梨は秋の味覚の代表格。時季になるとスーパーなどで見かけるおなじみのフルーツですが、詳しい種類やカロリー、保存方法など、意外と知らないことも多いのではないでしょうか。
そこで今回は、梨について徹底ガイド!梨のことを深く知ると、きっと今まで以上においしく楽しめますよ。
梨の基礎知識について知りたい
梨の起源と歴史
古くから日本人に愛されてきた和梨(日本梨)は、『日本書紀』や『万葉集』にも記されるほど歴史ある果物。中国から持ち込まれた植物が起源とされ、そこからさまざまな品種が生まれたと考えられています。
日本で食べられるようになったのは弥生時代頃。栽培技術が発達した江戸時代には、なんと100以上もの品種が栽培されていたとか。明治時代には千葉県で「二十世紀」が、神奈川県で「長十郎」が発見され、20世紀前半はこの2品種がほとんどの生産量を占めていました。
さらに、2つの品種をもとに品質改良が行われ、戦後は“三水”と呼ばれる「幸水」「新水」「豊水」が登場。現在まで多くの品種の梨が誕生しています。ちなみに、全国一の和梨の産地として知られる千葉県では、約230年も前に市川市で栽培が始まったと言われています。
梨のカロリー
みずみずしさと甘さが特徴の和梨。個体の甘さによっても若干異なりますが、カロリーは100gあたり43kcalが目安。梨1個が300g、可食部が約255gとすると、1個分のカロリーは約110kcalです。また、洋梨(西洋梨)は和梨よりもカロリーがやや高く、100gあたりだいたい54kcal。1個の可食部を255gとすると138kcalです。
梨の栄養素
和梨は約90%が水分でできていますが、さまざまな栄養素も含まれています。整腸作用のあるソルビトールは、吸水作用によって便をやわらかくする働きがあります。食物繊維も入っているので、併せて便秘解消が期待できそうです。
また、体内の余分な塩分を排出してくれるため高血圧の予防にいいと言われているカリウム、体内のアンモニアを放出するほかエネルギー代謝の促進にも役立つアスパラギン酸の成分も。
さらに、和梨に含まれているプロテアーゼはタンパク質の分解酵素。消化促進の作用があり、食後に梨を食べると消化を助けてくれます。肉料理の下ごしらえに梨を使用すると肉がやわらかくなるのも、プロテアーゼのおかげです。
梨の種類について知りたい
梨は、「和梨(日本梨)」「洋梨(西洋梨)」「中国梨」の3つに分類されます。
1.和梨(日本梨)
一般的に私たちが「梨」と呼んでいるものは、シャリシャリとした歯ざわりとたっぷりの果汁が特徴の「和梨」。日本で最も多く栽培されている梨です。さらに「和梨」は黄褐色の「赤梨」系と淡黄緑色の「青梨」系に分けられ、「幸水」などの赤梨系は糖度が高いものが多く、「二十世紀」をはじめとする青梨系はすっきりした味わいが楽しめます。
2.洋梨(西洋梨)
ひょうたんのようないびつな形が個性的な「洋梨」は、ねっとりしたなめらかな口当たりと芳醇な香りが特徴。その代表的な品種が「ラ・フランス」です。
そのまま食べるのはもちろん、キャンディやゼリー、タルトなどお菓子にもよく使われています。和梨との違いは、収穫してから食べごろを迎えるまでに「追熟」させる必要があること。この「追熟」により甘さと香りが増し、やわらかくジューシーになります。
3.中国梨
日本ではあまり栽培されていない「中国梨」。頭の部分が小さくお尻が大きいその見た目は洋梨に似ていますが、主に和梨のようなシャリっとした口当たりです。追熟させると香りが増す洋梨に似た品種もあります。
梨の品種について知りたい
梨には多くの品種が存在し、それぞれに味や歯ざわり、香りなどの特徴があります。収穫時期やサイズも若干異なります。
◎幸水(こうすい)
