毎日、仕事に家事に育児にと、気づけば一日があっという間。ふと部屋を見渡して「また散らかってる…」と落ち込んでしまうことはありませんか。
SNSを開けば、モデルルームのような部屋や、手作りの完璧な食卓。つい比べてしまい、「私、全然できてない…」とため息が出る——そんな人も多いのではないでしょうか。もしかすると、「ちゃんと」「完璧に」という基準そのものが、あなたの心を苦しくしているのかもしれません。
そこでヒントになるのが、行動経済学博士である相良奈美香氏の著書で語られていた、「『ほぼ完璧』くらいがちょうどいい」という視点。力を入れるところと抜くところを見極めるだけで、心の余裕は思った以上に取り戻せます。
なぜ“完璧を手放したほうがいい”のか?その理由を伺いました。
「完璧」を求めるのは勝てない勝負。自分にも他人にも期待しすぎない
ここまで行動経済学の知識をもとに「こうすればきっとうまくいく」「ポジティブアフェクトを高めるにはこうしよう」 などと提案してきましたが、最後にあえて言わせてください。完璧にやろうなんて絶対に思わないでください。まずは本書中の1つでも2つでも実践して「何か変わったかもしれない」と思えたら、最初の一歩としては十分です。
完璧を求めてはいけない理由は、人はポジティブアフェクトよりもネガティブアフェクトを強く感じてしまう生き物だから。「完璧」には完璧以外の合格点が存在しませんから、100点を目指して99点をとった場合、99の○(マル)よりも、たった1つの×(バツ)にネガティブアフェクトを感じてしまいます。それはモチベーションの低下につながりますし、「もうやめちゃえ」という挫折のきっかけにもなりえます。完璧を求めるのは、最初から勝てない勝負に挑むようなものなのです。
これは自分に対してだけではありません。自分に厳しい人ほど、他の人にも厳しくなります。部下に「この程度の仕事も期限までに終わらせられなかったのか」と厳しい評価を下したり、わが子に「このくらいの点数はとってほしい」と過剰な期待をかけたりします。
自分なりの完璧を相手に押しつけることによって、自分も相手も常にネガティブアフェクトを抱き続けることになり、そのアフェクトはオフィスや家庭の中にも蔓延していきます。誰にとってもいいことなどありません。
私はずっとウォーキングやランニングを続けていますが、「1日1万歩を毎日」が目標でした。でもあるときから「これは難しい」と気がつきました。仕事が忙しかったり、時差ぼけだったりすることもあり、無理すると逆に体調を崩します。
そこで最近は目標を「1日8000歩を、できるだけ毎日」に変更しました。8000歩でも無理な日もありますが、そういうときには「疲れているのにがんばった」と自分に声をかけてポジティブアフェクトをキープしています。
自分のOKラインをフレキシブルに調整できるようになると、他者への過剰な期待や厳しい評価も少なくなってくるはずです。目指すのは「完璧」ではなく、「ほぼ完璧」くらいがちょうどいいのです。
自分にとっての完璧は、ほかの人にとって「やりすぎ」のことも
以前、こんなことがありました。日ごろからお世話になっているクライアントの大切なイベントがメキシコであり、講演者の一人に選ばれたのです。
光栄なことではあるものの、準備期間は非常に短く、プレゼンできる時間も限られていました。準備したコンテンツは完璧にはほど遠く、「こんな当たり前の話をしても、誰も興味をもってくれないだろう」と不安でいっぱい。でも本番では、いつものように「絶対にうまくいく!とにかく楽しもう!」とポジティブアフェクトを最大化して講演に臨みました。その結果、数多くの講演の中で最優秀賞をいただいたのです。
考えてみれば、オーディエンスは行動経済学を初めて知る人たち。何十年も行動経済学を研究している私が「シンプルすぎる」と思う程度でちょうどよかったのです。Less is more(少ないほどいい)ということです。
「自分にとっての完璧」は、ほかの人にとっては「やりすぎ」のことも少なくありません。つまり「完璧」とは絶対的なものではなく、自分で勝手につくっている幻なのです。そこにこだわらず、「理想とする方向に向かって、一歩ずつ進んでいるのか」を見て、そこを認め、ほめることを忘れないでください。周囲の人のことも、自分のことも。
■著者略歴:相良奈美香(さがら・なみか)
行動経済学博士・コンサルタント。日本とマレーシアで育ち、オレゴン大学で行動経済学の修士・博士号を取得後、デューク大学でポスドクを務める。起業しサガラ・コンサルティングを設立、世界最大級のマーケリサーチの会社Ipsos行動科学センター代表などを経て、現在は米国を拠点に、ビヘイビアル・サイエンス・グループ代表として、世界各国で幅広い業界の企業に行動経済学を提供。著書『行動経済学が最強の学問である』は16万部超のベストセラーとなり、日本における行動経済学の認知度を広げる大きなきっかけとなった。
最注目の学問「行動経済学」で、
「幸せになれる仕組みづくり」!
本人も意識してないレベルの「淡い感情」をポジティブに傾けて、ストレス無く人生が好転していく“幸せになる仕組み”をまとめた一冊。「ファミレスは5秒で決める」「大きな決断はサイコロで決める」など、努力に頼らず行動が変わるコツが満載です!
『ポジティブアフェクトで幸せの仕組み化』相良奈美香:著 1,760円/主婦の友社
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