2005年のスペースシャトル・ディスカバリーの打ち上げで日本人として6番目の宇宙飛行士となった野口聡一さん。3回の宇宙飛行、4回の船外活動、2つのギネス記録など、宇宙飛行士として精力的に活動してきました。2022年に定年を前にJAXAを退職。現在、新たなキャリアをスタートさせています。
刊行された書籍『宇宙飛行士・野口聡一の着陸哲学に学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』では、野口さん自身の経験を元に、定年を前にして中高年はいかに生きるべきかが語られています。
今回はその書籍の中から、野口聡一さんが考える「定年前にゼッタイやっておくべきこと」について、詳しくお話を伺いました。
辞める前にハローワーク行くのは大切なこと
――書籍の中で、野口さんの退職について、ご家族が違和感なく受け入れていて、そこが印象深かったのですが、退職に反対されるご家族も多いかと思います。
野口 これは世代によって違いますが、我々の世代は男性がメインの働き手だったので、家計の確保という意味では継続性を持たせるのは大事なことだと思います。
それは大事なことなんだけれど、夫がある日突然会社から帰ってきて、いきなりうちの会社が倒産したと言い出すこともあるわけです。ずっと今いる会社に骨を埋めるつもりだったけど、来月でうちの会社なくなるみたいって。
ということは、転職しなくても、収入がなくなる可能性も大いにあるわけです。なので、収入の確保、生活の継続性に関しては、あくまで冷静にシミュレーションしていく必要があります。
だからこそ僕は、ファイナンシャルプランナーの話も本書に書いたんです。お金の専門家に相談するのと、辞める前にハローワークに行くのは大切なことです。
転職しようが倒産しようが、家族単位で収入を確保しなければならない
野口 家族がいる場合は、本人の意思で転職しようが、会社がいきなりつぶれようが、起こる可能性があるので、それに対する対策は打つ必要がある。
いきなり辞めますと言って、その後収入がないっていうのは、その家族という運命共同体に対しては失礼にあたります。そこは確保する必要性がある。
家族を養うという言葉は、僕はあまりいい言葉だと思いませんけど、家計を同一にして暮らしている集団がある以上、その集団が継続可能なように家計を作っていくのは、それは仕事する、しないに関わらず、責任はあります。
でもそれは家族全員で考えるべきことであって、別に男性だけが外でお金を稼ぐ必要もないし、女性だけが家にいる必要もない。逆もそうです。
入ってくる収入に応じて、子どもの教育費も含めてどれくらい使えるかっていうのはちゃんと割り振りをしないといけない。でも家庭経済の設計と、生きがいとしての職業選択は、必ずしも一致するものではありません。
ほとんどの場合にはそれを一緒にしてるから動けなくなっちゃうんです。
「収入の安定」と「会社員でいること」は実は別
――そうですね。収入とアイデンティティと出世という名のやりがいがワンセットになってる方は多いです。
野口 そうです。でも、収入をきちんと保つために、必ずしも会社員である必要はないわけです。
農業してもいいし、株をやってもいいし、やり方はいろいろあると思うので、家計が回るということと、組織人を選んだ時にやってくる、収入・アイデンティティ・モチベーション低下のこととは、厳密にはリンクしていないんです。
たとえば、今「奥さん」と呼ばれている人が働いてくれれば、それでもいいんです。でも「そんなことはありえない、自分が働かなきゃいけない」と思っちゃうので、組織人から抜けられないだけですよね。
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取材/大家 太(主婦の友社) 文/村上智基
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