私たちの身体にとって“油”は必要なもの。でも、現代の生活では摂り過ぎの油、不足している油があることをご存知ですか?
不足している油を積極的に摂ることで、より健やかな生活をめざすことができるので、「油=太る」などと思い込まずに、不足している油を上手に補っていきましょう!
現代人に不足している「オメガ3」系
油のうち、大豆や小麦、米などに含まれているリノール酸は、現代では摂取過剰といわれています。ところが、本当に必要な油は十分に摂取できていないのです。
では、本当に必要な油とはなんなのでしょうか? それは「オメガ3系の油」といわれるものです。
最近よく、「油を摂りましょう」「油で健康になりましょう」という言葉を聞きますが、その場合の「油」はオメガ3系の油を指すことが多いのです。
オメガ3系の脂肪酸で代表的なものは、DHAやEPAなどです。これは、「さば」「さんま」「まぐろ」などに含まれる脂肪酸で、一時期「頭がよくなる油」として話題になった油ですね。
DHAは脳を活性化する働きがあり、EPAは中性脂肪を低下させる働きがあります。身体に蓄積されにくい、いわゆる「太りにくい」油であるのも特徴です。
うつや不安を抑制するといわれている「オメガ3」系
オメガ3系の油には、性格を穏やかにし、うつや不安を抑える性質があるといわれています。
逆に不足すると、学習能力や認知能力の低下、集中力の低下など、脳にさまざまな影響があることが知られています。
現代の食生活では魚が食卓にのぼることが少なくなりましたが、オメガ3系の油が十分に満ち足りていた昔の日本の食生活は、健康面では理想であったといえますよね。
近年、和食が国際的に見直されているのも、こういった側面が評価されている部分もあるのではないかと思います。
魚以外で摂取するにはどうすればいいの?
とはいえ、昔の日本人のように、毎日のように魚を食べるというのは難しいですよね。家族の好みもありますし、忙しい人は魚の調理に時間をかけられないかもしれません。
それに、「魚が身体にいいことなんてわかってるよ!」と思う方も多いのではないでしょうか?
でも大丈夫! 実は、魚で摂取するのが難しい油を植物油で補う方法があるのです。
オメガ3系の脂肪酸には、α-リノレン酸というものがあります。これは体内でDHAやEPAに変化します。血液中の中性脂肪を下げ、血液をサラサラにする働きがあるほか、がんや高血圧を予防するといわれています。
このα-リノレン酸は、「えごま」「しそ」「亜麻仁油」に多く含まれますが、最近ではこれらが食用の油として市販されるようになりました。
不足するオメガ3系を摂れる市販の油
近年、オメガ3系の植物油はスーパーなどでも手軽に入手できるようになりました。食品にかけたり、ドレッシングにするだけでも摂取できるので、健康が気になる人は試してみてはいかがでしょうか?
以下が、オメガ3系植物油の特徴です!
●えごま油
<特徴>健康効果の高い油として、最近注目を浴びている油。シソ科特有のまろやかさと香りがあり、和食に合う。えごまの種子には高濃度のα-リノレン酸が含まれており、アレルギーを緩和させる働きや血栓を防ぐ働きが医学的にも注目されている。
<相性のよい食材>魚介類、肉類、野菜類、豆腐類、海藻類など
<適した利用法>生食(かける、混ぜる)
●亜麻仁油
<特徴>フラックスシードオイルとも呼ばれ、えごま油と並んで代表的なオメガ3系の油。独特の風味があるが、精製されたものにはほとんどクセがない。調理用の油のほか、サプリメントとしても販売されている。
<相性のよい食材>野菜類、種実類
<適した利用法>生食(かける、混ぜる)
●サチャインチオイル
<特徴>食感がさらっとしていて口あたりがよく、食べやすいのが特徴。食用油として利用されるようになったのは10年前からという、新しいタイプの植物油。オメガ3系の油では例外的に酸化に強く、短時間の加熱調理が可能。別名インカインチオイル。
<相性のよい食材>魚介類、野菜類、粉製品(パスタ、パン類など)
<適した利用法>生食(かける、混ぜる)、加熱(短時間炒める)
オメガ3系の油を摂るときの注意
ほとんどのオメガ3系の油は加熱すると成分が壊れやすく、せっかくの栄養素が摂取できなくなってしまいます。なので、できるだけ生で摂るのがポイントです。
炒めものの仕上げにかけまわすくらいはOKですが、サチャインチオイル以外は加熱調理には使用しないほうがよいでしょう。
また、酸化しやすいので遮光ビンで保存するのがベスト! 開封後もほかの油より劣化が早いので、開封から1~2カ月くらいで使いきるようにしましょう。
オメガ3系の油は1日小さじ一杯(4g)が摂取量の目安とされています。魚食が足りないと感じる方は、この量をサラダや豆腐などにかけて摂取するのもいいですね。
出典:『ホントによく効く油の正しい選び方・使い方』(日本文芸社)より
<監修者プロフィール>
守口徹(もりぐち・とおる)
日本脂質栄養学会副理事長。国際脂質脂肪酸学会理事。横浜市立大学卒業後、製薬会社の薬理部門に勤務。国立がんセンター研究所、東京大学薬学部に研究出向の後、同大学で博士号を取得。1997年、客員研究員として米国国立衛生研究所(NIH)で脂肪酸と脳機能に関して研究。2008年より麻布大学生命・環境科学部に奉職、現在に至る。
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