日本では古くからメジャーな「幸水」は、「菊水」と「早生幸蔵」を交配させて生まれた品種。両方から一文字ずつ取って名前が付けられました。
和梨の中でももっとも栽培量が多く、たくさんの人に親しまれている品種です。実の大きさは平均250~300g。和梨の中では比較的硬めの実は、シャリシャリとした歯ざわりが魅力。皮の色が薄い茶色の状態のときはすっきりした味が楽しめ、少し赤みがかってくると甘みが増します。梨の中でも収穫が早く、7~9月が旬です。
◎豊水(ほうすい)
「幸水」と同じ赤梨系に属する「豊水」は、「幸水」よりも一回り大きく、300~400gが平均。中には500gになるものもあるのだとか。表面は赤梨特有のザラザラとした手触りで、果皮は少し濃い赤茶色をしています。
「幸水」に比べて果肉がやわらかく、糖度が12度以上になるものも多い甘みの強い梨です。水分もたっぷり含んでいてとてもジューシー。また、甘味だけでなく酸味もあり、調和がとれた味わいも特徴です。「幸水」の収穫が終わった8月下旬~10月に旬を迎えます。
◎二十世紀(にじゅっせいき)
「二十世紀を代表する梨になってほしい」という願いからその名が付いた「二十世紀梨」は、青梨を代表する品種。形はきれいな球状で表面はなめらか。甘さと酸味のバランスが取れており、果汁も多くジューシーです。熟してくると黄緑色だった皮が黄色になります。旬は8~10月ごろ。
◎長十郎(ちょうじゅうろう)
100年以上前に神奈川県で発見された「長十郎」は、大正から昭和の時代には多く栽培されていました。皮は茶褐色をしていて実は硬め。しっかりとした歯ごたえがあり、みずみずしくほどよい甘みを持っています。9月下旬が食べごろです。
◎新高(にいたか)
「幸水」「豊水」に次ぐ生産量を誇り、「ジャンボ梨」と言われるほどサイズが大きい品種。450~500gが平均とされており、大きいものではなんと1㎏になることもあるのだとか。甘みが強く果肉はやわらかめ。9~11月が旬です。「幸水」や「豊水」と比べて日持ちがいい梨です。
◎秋月(あきづき)
「新高」と「豊水」に「幸水」を掛け合わせて誕生した、比較的新しい品種です。秋に収穫されることと、月のように丸い形から名づけられました。平均サイズが500gと大きめで、甘みが強く水分も豊富なことから人気が高まっています。収穫時期は9月中旬~10月下旬。
▲丸みをおびた形が特徴の「秋月(あきづき)」
◎新水(しんすい)
「幸水」「豊水」とともに“三水”の一つに数えられる赤梨。サイズは250~300gとやや小ぶりながら、肉質はやわらかくたっぷりと水分を蓄えています。酸味もほどよく感じられ、バランスのいい味わいです。出荷時期は8月上旬~と、ほかの梨に比べて早いのも特徴です。
◎南水(なんすい)
「新水」と「越後」を掛け合わせ長野で誕生した品種。平均サイズは350gと中玉の部類ながら、ときには500gを超える大きいものも。「南水」の特徴は何といっても強い甘み。糖度が15度もあり酸味が少ないとあって人気上昇中の品種です。収穫は9月中旬~。貯蔵性に優れているのも魅力です。
◎愛宕(あたご)
「二十世紀」と「今村秋」を交配させて誕生したと言われる「愛宕」は、小さいものでも1㎏、大きいものになると2㎏を超える場合もある「日本一大きい梨」。シャキシャキとした果肉は水分が非常に多く、ほどよい甘さと酸味が楽しめます。食べごろは12月中旬~翌年の2月と梨の中では比較的遅く、貯蔵性にも非常に優れているため、春先まで店頭に並ぶこともあります。
◎かおり
その名の通り、香りがとても良く上品な甘さが感じられる「かおり」は、「幸水」と「新興」を掛け合わせた品種。「りんごのような香り」と例えられることもあります。平均700gとサイズが大きく、中には1㎏になるものも。青梨に属し、皮は黄緑色。熟すと黄色味がかり、甘さも増してきます。
◎新興(しんこう)
