Living & Dining
もとは続き間の和室。庭に面して縁側や応接間があるため日ざしが届きにくく、砂壁もやや暗い印象でした。
掘り込み天井のデザインをそのまま生かしたダイニングと、それに続くリビングは、どちらも開放感たっぷり。床にはシナ合板を使ってコストを抑えました。「ラフな質感が気に入っています」
もともと押入れだったスペースにコンソールと鏡を置いて、リゾート風に演出。たれ壁の裏側につけた電球が、間接照明のような印象に。
壁と引き戸をとり払い、格子状のパーティションを設置。縁側だった場所をワークスペースにして、リビングとの間をやんわりと仕切りました。格子を通して気配が伝わります。
以前は和室と庭の間に縁側風のスペースが。「日当たりがいいのにあまり使われていなくて、もったいない感じでした」
パーティションに沿ってカウンターを造りつけました。ベンチは並んで作業するのにぴったり。
右写真:リビングのテレビ側。以前は食器棚として使っていた収納家具を、本棚としてリユース。
Dining & Kitchen
以前のカウンターはリフォーム後の造りつけ収納と同じ位置。内側がパントリーほどの広さで狭いのが難点でした。
カウンターの位置を移動して内部のスペースを広げ、ゆったり作業できる対面式キッチンに。ダイニング側にはチェアを並べてバーカウンター風に使っています。
左写真:キッチンは「サンワカンパニー」の製品を施主支給。手頃なタイプだそうですが、ヘアライン仕上げで水返しのないステンレストップが魅力。
中央写真:キッチンの造りつけ収納。表側にはカウンター部分をつくり、調理家電を置いています。
右写真:造りつけ収納の裏側は全面をオープン棚にして、食品などをしまうパントリーとして活用。
Sanitary
広さの限られた空間の中、ドアをあけて洗面室からトイレに入るプランでした。
バス:浴室も面積を変えず、手頃なユニットバスをはめ込む形でリフォーム。
洗面室:洗面室とトイレは位置や広さを変えず、内部にあった間仕切り壁とドアを撤去。同じ面積でも広がりが生まれました。洗面台は「サンワカンパニー」。
Entrance
玄関ホール兼応接間は10畳大。写真は家具を撤去したあと。ソファやテーブルが置いてありました。
左写真:玄関ホールの中央に大きな収納を造りつけ、クローゼット&ユーティリティコーナーに。通路状の土間は奥にも上がり口があります。
右写真:反対側には洗濯機が。浴室と物干し場の間にあたるので、家事もラクラク。
リフォームストーリー
ご両親からの提案で 実家リフォームに着手
Kさん夫妻がリフォームすることになったのは、奥さまが独立するまで家族と暮らしたご実家。「両親が、隣に住む祖母の家に移ることになり、ここがあくから住まない?と声をかけてくれて。それまではずっと賃貸マンション暮らしで、自分たちの家を持つのも、もちろんリフォームをするのもはじめて。何もかも手探りでスタートしました」
ご実家の1階は、玄関ホールを兼ねた応接間と、ふすまで仕切られた二間続きの和室。この間取りが若いお二人のライフスタイルに合わないことと、キッチンや洗面室などの水回りが狭いことが改善したいポイントになりました。 相談に訪れたのは設計事務所が中心。予算が限られていたことから、DIYで工事に参加したり、安価な建材をとり入れたりできる、自由度の高い依頼先として選んだといいます。
理想の建築家との 出会いが計画をあと押し
ところが、行く先々で待っていたのはネガティブな反応ばかり。「自分たちにとってははじめての経験だし、素人だから工事費の知識もゼロ。『こうするといくらかかるのか』という見当がまったくつかないまま、こちらの希望と予算を伝えると、『その金額では無理ですね』『そうするなら○百万円かかるよ』と言われてしまうんです。正直、やっぱり無理なのかな?と思ったこともありました」とご主人は振り返ります。
そんなとき、はじめてポジティブな対応をしてくれたのが、ご夫妻で設計事務所を営む明野さんでした。「ただ『できない』ではなく、『それをそのまま実現するのは難しいけれど、こういう形であればできますよ』とか『ここにかかる費用をつくるために、この作業は自分たちでやりましょう』というように、予算の中でのやりくりの仕方をきちんと説明してくださって。私たちが知りたかったのはこれだ!という思いで、無理を承知でお願いしたんです」
苦労の末、ローコストで 念願のリフォームに成功!
