイイ家電の「イイ」という概念が非常に難しい。
炊飯器でいうと基本性能は「米を炊くこと」。付随性能は「おいしく炊くこと」。そして「日常の使い勝手」。これに「デザイン」「価格」を加え、評価します。
面白いのは、同じメーカーの同じ仕様の家電でも、3.5合炊きと5.5合炊きで評価が変わってくることです。
例えば、象印の炊飯器に「極め炊き」というのがあります。内釜に『南部鉄器』を用いた圧力IH炊飯器で、まことに美味しく炊けます。
しかし、この内釜が重い!「美味しいからイイ」と言う人も多いですが、毎日使うモノ、疲れて帰ってきて、重いモノを使うのは非常に気が滅入ります。5.5合をテストした時、一晩考えて、泣く泣く推奨はしないことにしました。
かなり厳しいですが、今のネット社会では、理由などは読まず、最終的な「推奨」だけが一人歩きする可能性もあるからです。
ところが、同じ「極め炊き」の3.5合。おいしさはそのままに、小さいだけに軽くなっています。これなら毎日使いも問題ないレベル。しかも少ない素材でできるので価格も安くなっている。特に値が張る内釜が小さいのがポイント高いです。付け加えれば、電気代も安く上がります。文句なしに「推奨」。
言われると当たり前のようですが、家族で5.5合炊きという人はスゴく多いと思います。つまり、その人は使い勝手、電気代他で損をしている可能性があるわけです。炊飯器の合数はとても重要です。
ちなみに、少量炊きは2合、3合、3.5合のようにメーカーにより違います。これはメーカーがユーザーの声を聞きながら決めるそうです。
ちなみに、5.5合炊きのちょっと半端な0.5合は、1L分のお米を意識したためです。(正確には、180ml(1合)なので、990ml。)理由も明確であり、ほとんどのメーカーが、5.5合を採用しています。が、それ以下の合数は、Lでは半端になります。そのため、メーカーによりバラバラ。それでも問題が出ないそうです。
炊飯を左右する4つの要素と、今の炊飯器
ご飯の味は、「米」「水」「研ぎ」「炊き」で、かなり変わってきます。
「米」は米の種類(コシヒカリ、ササニシキなど)だけでなく、精米の状態、保存の状態でも変わってきます。コーヒー豆と同じで、生鮮食料品なので劣化すると考えていただければ、間違いがありません。なるべく精米した日から2週間〜1ヶ月で食べきる様にしてください。また保存はタッパー詰めで冷蔵庫がイイです。
次は「水」。ベストは、米が育ったところの水と言いますが、日本全国が軟水なので、余り深く考えなくてもいいと思います。ただ水道水より、浄水器で濾過した水を使う方が美味しいです。
さて「研ぎ」。これは実に面倒臭い技術です。江戸時代、お米を大量に炊く場合、「研ぎ師」と「炊き師」がいて協力してご飯を炊いていたそうです。で給金は「研ぎ師」の方が多かったとか。これは、お米の水管理を研ぎ師がしていたからです。
水管理と言っても、どこの水を使うのかではありません。米にどの位の水を吸わせるかです。炊飯という技術は、「炊いて、お米に適切な水分量を含ませる技術」と言うことができます。
今は倉庫に冷房が入れてあり、温湿度一定に保ってありますが、昔はそうではありません。夏は暑い。固い米の中の水分も抜けます。このため水分を多めにして炊きました。今でも「古米」などには使える技術です。
逆に「新米は水を少なく注意して炊け」と、言うことは今でも言われます。これは新米の含水率が高いからです。米を見分けで、適切に研ぎ、適切な水分を決め、きちんと浸水させてやる。「研ぎ師」、スゴいと思います。
そして「炊き」。「はじめチョロチョロ、中パッパ。ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな」は昔も今も変わりません。
今の炊飯器は、研ぎ〜「浸水〜炊き終わり」までを受け持ちます。だから、イイ炊飯のプロを2人雇っているようなものです。
高い炊飯器と安い炊飯器はどこが違うのか
炊飯器は、安いモノでは約1万円、高いモノでは、5万円以上もします。この差は、炊飯技術と材料が違うためです。
価格イメージは『マイコン制御』<『IH』<『IH&圧力』<『IH&圧力&特殊内釜』。
『マイコン制御』で1万円、『IH』で2.5万円、『IH&圧力』で4万円。これに『特殊内釜』が付くと6万円がイメージですが、メーカーごとに価格は違います。
かまどでは火を使います。火はすさまじい熱量を持ちます。ヒーター⇒ITは、IHの方が熱量が高く、コントロールしやすいからです。そしてお釜は、熱伝導率がよく蓄熱性もそれなりにあります。その代わりが『特殊内釜』と言うわけです。
そして圧力は、水分制御に使われます。前にお米の含水率のことを書きましたが、圧力鍋でも分かるように、短時間で確実に水分を入れることができます。
『より美味しく』『より正確に』炊けるように工夫されています。
『より正確に』と書きましたが、「炊きの失敗がない」と表現した方がイイかも知れません。
炊飯は面倒なんだけど、毎日美味しいお米が食べたい人は、少々値が張りますが、全部入りをお勧めします。
おすすめの炊飯器とは?