「二十世紀」と「天の川」を交配させた品種。1個400~600gと食べごたえのあるサイズ。晩生の梨で10月頃にシーズンを迎え、冬にかけて楽しめます。果肉はやわらかめ。さわやかな甘みと酸味があり、果汁もたっぷり。贈答用としても人気です。
◎ラ・フランス
フランスで生まれた「ラ・フランス」は、もともと日本で主流だった「バートレット」などの授粉用に栽培されていた品種。その後、芳醇な香りとおいしさが注目を集め、人気が高まりました。1個250~300gの重量があり、とろけるような口当たりと濃厚な風味が魅力です。また、収穫後に追熟が必要な果実で、収穫直後は黄緑色だった表皮が熟すに従い徐々に褐色へと変わっていき、実がやわらかく香りも強くなります。収穫時期は10月下旬~12月。
▲一度食べると忘れられない美味しさの「ラ・フランス」
◎ル・レクチエ
「西洋梨の貴婦人」と称されるほど、香り高く甘みの強い「ル・レクチエ」もフランス生まれの品種。栽培が難しく生産量が少ないため、「幻の西洋梨」とも言われています。大きさは350~400g程度。初めは黄緑色ですが、熟すと次第に黄色くなり、糖度16度もの甘さになります。旬は11月下旬~12月と短く、ごく限られた時期にしか出回らない貴重な品種です。
◎バートレット
見た目は「ル・レクチエ」と似ていますが、「バートレット」はイギリスで発見された西洋梨。ほどよい甘みと酸味があり、西洋梨特有のなめらかな舌ざわりが楽しめます。また、果肉がわりと硬めで型崩れしにくいことから、日本では昔から缶詰などの加工用としても栽培されてきました。8月下旬~9月中旬に収穫時期を迎える早生種です。
おいしい梨の選び方が知りたい
店頭に並んだたくさんの梨。せっかく買うなら、おいしいものを選びたいですよね。どこを見て選べばおいしい梨が手に入るのか、そのポイントをご紹介します。
1.「形」は“お尻がふっくら”を選ぶべし
梨はお尻の方にいくにつれ甘さが強くなる特徴があります。そのため、お尻がふっくらとしたものを選べば、甘みのある部分が多く楽しめます。
2.「皮」が“パンと張っている”なら買い!
「張り」また、皮にパンとした張りがあり、持ったときにずっしりとした重みを感じる梨もおいしい証。重いものほど水分を豊富に含んでいて果肉も詰まっています。逆に、実に張りがなくやわらかくなっているものは、日にちが経っている可能性大。サイズは大きいものほど味がいいと言われています。
さらに、果皮に色むらがなくて軸がしっかりとしているものを選ぶといいでしょう。青梨は黄緑色のときは新鮮でみずみずしく、黄色になると甘味が増してやわらかくなります。ただ、和梨は追熟しないので、食べごろを逃さないように注意を。
3.「表面」が“ザラザラ”はおいしさのサイン
和梨の表面を触るとザラザラとしていますが、これこそがみずみずしさを判断するのに重要なポイント。このザラザラを「果点コルク」と言い、水分を閉じ込める栓の役目をしています。日にちが経つにつれザラザラがツルツルになっていくので、鮮度の見極めにもなりますよ。
また、洋梨は見た目がごつごつといびつですが、大きさや形は味にあまり影響しません。傷がついていないものや、やわらかくなっている部分がないものを選びましょう。熟しきっていないものは追熟させる必要があります。
オススメの梨狩りスポットが知りたい
水分をたっぷり含んだもぎたての梨を手に入れるなら梨狩りがベスト!梨の生産地では梨狩りを行っている果樹園が多く、旬を迎えると多くの人でにぎわいます。数ある梨狩りスポットの中から、オススメの果樹園をご紹介します。
●芝口果樹園
神奈川県横浜市にある果樹園で、8~9月の期間中、幸水、豊水、あきづき、南水などさまざまな品種の梨狩りが楽しめます。料金は品種と収穫量によって異なるので事前に確認を。必要な道具はすべて貸し出してくれ、収穫の仕方はスタッフが丁寧に教えてくれるので、梨狩り初心者でも安心です。
