コラム

キレやすい子どもの増加は“ 油 ”のせい？油不足は脳に支障をきたす原因に

更新日：2017.10.28

「油」と聞くと、「太る」「コレステロール値が上がる」という偏見がありませんか？
しかし、実は油は私たちに必要な食品で、それどころか、現代の食生活では身体に必要な油は不足している傾向にあるのです。
油の特徴を知り、正しく摂取することで、健康に大いに役立てることができます。
では、どんな油をどんな風に摂れば健康にいいのでしょうか？

太りやすい油と太りにくい油がある

油には体内に蓄積されやすい油と、されにくい油があります。ざっくり言ってしまうと、蓄積されやすい油は「太りやすい油」、蓄積されにくい油は「太りにくい油」ともいえます。
油の特性は脂肪酸の種類によって変わりますが、この脂肪酸は次のように分類されます。

①飽和脂肪酸
肉類の脂肪、ラードやバターなどに含まれる。常温で固体。

②不飽和脂肪酸
植物や魚に含まれる。一価不和脂肪酸と多可不和脂肪酸に分けられる。常温で液体。

飽和脂肪酸は体内に蓄積され、エネルギーとして使われるので、いわゆる「太りやすい油」といえるでしょう。また、不飽和脂肪酸の中でも一価不和脂肪酸（オリーブオイルやマカデミアナッツオイルに多く含まれる）も体内に蓄積されるため、摂り過ぎは肥満のもとになります。
一方で、多価不和脂肪酸（穀物や魚の油に含まれる）は細胞や組織を作るために使われるので身体に蓄積されにくく、「太りにくい油」といえるでしょう。わかりやすく整理してみましょう。

必要な油を適量摂ることが大切

「油」と聞いて、すぐに「太る」と避けたりせず、良い性質の適量の油を上手に摂取することが大事です。ムリなダイエットで脂質を抜いたりすると、髪がパサパサしてきたり、肌のツヤも悪くなってきたりするうえに、体内の機能にも支障をきたしてしまいます。

話題のココナッツオイルが「身体にいい」と評判になったのは、ココナッツオイルは飽和脂肪酸であるにもかかわらず、その半分は、消化しやすく、エネルギーとして燃やされやすい「中鎖脂肪酸」であったためです。
このように、油の特性を知って上手に利用すれば、油は「身体にいい」ものとして機能するのです。

脳の65％は脂質でできている!

脂質は身体だけではなく、私たちの精神にも大きな影響を及ぼします。あまり知られていないことですが、実は水分を除くと、脳の有形成分の65％は脂質でできているのです。
そのために、脂質のバランスが崩れると、脳からの情報伝達が円滑に行われなくなるなどの支障が起こってしまいます。
“摂取する油によって、性格や心のありかたも変わってくる”、と言われているほどです。

また、魚の油などに含まれるDHAは脳の神経回路に必要な栄養素です。現代になって「キレやすい」子どもが増えたのは、戦後の食生活の変化で日本人が魚を食べなくなったからだ、と言われています。それほど、油は脳の働きに重要なのです。

摂り過ぎの油、不足している油

しかし、必要だからといって、どんな油でもどんどん摂ればいいというものではありません。現代の生活では、すでに摂り過ぎの油と不足している油があります。
先に「多価不飽和脂肪酸」は「太りにくい油」であると説明しましたが、ならば多価不飽和脂肪酸をたくさん摂取すれば健康になるかというと、そうではありません。

多価不飽和脂肪酸には「オメガ３」系の脂肪酸と「オメガ６」系の脂肪酸があり、このうち「オメガ６」系の脂肪酸は、現代の食生活ではすでに摂取し過ぎの傾向にあります。
ファストフードや菓子パンなどによく利用されるリノール酸は、「オメガ６」系の脂肪酸の代表です。
一方で、「オメガ３」系のDHA、EPAは青魚などに多く含まれ、現代の食生活では不足気味です。
このように、足りない油、摂り過ぎの油を意識し、気をつけることで、体内のバランスをとることができると考えていきましょう！

出典：『ホントによく効く油の正しい選び方・使い方』（日本文芸社）より
＜監修者プロフィール＞
守口徹（もりぐち・とおる）
日本脂質栄養学会副理事長。国際脂質脂肪酸学会理事。横浜市立大学卒業後、製薬会社の薬理部門に勤務。国立がんセンター研究所、東京大学薬学部に研究出向の後、同大学で博士号を取得。1997年、客員研究員として米国国立衛生研究所(NIH)で脂肪酸と脳機能に関して研究。2008年より麻布大学生命･環境科学部に奉職、現在に至る。

写真© Dmitry Naumov - Fotolia.com

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