「織るのが1、切るのが9」約150年の歴史を持つ赤穂緞通の職人技
取材の最後に訪れたのは、赤穂が誇る伝統工芸「赤穂緞通(あこうだんつう)」の織り機が置かれた、赤穂化成の敷地内にある一室です。緞通(だんつう)とは、お部屋で使う手織りの高級敷物のこと。赤穂緞通は、佐賀の鍋島緞通、大阪の堺緞通と並び、「日本三大緞通」のひとつに数えられています。
始まりは、江戸時代の終わりごろ。児島なかという一人の女性が、旅先で見かけた中国の絨毯に魅せられ、26年もの歳月をかけて織り方を研究したのがきっかけでした。
雨が降ると塩田での作業が休みになってしまうため、農家や塩田で働く女性たちが自宅でできる手仕事として地域に広まっていったそう。
お部屋にお邪魔すると、職人さんたちが木製の大きな織り機に向かい、一筋ずつ丁寧に糸を織り込んでいました。
一般的な絨毯はウール(羊毛)が多いのですが、赤穂緞通はなんとすべて「綿100%」。かつて綿花の産地だった播州ならではの素材で、湿気の多い日本の夏でもサラリと心地よく、冬はあたたかい肌触りが魅力です。
そして、赤穂緞通の一番の見どころが「摘み(つみ)」と呼ばれる仕上げ作業。
刃の根元が曲がった専用のハサミ(握り鋏)を使い、表面の毛足をミリ単位でそろえながら、模様の輪郭に沿って彫刻のように溝を彫り込んでいきます。
「織るのが1なら、切るのが9」と言われるほど、ハサミを入れる工程に時間と手間をかけるのだそう。この繊細な手仕事があるからこそ、模様がくっきりと立体的に浮かび上がり、100年踏み続けても美しさが保たれるのだと教えていただきました。
模様にもそれぞれ願いが込められていて、魔除けの意味を持つ「利剣文」や、豊かな実りを願う「雷文」など、家族の幸せを祈る温かい想いが詰まっています。
最近では、大きな敷物だけでなく、お部屋に気軽に飾れる小さな額装アートや、色とりどりの綿糸で作る「幸せチャーム」など、現代のインテリアになじむアイテムも人気だそうですよ。
塩から始まった赤穂旅。最後に見えた、暮らしを支えるものづくり
朝から夕方まで、赤穂の街と赤穂化成さんをじっくり巡った今回の取材。
穏やかな瀬戸内海の絶景からはじまり、室温60℃のハウスで職人さんと一緒に収穫した天日塩、主婦たちの想いが守り抜いた天日塩の歴史、食卓を豊かにしてくれる塩と水のミネラル、そして150年間女性たちの手で紡がれてきた赤穂緞通の温もり。
赤穂のものづくりに共通していたのは、「海と自然の恵みを大切に活かし、人々のすこやかな暮らしを支えたい」という誠実で温かい情熱でした。
ものづくりの裏側を知り、そこに込められた人の想いや土地に根づいた知恵、文化に触れることで、普段何気なく使っているものの見え方も少し変わってきます。
毎日の料理に使うお塩に少しこだわってみたり、お気に入りの手仕事をお部屋に取り入れてみたり。ほんの少しの工夫や選択が、私たちの暮らしをもっとおいしく、心地よくしてくれるのでしょう。
暮らしニスタ大賞のオリジナル塩もまもなく完成予定!皆さんもぜひ、まずは奥深い塩とミネラルの世界から、今日の食卓を楽しんでみてくださいね。
取材・文/岸拓見(暮らしニスタ編集部)
取材協力/赤穂化成株式会社、株式会社アコール
コメント
全て既読にする
コメントがあるとここに表示されます