OL時代の環境がお菓子と写真の技術を育ててくれました。今は子どもたちに合わせて進化中です
パティスリーのようにエレガントで美しい仕上がりの洋菓子と、それをさらに魅力的に見せるカメラのセンスで、常に目が離せない中島さんの記事。そのルーツは子ども時代にさかのぼります。「母がお菓子もパンもすべて手作りしてくれて、私もお菓子作りに興味を持ちました。結婚して子どもが生まれたら、手作りのおやつを作ってあげたいと思って」と、OL時代に製菓学校へ通い始めたのだそう。更に「仕事で出会った一眼レフカメラにもハマり、作ったお菓子を記録も兼ねて何枚も撮っていましたね」。
そんな中島さんの力になってくれたのが職場の上司や同僚。「おいしいものが好きな人が多くて、作ったお菓子を食べてもって、感想を聞かせてもらっていました。あのお店にも行ってみるといいよ、なんて情報もいただいたのがとても役に立ちました」。
恵まれた職場環境は、中島さんの写真技術にも、一役買いました。「カメラに詳しい上司や先輩が多かったので、撮った写真を、添削してもらって、画角や光の使い方を勉強しました。がんばる人に好意的な雰囲気の職場だったせいか、お菓子作りも写真も心から応援してもらったことに今でも感謝しています」。
「もともとが凝り性なんです。始めたら極めたい性格」という中島さん。お菓子も、上手に作れるようになるまで何回も作るのだそう。「独学で学んだマカロンは100回近く挑戦しました。写真を撮るときも、スタイリングや向きや位置を変えたり、露出補正を変えて、何カットも撮って、どれが一番いいか確認します。最近は、写真をお菓子、家族、飛行機など好きなジャンルごとにフォトブックにまとめています」。
周囲の人の力をじょうずに借りつつ、隠れた努力で自分を高めてきた中島さんも、今は2児のママとなり、子どもたちと手作りのお菓子を楽しむ日々。「今は子どもたちがいちばんのお客さんなんです。特に息子はいつも感想や的確なアドバイスをくれます。料理も含めて、彼が我が家の味見担当です(笑)」。ふたりのお子さんたちは食べることが大好き。中島さんはそんな彼らに、お菓子を通していろいろな文化や季節を感じさせてあげたいと思っているのだそう。「中華風のお菓子のときにはいっしょに中国茶を出したりもします。目で見て、味わって、世界にはいろいろな国があり、それぞれの食文化があることを伝えたいなって」。なるほど、おやつタイムに食育を取り入れる知恵は見習いたいところです。「作るお菓子も、子どもができてから変化していて、マドレーヌは子どもが一口で食べられるミニサイズで作るようになりました。飾り付けのフルーツは春はイチゴ、夏はメロン、秋には栗やさつまいもなどにして、季節を感じさせてあげています」。華麗なまでに美しい中島さんのお菓子には、そんな子どもたちへの思いも詰まっていたのですね。
子育てのお手本は両親。子どもたちには、自分で生きていく力をつけてあげたい
お菓子作りにも食育を取り入れる中島さんの子育てに大きな影響を与えたのがご両親。お菓子やソーイングが得意だったお母様はもちろん、お父様からもメカ好きという影響を受けているのだそう。「父は、家のものはなんでも修理してしまうDIYの達人。写真も好きでよく撮ってくれました。その影響で私も、カメラや飛行機などメカニックなものが好きになったみたいです(笑)」。生活を工夫し、楽しんでいたご両親に対して「尊敬と憧れを抱いています」という中島さん。ご両親の子育てをお手本に、10才の長男にも料理など、家事全般を教えてきたそう。「おかげで、料理も今ではいろいろなメニューが作れるんですよ」。
また「子どもと大人の差は、過ごしてきた時間と経験の差だけ」、という考えもあり、まだ2才の長女に対しても、子ども扱いせず、ひとりの人として向き合うように心がけているのだそう。「着替えなども、時間がかかっても、がんばって1人でやりきるまで見守っています。待ってあげれば、2才なりにいろいろなことができるんです。夫や息子とも連携して、すぐに手を差し伸べないようにしています」。一見厳しいとも見えるその接し方の理由は、「人はいつどうなるかわからないから。親がいなくても困らないように育てるのも、親の役目かなと思っています」という深い愛情から。美しいお菓子やお得意のソーイングに囲まれた暮らしの中で、そんな真剣な親の覚悟を持って、子どもたちと接していることには、はっとさせられます。「大人になったときに自分の意思を大切にしながら、自分の力で生きる力を身につけてほしいと思います」。
取材・文/福本千秋
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