家電で『空調機器』というカテゴリーがあります。エアコン、空気清浄機(以下空清)、加湿機、除湿器、扇風機、サーキュレーター、換気扇などが、それに当たります。
この中で、全世帯にあるのが「エアコン」。日本の夏は蒸し暑いどころか、最近は「酷暑」。ないと過ごせません。使わないと熱射病ですからね。必需品と言えます。
ところが今の時代、問題はそれだけではありません。ホルムアルデヒドなど 揮発性有機化学物質(VOC)、『PM2.5』など、空気中の物質、浮遊物が問題視されています。新聞にも大きく掲載されることもあります。自分には影響がないように思う人も多いと思います。が、それは体が丈夫な時の話。病気になったりすると、体への負荷が一気に現れてきます。空気中のカビ胞子が原因で発病することもあります。
が、空清はあった方がいいのは、わかっているが、見えないモノにお金を払うということで、躊躇するところもありますよね。
そこで今回は、値段にこだわった視点で空清を考えてみたいと思います。
空気清浄機で、値段に差がある理由とは?
単純に言うと、性能と機能で、値段が決まってきます。
まず、わかりやすい方から。機能です。多くの日本のメーカーは、他の空調家電の機能を持たせています。具体的には、加湿、除湿器の機能です。これらは単独の家電としても販売されているくらいですので、価格は高くなります。
次に性能です。これは2つの要素が絡みます。一つは、「HEPAフィルター」で取れない0.3μm以下の浮遊物、ウイルス等への対応です。具体的には、イオンなどを発生させて対応するか、どうかです。あると高くなります。ちなみにタバコの煙の粒子は、この0.3μm以下のものが多く、はっきり言うと今の空清で完全除去するのは無理です。タバコの煙が嫌がられる理由の一つでもあります。
二つ目は、いかに高速で浮遊物を除去できるかです。何でも「すぐ」と言うのが望ましいですが、エアコンが部屋を冷やすのに、最低10分くらいかかるように、それなりに時間がかかります。
今、日本で販売されている空清は、日本のJEMA規格(日本工業会規格)とアメリカ他で用いられているAHAM規格、どちらかの規格でテストされているのが基本です。どちらが厳しいかと言うと、「いかに高速で、連続して除去できるのか」を重視するとアメリカの規格です。これは部屋が広いためだとお考え頂ければと思います。こちらもなるべく早くフィルタリングすることを考えなければなりませんので、値が張ることになります。ちなみに適用畳数は、AHAM規格の方が厳しく狭く出ます。
この2つのテスト結果、いずれかを掲げてくれない製品は、第三者的な評価がない製品ですのでおすすめできません。
10年間使い続けるとおいくら?
リビングを想定し、シャープの加湿機能付き空清「KI-HP100」(空清だけの適応畳数:46畳以下、プラズマクラスター適応畳数:23畳以下)を例に取り、10年間でどのくらいコストがかかるのかを算出してみます。
条件は、空清(フィルタリング / プラズマクラスター):24時間連続、強:10%、静:90%、加湿機:8時間/日、半年、強:10%、静:90%。以下、税込価格です。
本体価格:13万8240円。量販店A社の価格です。量販店では10%ポイント還元ですので、1万3824円ほど、売価から引いてもいいのですが、今回はこのまま行きます。
次は電気代です。2017年下半期のカタログのメーカー申告値を使います。
加湿空清では、強:1.67円/hr、静音:0.16円/hr。空清では、強:1.62円/hr、静音:0.14円/hr。加湿空清使用時は、半年(183日)、8時間ですから、455.3円/年。空清使用時は、その他、全部です。計算すると、2560円/年。総計:3015.3円/年。10年で3万0153円です。
最後に、消耗品です。
空清のフィルターは、大きなホコリを取る「プレフィルター」、機種によっては洗ってキレイにすることができます。メインのフィルタリングする「集塵(HEPA)フィルター」、ニオイを取る「脱臭(活性炭)フィルター」です。この2つは洗うことはできません。使い捨てです。
「KI-HP100」の場合、「プレフィルター」は、使い捨て。6枚入りで、1080円。シャープ推奨は1カ月です。「集塵 フィルター」は7560円。「脱臭フィルター」は8100円。この二つはテスト結果では、10年間十分使えるとのこと(一般家庭で、1日タバコ5本分吸った想定です)。
「プレフィルター」は、10年間で2万520円。他のフィルターは0円ですが、ホコリっぽいところ等に設置などしたら、フィルターがダメになりますから、1万5660円がかかります。ここは要注意です。
次はプラズマクラスター部分。24時間運転だと、2年で交換。7560円也。4回交換する。3万240円。
さて次は加湿機部分。
加湿フィルターは、8時間/年使って、10年。これは今回の試算では取り変えずに済みます。ちなみにお値段は、3456円。
水を無菌状態に保つために、必要なのが「Ag+イオンカートリッジ」。お値段は972円。こちらは900L毎の交換。ちなみに、今の前提だと、600L/年。6回の交換が必要です。5832円。
総計すると、22万4985円。1日当たり、61.63円。
