コラム

年末年始に気をつけたい！餅の窒息事故

更新日：2017.10.27

毎年12月から１月に集中する不慮の事故が「窒息」です。その原因は「餅」にあります。のどに詰まりやすいことは多くの人が知っていることですが、お正月には欠かせないお餅。万が一、家族が餅を詰まらせたときの対処法を紹介します。

どうして高齢者の餅の窒息が多いのか？

東京都だけでも、餅や団子による窒息で救急車を要請した件数は毎年100人以上にのぼり、うち高齢者が8割を超えているそうです。

高齢者が餅をのどに詰まらせやすい理由は大きく2つあります。

◎餅の性質
第一に、餅の特性が窒息を起こしやすくさせています。餅の特性とは温度に関係しています。餅の表面が40度以下になると、餅は硬くなるという性質があるのです。

食べる前にはやわらかい餅も、口の中で体温にまで下がると、硬くなってしまうのです。また、餅の粘着性も温度の低下によって増してしまいます。硬くなった餅は、餅どうしがくっつきやすくなったり、気道の壁にくっつき離れにくくなったりしてしまうことで、結果、気道を塞ぐことが起こってしまうわけです。

◎咀嚼力の低下
高齢者は、老化によって咀嚼力が低下しています。唾液の分泌も少なくなって、口腔内が乾燥していることが多く、くっつきやすい餅をさらにくっつけやすくする条件が揃っているわけです。もちろん、咀嚼機能が未熟な小さい子どもにも注意が必要です。

家庭でできる餅の窒息予防

自宅で餅の窒息事故を予防するためにできることを紹介します。

◎食事の前には水分をとる習慣をつける
唾液の分泌を促すことになるので、窒息や誤飲の防止になります。

◎餅は食べやすい一口サイズに切っておく
餅は大きいサイズのまま出すのではなく、小さいサイズにすることで、詰まりそうになっても、のどを通過しやすくなります。

◎粘りが少なく嚙み切りやすい餅を利用する
もち米にでんぷんや米粉を混ぜるなどして粘りを少なくして、噛み砕きやすいように工夫された餅やもち小麦などが、最近発売されているので、それらを利用するのも良いでしょう。

◎調理法にも工夫をする
きな粉餅などパサパサした餅より、雑煮のような水分がある調理法のほうが窒息の危険を少なくできます。

それでも餅を詰まらせたときの対処法

食べ物か何かがのどに詰まって窒息状態になり、自力で出せそうにないときには、すぐに119番をして救急車を呼びましょう。近くに人がいる場合は、誰かに救急車の要請をお願いして、同時に気道に詰まっているものを取り出すことを試みるようにします。

【その１】咳をしてもらう
本人が咳をできる状態であれば、咳を続けて詰まりをとることが効果的です。

【その２】背中を叩く
咳が難しい状況であれば、手の付け根で背中をしっかり何度も叩きます。苦しくうずくまっている状態であれば、横向きに寝かせて背中を同様に叩きます。妊婦や子どもにも使えるので覚えておくと便利です。

【その３】腹部を突き上げる
背中を叩く方法でうまく効果が出なかった場合、背後から両手を回して抱きかかえます。片手でにぎりこぶしを作り、みぞおちのあたりに置き、もう片方の手で包むように握って、素早く前方に突き上げるように圧迫してください。

ただし、起き上がれない人に対して腹部を突き上げる方法は行えません。また、妊婦もお腹を圧迫するので控えた方が良いです。小さい子どもに対しても内臓を強く圧迫するので、背中を叩く方法のみを続けたほうが良いでしょう。

腹部突き上げ法は内臓を傷めることがあるので、救急隊員が到着したら、腹部突き上げ法を試したことを伝えておきましょう。

写真　© funny face - Fotolia.com

Profile松下歩

日本ではナースとしてバリバリ働いていましたが、長年の夢であったオーストラリアへの移住を果たしました！今は子育ての真っ最中、フリーランサーとして働きながら、家族5人ブリスベンで、のんびり生活しています。ナースの経験を活かした健康記事をお届けしたいと思っています。

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