費用を予算内におさめるために、積極的にDIYにとり組んだ兼清さん。その項目は驚くほど多岐にわたります。床の塗装、畳やエアコンの撤去、床下の防蟻・防腐処理、既存の柱のクリーニング、キッチンや洗面台の発注、ブラインドの発注ととりつけ……こうして並べると簡単なようですが、実際にはひとつひとつの作業が苦労の連続だったそう。「柱のクリーニングだけでも、二人で丸2日がかり。真っ黒だった4本の柱をひたすら紙ヤスリで磨きました。床下に防蟻剤をまいたときは、Tシャツ&短パンで作業していたせいで、体じゅうかぶれて悲惨な状態に。エアコンの室外機を2階から下ろすのも重労働でしたね。こういう思い出話が酒のつまみになるくらい(笑)、いい経験になりました」とご主人。
とはいえ、苦労の分だけコストダウン効果は絶大。床をDIYで塗装したことで、かかった費用は材料費のみ。柱のクリーニングも業者の工賃は1本あたり10万円(!)ほどするそうですが、これも紙ヤスリ代だけですみました。水回り設備も手頃なものを施主支給するなど、こまかな工夫を積み重ね、見事に予算内でのリフォームに成功しました。
懐かしい実家の雰囲気と 暮らしやすさを両立
無事にリフォームを終え、入居してみて感じたのは「同じ家とは思えない!」という驚きと、当時の面影が残っている喜びだったそう。二間続きの和室は、空間がのびやかにつながるシンプルモダンなLDに。使いみちのなかった応接間は、ゆったりした土間&ユーティリティコーナーに生まれ変わりました。「明るくて開放感があって、スペースの無駄もなくなりました。でも、柱や和室の天井は以前のまま。思い出のある実家の雰囲気が感じられてなごみます」と奥さま。和室の掘り込み天井は、ちょっとアジアンリゾートっぽい雰囲気のダイニングにぴったり。インテリアのアクセントとしても大活躍しています。
“自分の家を自分でつくる” が、かけがえのない経験に
今まで“でき上がった家”にしか住んだことがなかったというお二人。「コンセントからトイレットペーパーホルダーの位置まで、すべて自分たちで決めることのおもしろさと大変さを味わいました。家に手をかけながら暮らすという生活も生まれてはじめて。入居してからも網戸を張りかえたり、デッキをつくったりしていますが、こんな暮らし方もあったんだ!と再発見しています」
デッキは現在もコツコツと製作中。兼清さんの実家リフォームはまだまだ続きます。「手間をかけている分だけ、住まいへの愛着もひとしおですね」
リフォームのポイント
設計のポイント
ご夫妻がなにより望まれていたのは、明るくて快適なLDKと、応接間の有効活用。そのためサニタリーは位置や広さを変えず、内部の仕切り方だけで狭さを解消しました。このように、予算の中でできることとできないことを整理し、優先順位をつけることがコスト配分の秘訣です。
明野設計室一級建築士事務所 明野岳司さん、美佐子さん
岳司さん/1961年東京都生まれ。芝浦工業大学修士課程修了後、 ㈱磯崎新アトリエを経て2000年に明野設計室を設立。美佐子さん/64年東京都生まれ。芝浦工業大学修士課程修了後、小堀住研㈱(現エス・バイ・エル㈱)などを経て明野設計室を設立。
DATA
家族構成 |
夫婦 |
住居形態 |
戸建て(木造2階建て) |
築年数 |
40年(28年前に増改築) |
延べ床面積 |
122.15㎡(36.95坪) |
リフォーム面積 |
73.29㎡(22.17坪) |
リフォーム部分 |
1階全体(2階は一部内装のみ) |
リフォーム期間 |
2012年7月〜10月 |
リフォーム設計 |
明野設計室一級建築士事務所 |
リフォーム施工 |
渡邊技建 |
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