お勧めできるのは「パナソニック 可変圧力 おどり炊き SR-JX057」。Jコンセプトの逸品。内釜はダイヤモンド竈釜で軽く、丈夫。内釜の3年保証が付いているくらいです。
標準での「食感」柔らかめです。そのままテーブルに置いても様になる気持ちのイイデザインも魅力です。沸騰時の米の動きは、上から見ると阿波踊りのようですが、パナソニックは、米が勝手次第に踊るのではなく、群舞の様な見事さがあるように思います。「おどり炊き」の名に恥じません。
次は「象印 圧力IHタイプ 南部鉄器 極め羽釜 NP-QT06」。こちらは野武士のような力強さがあります。
内釜の形状は、広く浅い独特の形状で、これが結構使いやすい。
飯がおいしいのもそうですが、焦げなどもうまいですね。標準での食感は「ややかため」です。
最後は「三菱 本炭釜 NJ-SW068」。スクエアなイケメンデザイン。
炭系の内釜でほくほく炊きあげます。普通の炊き方以外に、米の旨味をとことん引き出す「匠芳潤炊き」があり、こだわりをヒシヒシと感じます。また三菱の全炊飯器は、『圧力』機能を持ちません。大いなるこだわり。頑固な炊飯器の米はおいしいです。
また、最近頑張っているアイリスオーヤマのジェネリック炊飯器にも触れておきます。11月発売になりますが、「銘柄量り炊きIHジャー炊飯器3合 KRC-ID30-R」。
一見一体型の炊飯器に見えますが、IHクッキングヒーターに炊飯器部を載せた構成で、IHクッキングヒーターとしても使えます。しかも他社では高級機種に搭載されている銘柄米による炊きわけプログラムがあるのがミソです。その上、よそった御飯のカロリー数も表示してくれる。楽しませてもくれる炊飯器です。
もっと少量炊きのユニークな商品
ご飯を炊くのは、炊飯器がなければ炊けないというものではありません。山をやっていた頃は、よくコッヘル(お鍋)で炊いていました。
ということで、ちょっと面白い炊飯道具を2つ。
1つめは、サーモスの「ごはんが炊ける弁当箱」(JBS-360)。
と言いましても、弁当箱にガスが仕掛けられておりお米が炊けると言うわけではありません。寸胴型の弁当箱に水と米(0.7合)をセット。専用の二重蓋を被せ、電子レンジに入れます。500W 8分。その後、30分蒸らせばできあがり。
勘の善い人だとお分かりかも知れませんが、これ炊飯専用の土鍋と同じ考えなのです。手軽ではありますが、コンビニの白米よりイイ感じです。
また、小ささで言うと小泉成器の「ライスクッカー ミニ」(KSC-1511)も侮れません。
0.5〜1.5合専用の炊飯器で、1合 約20分で炊きあげます。しかも生意気なことに(?)、タイマー予約も可能で、独身だと、これでイイと言う人もいるかも。ママゴト道具のような小ささは惹かれるものがあります。
これらはちょっとご飯が食べたい時には、とっても便利です。
文/多賀一晃
1961年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学部卒。大手メーカーにて商品開発、企画を担当後独立。国内はもちろん、世界最大の家電見本市「IFA」等で世界中の家電を取材し、役立つ情報を「生活家電.com」から発信中。日本経済新聞夕刊の家電製品特集や土曜日別冊「日経プラス1」の「家電ランキング」選者、WEDGE Infinity「家電口論」主筆としても活躍。
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