コラム

ごはん炊きは土鍋。掃除は石けんひとつ。京都・町家暮らしの「温故知新」な暮らしの知恵を公開

更新日：2017.10.27

『FU-KO. basics』が大人気の洋服作家＆手づくり暮らし研究家・“FU-KO”こと美濃羽まゆみさんは、築90年以上の「町家」で暮らすお母さん。朝から土鍋でごはんを炊き、家をほうきで掃除して、“二槽式洗濯機”でじゃぶじゃぶ洗濯！家事の合間に野菜を干し、たまには保存食も仕込んで――古い家ならではの不便さと向き合うなかで少しずつ形作られた『温故知新』な暮らしぶりを紹介するブログが注目を浴び、新著『FU-KOさんのぶれない暮らし』も話題の美濃羽さんに、日々の暮らしについてお話を伺いました。

　ママになってから趣味となったハンドメイドでお洋服ブランドを立ち上げ、毎日目が回るように忙しいはずなのに、家事も手を抜かない「ぶれない暮らし」を続けるための極意とは……？

生活動線もよくないし、収納も少ない――「実は不便」な町家暮らしで学んだこと

　間口が狭く、南北に細長い造りの町家は、もともとは店舗と住居が一体化されたもので、その形状から「うなぎの寝床」と称されるほど。美濃羽さんは、大正時代に建てられたという築90年以上のこの家に、研究者の夫、9才の長女、4才の長男と4人で暮らしています。

「町家は日中でも家の奥まで光が届かないうえ、木枠の窓や戸の立てつけ部分からすき間風が吹き込んで特に冬場は冷え込みます。生活導線もよくないし収納だって少ない――正直言って不便なこともたくさんありますが、この家に暮らす中で“面倒をたのしむ”ということを覚えました」

　FU-KOさんの一日は、子どもを送り出したあと家の周りを掃き清めることからスタート。掃除は基本、ほうきとふきんで。板の間は、毎日精米をするときに出るぬかをワックスがわりに、せっせと床磨きをして、きれいをキープしているそうです。

「実はもともと大の面倒くさがりで、特に掃除が大嫌い！（笑）でも、ため込んであとから汚れを落とすほうが大変と気づいてからは、料理をするときは片手にふきんを持って都度つどふきながら、ちりを見つけたら各部屋ごとに置いてあるミニほうきでさっと掃く、トイレも使うときについでに……と、少しずつ片づける“ながら掃除”が身につきました」

　生活の中で気づきがあれば、それをもとにやり方を変えてみる、ときには考え方も変えてみる……FU-KOさんの生き方には、自分を「今」に沿わせて変化するしなやかさがあるようです。

「ぶれない暮らし」のために大切にしていること

　与えられた環境の中で最大限力を発揮するために、現在では家事をできるかぎり時短したり、生活をちょっぴり豊かにする工夫を日々実践している美濃羽さん。自身の人気ブログで紹介するそんな「FU-KO流の暮らし方」には、共感の声が続々届いているそうです。

「がんばることもときには必要だけれど、無理をしてお母さんが倒れてしまったら大変。自分を追い詰めてしまわぬよう、“数字ではからない”“人と比べない”ということも大切にしています。子育てもそう。あせらず、たまには自分をゆるめてあげながらも、『今ここ』にある親子の時間をじっくり味わいたい、そんなふうに思っています」

「シンプルで、ちょっとだけていねい」な美濃羽さんの暮らしのトピックをまとめた著書『FU-KOさんのぶれない暮らし』から、「ずーっと使い続けたい」というお気に入りの「道具」3つをご紹介します。

サイズ・使い勝手・プライス。どこをとってもすばらしい「白雪ふきん」

　大きさ、水切れのよさ、乾きやすさ、そしてお手ごろな値段。
　わたしの中で、今のところどこをとってもナンバーワンなのが、この「白雪ふきん」。蚊帳の生地を重ねて作られた奈良県産のふきんです。

　一番の魅力は、やわらかく、しっかりと水けや汚れを絡め取ってくれるこの適度な厚み。お値段も1枚300円程度なので、気負わず使い続けられます。綿とレーヨンの混紡でとても丈夫なのに、やわらかくて肌当たりもよくて拭きあとがほとんど残らず、なんとも心地よい使い勝手には感動します。雪のように真っ白なのも、いかにも清潔そう。今やこのふきんは、わたしの家事になくてはならない存在となっています。

