【生き抜く力の育て方】たとえば異臭がした時、「なんの匂い?」なんてのんびり嗅いでいたら命に関わります|動物学者 今泉忠明先生
更新日:2024.01.31
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夜の森でじっと息をひそめて
昼間の森に慣れたら、今度は夜の森に出かけてみましょう。
森に入ったら電気を消して、5分、10分、森の雰囲気を味わいます。夜でも明るいのが当たり前の生活をしているから、真っ暗になると最初は怖い。でも、動物たちは真っ暗な森のなかでもつまずくこともなく歩いているんです。
人間だって、目に頼れないとなったら、音や匂いから周囲の状況を察することができるようになる。視覚を遮断した経験をすると、聴覚、嗅覚、触覚など、視覚以外の五感が育ちます。
最初は怖くても、しばらくすると慣れますよ。動物は突然襲ってきたりしないから大丈夫。
必要な装備も自然とわかってくる
夜の森でも動物は活発に動いています。ムササビが葉っぱを食べている音、動物たちの鳴き声、暗闇に光る目…。懐中電灯を片手に、夜の森を探検するのもおもしろいものです。
でも、やっぱり真っ暗な森でも自由に歩ける動物たちは、すごい。僕なんか、懐中電灯が突然切れたときには、赤ちゃんみたいにハイハイするしかなかったものね。谷に落っこちたりしたら大変だから、手探りでジリジリと。
それ以来、懐中電灯は3本持っていきます。必要な装備も自分で学んでいくことが大事ですね。
▲腰切塚西・富士山にて
都会でもできる自然観察
いくら森がおもしろい、自然体験が大切だって言っても、毎週のように出かけるのは大変ですね。
でも、実は都会のなかでも、自然観察はできるんです。街の都市公園でも、じっくり見ればいろんな生き物がいます。昆虫や鳥やのら猫、それからモグラ。
川には魚も泳いでいるし、カメもいる。きれいなカワセミが飛んできたり、カモの赤ちゃんがよちよち歩く姿が見られるかもしれません。
また、川のほとりに小さなテントを張って待っていると、いろんな生き物が順番に水を飲みに来るのを観察できたりしますよ。
家の近所の公園で観察眼を養う
年に1回だけ「自然体験だ!」と森に行くだけでは、ちょっともったいないと思います。1週間に1回くらい、ちょこちょこと行って観察できる場所があるといいですね。
木があれば、必ず生き物はいます。家の近所の公園で観察眼を養っておくと、大自然に出かけたときにも役に立ちます。
家の近所だって、たとえば昼と夜とでは様子が全然違うでしょう? 夜の公園でじーっと生き物観察するのなんて、ちょっとワクワクしますね。ただし、怪しまれないように!
暗い場所で観察するには、何が必要かも子どもが自分で考えます。「あれを持ってくればよかった…!」といった小さな失敗もしながら、自分で学んでいく。そうすると、毎朝の学校のしたくも自発的にできるようになるかもしれないね。
青春は返してあげられない。だから「今この時に」
子どもはどんどん成長します。子ども時代って、振り返ると本当に一瞬で終わってしまうものなんです。あとから「あのときもっと自然で遊んでおけばよかった」と後悔しても、青春は返してあげられない。
だから、やることは盛りだくさんで忙しいけれど、いまこのときに、自然と触れ合う時間、体験を持たせてあげることって本当に大切。
まずは近くの公園や水辺から。親子で楽しんで、自然観察の力を養ってもらえたらと思います。
今泉忠明(いまいずみ・ただあき)●動物学者。動物学者 今泉吉典の二男として生まれ、動物三昧の子ども時代を過ごす。大学卒業後、多くの生態調査に参加。各地の博物館館長、研究所所長などを歴任。『ざんねんないきもの事典』シリーズ(高橋書店)他著書・監修書多数。
取材・文/浦上藍子
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