ちなみに、タバコは現在460円/20本程度。タバコ 3本ほどです。タバコを吸ったつもりで、空清を買うことが可能です。
ちなみに本体代:61%。電気代:13%、消耗品:26%。こんな感じです。
空清を活かす機能
空清の基本は、フィルタリングです。それは世界共通です。
フィルタリングは各メーカーのノウハウが入ったHEPAフィルターで行われます。目が細かいので、ホコリで詰まるとフィルタリングが著しく低下します。このためプレフィルターを設けます。このプレフィルター、大きなホコリを取ればいいので、丈夫に作って、洗えば何度も使えるようにしています。が、この洗いが面倒なのです。
最近は自動おそうじ機能が付いているモノもあります。これは便利です。もともと空清は黒子的な存在。掃除も忘れがちです。これは欲しい機能です。
あと、最近搭載され始めたのが、家外の空気との差。Wi-Fi環境下、スマホチェックが多い機能です。外との差が明確になることによって、閉め切ってこのまま使い続けた方がいいのか、空調を止めて外の空気と入れ替えた方がいいのかが明確にわかります。
最終的に空調は、「換気」「エアコン」「除加湿機」「空清」の4つの機能を、連動しながらベストの状態に保つことです。最終的には、個人個人カスタマイズした上で、完全自動化にすべき項目。それを考えると、Wi-Fi環境下などは当たり前のことになりそうです。
20畳レベルでおすすめの空清
日本のリビングは、14畳〜20畳。ワンルームだと30畳程度が相場です。このサイズでイイ感じの空清をご紹介します。
■カドー
華道から名前を取った専業メーカー。名前の通り、日本メーカーです。カドーは、世界市場をターゲットに、AHAM規格でも高い評価を取得している世界のトップメーカーの1つです。
推奨モデルは、AP-C200。22畳モデルです。いくつかの特長がありますが、その中でいいのはスタイル。キレイですね。光触媒でフィルターの活性炭部分をセルフクリーニング型です。
●外寸:φ242×652mm ●重さ:6.3kg ●最小運転音29dB ●メーカーストア価格:49,000円(税抜)
■シャープ
おすすめは、加湿機能付き空清「KI-HP100」。適応畳数は、空清のみ .> 加湿機+空清 > プラズマクラスター使用時ですが、プラズマクラスターイオン適応畳数、23畳です。シャープのフラッグシップです。次世代型と言われる、「プラズマクラスターNEXT」搭載。「プラズマクラスター25000」の倍のイオン濃度を実現しています。気を付けるべきは、加湿機部分。雑菌など繁殖しないように、清潔にすることが必要です。
●外寸:427×371×738mm ●重さ:約17kg ●最小運転音21dB ●オープン価格
■ダイキン工業
おすすめは、除加湿機能付き空清「MCZ70U」。こちらは除湿機能があるところが高ポイントです。お部屋の温度に合わせた目標湿度になるように除湿・加湿を自動で切り換えている上、除加湿ができるので、湿度が上がりっぱなしという様なことはありません。湿度コントロールは、空調だけでなく、健康的にも非常に重要なことです。
加湿空気清浄運転時の適用畳数:31畳。またプラズマ放電の一種であるストリーマとアクティブプラズマイオンを搭載。ニオイ、花粉の芯などいろいろなものを分解、フィルターの能力をキープします。
●外寸:600×395×287mm ●重さ:12.5kg ●最小運転音18dB ●オープン価格
■パナソニック
おすすめは、F-VXP90。加湿機及びナノイー(イオン)X搭載モデルです。加湿空清畳数:35畳(JEMA規格)。ナノイーも多機能で、いろいろなことをやってのけます。最近パナソニックが力を入れている美容関連で言うと、ナノイーは皮脂となじんで肌をコーティング。キメが整ったうるおい美肌になるとか。また10年、ユニットを交換する必要がないのもポイント高いです。細かいですが、ダークブラウンは、部屋で目立たないのが魅力です。
●外寸:640×398×268(+下部含む309)mm ●重さ:11.8kg ●最小運転音18dB ●オープン価格
■ブルーエア
スウェーデンの空清専業メーカー。フィルタリング性能には定評があり、AHAM規格で高評価を取得しています。推奨モデルは、「Blueair Classic 480i」。推奨フロア面積、24畳(AHAM規格。33畳(JEMA規格))。デザインは、北欧デザインらしく実にシンプル。コンソールもあっさりしており、ここら辺は、洗練を旨とする欧州らしさを感じます。また、Wi-Fiも搭載されており、コントロールも可能です。
●外寸:500×275×590mm ●重さ:14kg ●最小運転音32dB ●メーカーストア価格 90,000円(税抜)
文/多賀一晃
1961年生まれ。慶應義塾大学大学院理工学部卒。大手メーカーにて商品開発、企画を担当後独立。国内はもちろん、世界最大の家電見本市「IFA」等で世界中の家電を取材し、役立つ情報を「生活家電.com」から発信中。日本経済新聞夕刊の家電製品特集や土曜日別冊「日経プラス1」の「家電ランキング」選者、WEDGE Infinity「家電口論」主筆としても活躍。
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