神奈川県横浜市戸塚区影取町146
☎045-852-1445
http://www.s-kajuen.com/
●初清園
豊水、新高の梨狩り体験ができる千葉県の果樹園。シーズンは8月下旬~10月上旬です。予約不要で体験でき、小学生以上は1,000円、3歳以上の未就学児は600円。時間無制限・食べ放題です。梨狩りと一緒にBBQも楽しむことができます。
千葉県松戸市串崎新田215
☎047-386-7012
https://nasigari.com/
梨の保存方法が知りたい
梨は日持ちがしにくいフルーツ。おいしく食べられる賞味期限は、常温で3~4日程度です。なるべく早く食べきるのが一番ですが、少しでも美味しい状態を長持ちさせるための保存方法についてご紹介します。
手をつけていない状態の梨
そのままの梨の場合は、常温保存が可能です。常温とはいえ、室温が高い場所での保存はNG。冷暗所での保存が絶対です。常温保存をする場合は、できるだけ水分が失われるのを防ぐために新聞紙やキッチンペーパーで1個ずつ包み、さらにビニール袋やジッパーバッグに入れてから冷暗所へ。
常温よりも冷蔵庫保存の方が長持ちしますが、冷蔵庫内の乾燥による水分の損失を防ぐために、新聞紙やキッチンペーパーで1個ずつ包んだあと、ラップでくるんで野菜室で保存するのがオススメです。その際、ヘタの方を下にして置くのがポイント。梨はヘタから酸素を取り入れて呼吸をしています。ヘタを下にして呼吸を止めることで酸化を抑えることができます。
切った後の梨
カットした後は傷みやすいため、冷蔵庫保存が必須です。梨の場合は切ってしまうとすぐに酸化が進んでしまい、味も大きく落ちてしまいます。そのため、酸化を防ぐ下処理が重要。切った梨を砂糖水や塩水、レモン水に一度つけ、できるだけ空気に触れないように酸化止めをします。水につけた梨はラップに包んでジッパーバッグやタッパーなどの密閉容器に入れてから冷蔵庫で保存してください。
食べきれなかった場合は、冷凍保存するという方法もありますが、冷凍することによって梨特有のシャリシャリとした食感やジューシーさはなくなります。ただし、シャーベットやコンポートなどにするととても美味しく味わうことができます。
西洋梨の追熟方法と食べごろの見極め方
洋梨を購入した時点で実が硬い場合は、まだ食べごろを迎えていないという証し。おいしく味わうために追熟させる必要があります。洋梨を上手に追熟させるには、紙袋などに入れて15~20度の室内で保存を。たくさんある場合は食べる分だけを追熟させ、残りは温度が低い場所に置いて少しずつ完熟させるのがベストです。
品種にもよりますが、軸の周りを軽く押してみてやわらかくなっていたら食べごろのサイン。ラ・フランスやル・レクチエの場合は、やわらかくなると同時に熟すと香りが強くなります。
食べごろを迎えた洋梨はビニール袋などに入れて冷蔵庫へ。ただし、完熟した洋梨は早めに食べきるのが鉄則。完熟した洋梨を冷蔵庫で長期保存をすると、洋梨自体から出るエチレンガスによって逆に傷みを早めてしまいます。
また、洋梨を冷凍で保存する場合は、カットしたものをレモン汁に絡めて変色を防いだ後、バットや密閉容器などに並べてから冷凍庫へ。冷凍した洋梨はシャーベットのように楽しむことができますよ。
まとめ
パリッとしていてシャリシャリの食感がたまらない和梨、ねっとりした舌ざわりと芳醇な香りが広がる洋梨。どちらも秋になると食べたくなるフルーツです。少しずつ収穫時期を変えながらたくさんの種類が出回るので、食べ比べをしても楽しいですね。
文/関東博子
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