スズキ(鱸)は淡白な味わいの白身魚で、和風でも洋風でも美味しく使い勝手の良い魚です。特に旬の時期は脂が乗り、上品ながら濃い旨みがたまりません。
スズキを食べるなら旬は必ず押さえたいもの。この記事ではエリアによって異なるスズキの旬や特徴、家庭で簡単にできる美味しいレシピを紹介します。
スズキの旬の季節
「冬のヒラメ、春の真鯛、夏のスズキ」というように、スズキは夏を旬とする白身魚です。スズキのよく獲れる東京湾近郊や瀬戸内海でも、夏の6~8月がもっとも美味しい季節とされます。
夏のスズキは冬の産卵に向けエサをたくさん食べるので脂が乗っており、淡泊な旨みと独特の風味が絶品です。ただし、スズキは通年全国的に獲れているので、地域によって旬の時期は多少差があります。
また、冬の産卵期に水揚げされる「腹太(ハラブト)」とよばれるスズキも、脂乗りがよく人気があります。これは、産卵に備えて栄養を蓄えながら、まだ繁殖を終えていないスズキのことです。繁殖前なので真子(卵)や白子を持っており、夏とはまた違う成熟した味わいがあります。
スズキの産卵に適した温度は15℃前後です。そのため、西日本では11~3月、水温の低い東北などでは12~2月と地域によって主な産卵期は異なります。
腹太スズキを食べるなら、この時期より少し早くを狙うといいですね。産卵を終えた春のスズキは、身が瘦せて旨みが少なく、味が落ちるのであまりおすすめできません。
スズキの産地
スズキの漁獲地は全国に渡っており、有名な産地は東京湾近郊や関西地方などです。ここではスズキの主な産地と、それぞれの特徴を紹介します。
千葉県・船橋
千葉県は、スズキの漁獲量全国トップを誇る都道府県です。2021年の千葉県の「すずき類」漁獲量は1,495tで、これは全国の約25%を占めています。千葉県のスズキの多くは底引き網やまき網を使って東京湾で漁獲され、そのほとんどが船橋漁港に水揚げされます。
船橋漁港でのスズキ漁の特徴は、厳選された良質なスズキに「瞬〆」を行うこと。「瞬〆」とは、スズキに極力ストレスを与えないよう血と神経を抜く独自の手法です。これにより、濃い旨みとプリッとした食感をキープできます。
この手法により「船橋の瞬〆スズキ」は「千葉ブランド水産物認定品」に指定されました。普通のスズキより3割ほど高価ですが、ミシュラン掲載のレストランから指名買いされるほどの人気です。
産卵期の11月は未来のスズキを守るため漁を控えるなど、サステナブルな漁業を行うことも船橋漁港の特徴。漁獲量が多いからこその、高い環境意識がうかがえます。
関西地方
関西地方のスズキが水揚げされるのは、主に大阪湾近郊です。大阪府にある「八尾市山賀遺跡」からは数千年前のスズキの骨が出土しており、太古から大阪湾に生息していたことが分かっています。
大阪湾は海中の栄養が豊富で、スズキの数が多いだけでなく成長も早いのが特徴です。2021年の「すずき類」漁獲量は兵庫県678t、大阪府184tとなっており、大阪湾を囲む都道府県でよく獲れていることが分かります。
大阪湾のスズキの産卵期は12~1月頃です。沖合で孵化した稚魚は全長1.5cmほどになる3月頃沿岸に移動し、その後1年で20cm以上にまで成長します。大阪湾ではこうしたスズキの生態に沿い、沿岸や沖合で漁法を変えて高い漁獲量をキープしています。
成長が早いため大ぶりながら、味わいは繊細なのが大阪湾のスズキの特徴。1m以上のスズキもよく獲れるため、沿岸でのルアーフィッシングも盛んです。
島根県・宍道湖
島根県は「すずき類」の漁獲量が年間150t以上ある、日本有数のスズキの産地です。なかでも水揚げ地として有名なのは、島根県東部の湖「宍道湖(しんじこ)」。宍道湖は国内7番目に大きい湖で、淡水と海水が混ざる「汽水湖」として知られます。
海のイメージが強いスズキですが、実は季節によって住処を変えており汽水でも生息可能です。近海のスズキは川を遡上し、6月から秋頃までは宍道湖で生活しています。海水魚や淡水魚などが100種以上いる宍道湖は、スズキにも適した豊かな環境です。
そんな宍道湖ならではのグルメが、スズキを和紙に包んで蒸し焼きにした「スズキの奉書焼(ほうしょやき)」。余分な脂を和紙が吸い取るため、スズキの繊細な味わいが引き立ちます。少し焼けた和紙の香ばしさが身に移り、芳醇な香りも楽しめるひと品です。
(参考:e-Stat 政府統計の総合窓口/海面漁業生産統計調査)
スズキの特徴
ここでは、スズキのユニークな特徴や似ている魚との見分け方、気になる栄養などスズキの基礎知識を紹介します。
スズキは出世魚
稚魚から成長するにしたがい名前が変わる魚のことを「出世魚」といいます。有名な出世魚には「ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」と呼び名を変えていくブリがありますね。ちなみに、出世魚の呼び名は地方によって異なることが多く、スズキの呼び名にも正式な定義はありません。
関東での例を挙げると、5cm前後まで成長した幼魚は「コッパ」と呼ばれます。そこから1、2年成長した20〜30cm程度のものは「セイゴ」、2、3年成長した40〜60cm程度のものは「フッコ」です。
4年以上成長し、60cmを超えるとようやく「スズキ」と呼ばれるようになります。通が「美味しい」と好むのはフッコが多いようです。スズキを購入するときは、ぜひサイズもチェックしてみてください。
スズキとヒラスズキの違い