　おろしたてはまず、台所用として使います。食事作りごとに洗ったものを用意するので、汚れもしみつかず、普段は洗濯機で洗うだけでじゅうぶん。くすんできたら月1～2度、酸素系漂白剤を使って煮洗いします。ほつれてきたり、くたびれてきたら床掃除用に。ぼろぼろになったら最後は玄関や外回りを拭き上げて、「これまでありがとう」を伝えてさよならします。

食事づくりに、食器として……毎日ひっぱりだこの「三つ子ざる」

　かごが大好きなわたしですが、同じくらい大好きなのがざる。

　保存食や毎日の食事作りにはもちろん、食器として使うこともあります。とくに岩手・鳥越の篠竹という節の多い素材を使った「三つ子ざる」は、毎日ひっぱりだこ。ちょっとだけ干し野菜を作ったり、調理のときのバット代わりになったり。ゆで上げた野菜のあら熱をとるのも得意です。また、なんでもないおにぎりや麺類、せいろで蒸したパンや季節の果物を並べても、なんともおいしそうな雰囲気になるのです。民芸雑貨店で買ったこれは、一年中大活躍。

　見た目がそっくりで、安価な外国産も多いですが、水回りで使うことの多いざる、使ってみるとやはり「もち」が全然違います。残念ながら年々少なくなっていますが、まだまだ国内で作り手としてがんばっていらっしゃる職人さんがおられます。その方たちに「これからもいいものを、どうかお願いします」と伝えるような気持ちで、国産のざる・かごを選びたいと思います。

調理から保存まで！ひとつで三役を兼ねる「野田琺瑯」の容器

　見えないとつい中身を忘れてしまう、うっかり者のわたしなので、保存容器は中に何が入っているか一目でわかる透明なものと決めています。だから、おかずや食材の保存にはプラスチックのコンテナやガラスの容器を。

　その点、琺瑯の容器は、中身は見えないけれど、使い道によってはとても便利。
　たとえば、カレーやパスタのソースなどをたくさん作りおいて翌日以降に食べるとき、保存容器は琺瑯を選びます。なぜかというと、直接火にかけて温め直しができるから。また、プラスチック容器だとにおい移りがちょっと心配でも、琺瑯ならばそれもなし。表面がガラス質だから、直接ペンで側面に文字を書くことだってできちゃいます。

　それから、デザートを作るときにも大活躍。夏場のおやつによく子どもたちが大好きなゼリーを作るのですが、琺瑯を火にかけて寒天を溶かし、果汁や粗製糖を混ぜるのも同じ容器の中で。あら熱が取れたら、そのまま冷蔵庫へ入れて冷まします。温かみのある表情の容器だから、食卓へもそのまま出せてしまうのです。

　写真は、長方形の「レクタングル」。ふたつきで3サイズ持っています。大きなサイズは、おにぎりやおかずなどを詰めると、お弁当箱がわりになりますよ。

撮影／仲尾知泰（ripcord.）

お話／美濃羽まゆみさん

1980年生まれの手づくり暮らし研究家。「子どもに似合う服を着せたい」から手づくりにはまり、自宅アトリエでつくった「FU-KO. basics」ブランドのハンドメイド服が徐々に人気に。京都の築約90年の町家に研究者の夫、9才の女の子、4才の男の子と4人で暮らし、日々の出来事を綴ったブログ『FU-KOなまいにち。』も大人気。手づくりのある「ほんのり、ていねい」な暮らしぶりが注目を集めている。『すてきにハンドメイド』（NHK Eテレ）など、テレビ出演も。
http://fukohm.exblog.jp/

出典：
『FU-KOさんのぶれない暮らし』

土鍋でのごはん炊きやほうきでの掃除、“二槽式洗濯機”での洗濯――今また注目を浴びる『温故知新』な暮らしから、「”めんどうくさい”が楽しい家事」と「手抜き」のバランスを学びます。「ラクは好きだけど、ラクばっかりだと結果が伴わず結局めんどう」のような紆余曲折を経て、徐々に持てるようになったという「自分なりの尺度」。家事・道具・親子・自分――「ぶれない」暮らしで毎日がラクになったという彼女の「FU-KO流暮らしのコツ」をさぐります。 “暮らしをじっくり楽しみたい”と考えるあなたに、とくに読んで欲しい一冊。

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