スズキと似た魚に「ヒラスズキ」があります。スズキの呼び名のひとつと勘違いしそうですが、ヒラスズキは見た目も味も、旬の時期もスズキとは違う魚なんです。ここでは、スズキとヒラスズキの違いについて紹介します。
見た目の違い
スズキとヒラスズキの形を比べると、スズキがシュッと細長い楕円なのに対し、ヒラスズキは少しずんぐりしています。スズキは頭から背中にかけてのラインがなだらかですが、ヒラスズキは背中がグッと膨らむようなラインです。
ヒラスズキは腹鰭の付け根から背中までの「体高」がスズキよりあり、平らな体型です。体長の平均値は、スズキの方がヒラスズキよりやや大きいといわれます。
味の違い
スズキもヒラスズキも淡白な味わいの白身魚ですが、スズキは歯ごたえがやや柔らかく、適度な旨みがあるのが特徴です。身がとても傷みやすいため、生で食べるのは獲れた当日が良いでしょう。
一方ヒラスズキは歯ごたえと旨みが強く、上品な脂のコクを感じる味わい。臭みがなくスズキよりも傷みにくいので、2日ほど寝かせても刺身や洗いで食べられます。
旬の時期の違い
スズキの旬は夏と述べましたが、ヒラスズキは秋の終わりから冬が旬です。ヒラスズキの産卵期はスズキより遅いため、産卵を控えて脂の乗った一番美味しい時期も遅くなります。
白身魚を購入するなら、夏はスズキ、晩秋から冬はヒラスズキを選ぶのがおすすめです。
スズキの栄養
スズキはビタミンやミネラルが豊富で、主に皮膚や骨、血管の健康を助ける成分が目立ちます。主な栄養素は以下のようなものです。
- ビタミンA 皮膚や鼻・喉などの粘膜、目の健康を助ける
- ビタミンD カルシウムを吸収しやすくし、骨の形成を助ける
- ビタミンE 血行促進を促し、血管の健康を助ける
- ビタミンB2 タンパク質・糖質・脂質の代謝を促し、皮膚や粘膜の健康を助ける
- ビタミンB6 タンパク質の代謝を促し、赤血球のヘモグロビンの合成にも役立つ
- カリウム 体内の塩分濃度をコントロールし、血圧を下げることに役立つ
熱に強い脂溶性のビタミンも多いので、加熱料理でもしっかり栄養を摂れるのが嬉しいですね。
スズキの美味しい調理法
ここでは、家庭でも作れるスズキの簡単レシピを紹介します。いろいろな調理法があるので、ぜひ毎日の食卓に役立ててください。
スズキの刺身
新鮮なスズキが手に入ったら、ぜひ刺身にして食べてみましょう。スズキの持ち味である独特な風味や繊細な味が引き立つ食べ方です。刺身を少し白くなるまで氷水につけ水気を切る「洗い」もおすすめ。身の弾力が増してすっきりした味わいになります。
スズキのマリネ
少しクセのあるスズキもマリネ液に漬けると爽やかにいただけます。カラフルな野菜を合わせると、おもてなしにも使える華やかな料理になりますよ。スズキのしっとりした食感と野菜のシャキシャキ感も良いコントラストです。
暮らしのスパイスさんのアイデア
【レシピ】スズキとアボカドのマリネ
材料 : スズキ / ニンニク / 塩 / コショウ / パクチー / ライム果汁 / 赤玉ねぎ / ミニトマト / キュウリ / アボガド / オリーブオイル / 材料【アボガドソース】 / アボガド / パクチー / 水 / オリーブオイル / 塩 / コリアンダー / ライムの果汁 / ニンニク / コショウ
今回紹介するのは、ソースにも具材にもアボカドや野菜をつかった、栄養満点なマリネのレシピです!
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スズキの蒸し焼き
和風の調味料で作るスズキの蒸し焼きです。美味しさのポイントは、事前に下ごしらえで魚臭さをしっかり除くこと。優しい味付けでスズキの上品な旨みが引き立ちます。加熱はオーブン任せでいいのも嬉しいですね。
栄養士まみさんのアイデア
デトックス効果☆スズキとしめじの酒粕だれ蒸し焼き
材料 : スズキ(生) / ♦塩・胡椒 / ♦酒 / ♦酒粕 / ☆酒粕 / ☆みりん / ☆白だし / ☆にんにく / しめじ / 玉ねぎ / にんじん
酒粕に色んな効果があるって知ってますか?
嬉しい効果がいっぱいありますよ!
そんな酒粕を使って、ふっくら蒸し焼きレシピのご紹介♪
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スズキの昆布締め
ぜひスズキで作ってほしい、白身魚の昆布締めレシピです。材料を昆布に挟んで一晩置くだけなので、料理初心者でも簡単にできますよ。盛るだけでサッと出せて、おもてなしのメニューとしても便利です。
ねこじゃらしさんのアイデア
お正月に鯛の昆布〆
材料 : 白身の刺身(鯛、スズキ、ヒラメ)等 / 板昆布 / 生姜、柚子 / 日本酒
お刺身に少しだけ手を加えるだけで
お客様料理になります
白身のお刺身でぜひやってみたください♪
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スズキの旬を知って美味しく食べよう
スズキの旬は夏。真子や白子を抱えた「腹太スズキ」なら冬の産卵前が旬の時期です。旬は身に脂が乗り旨みも多いので、この一番美味しい時期を逃さないようにしたいですね。産地によって旬は異なるので、魚屋さんなどに聞いてみるのがおすすめです。
料理のときは新鮮なスズキを使うことと、きちんと魚臭さを取ることがコツ。ぜひ、暮らしニスタに毎日投稿されるレシピも活用し、スズキ料理を楽しんでくださいね。
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