挨拶など日常のシーンだけでなく、論文やレポートなど文章を書くときでもよく使われる「始め」と「初め」。しかし、漢字が一文字しか違わないので、意味の違いをはっきりと言える人は意外に多くないのではないでしょうか。
本記事では、「始め」と「初め」の意味の違いや例文を交えた使い方、英語表現まで徹底解説。少しややこしいポイントもありますが、マスターしておけばどんなシーンでも迷うことなく2つの言葉を使い分けられますよ。
「始め」と「初め」の意味
まずは「始め」と「初め」の意味について学びましょう。2つの言葉は使う場面が意外と多く、いざ文章を書こうとしたときに「あれ?どっちだったっけ?」と迷う方も多いと思います。しかし、ひらがなで書くと同じでも、その意味はまったく異なります。
ここでは、それぞれの意味を紹介したあとに使い分けるポイントもご紹介します。意味だけでなく、使い分けるポイントまでセットで覚えておくと、いざという時に役立ちますよ。
「始め」の意味
- 1 はじめること。また、はじめた時期。「勤め―」「タバコの吸い―」⇔終わり。
- 2 物事の起こり。起源。「国の―」
- 6 一部始終。事の次第。「御無心ながら乳を少し貰ひましょ、と―を語れば」〈浮・一代男・一〉
出典:コトバンク
「始め」は、開始、着手などの始まりを意味します。そのため、ある時から新たに行動したり、物事が起こったりするような意味合いを持ちます。物事を新しく行うようなときや、これから行うことを表すので、試験開始の号令では「用意、始め」などと使われることもあります。
また、「始め」の対義語は「終わり」です。慣用句では、「最初が順調ならば、最後まで上手くいく」という意味合いを持つ、「始め良ければ終わりよし」があります。
「初め」の意味
- 3 物事を行う最も早い時期。最初のころ。副詞的にも用いる。「五月の―」「何をするにも―が肝心だ」「―から終わりまで読み通す」「―君だとは気づかなかった」
- 4 順序のいちばん先。序列の第一。「―の話のほうがおもしろい」
- 5 (「…をはじめ」「…をはじめとして」の形で用いる)多くの中で、主となるもの。また、先に立つもの。「校長を―、教師全員」「米を―として食品の多くが」
出典:コトバンク
「初め」は、時間や時期などが「早い」ことのほか、最初や初期の段階を表します。「月初」「列の初め」のように使われるため、「一番目」や「冒頭」などの意味として使われます。
慣用句やことわざでは、物事を始めるときの謙虚な気持ちを忘れてはいけない、という意味で「初心忘るべからず」、負け続けた力士が初めて勝つ、という意味で「初日が出る」があります。
使い分けるポイントは「最初」か、「始めること」か
使い分けに迷ったら、それが「最初」なのか「始めること」なのかを考えると分かりやすくなります。
例えば、年度「はじめ」ならば、年度の最初を言っているので「初め」になりますし、「仕事」はじめならば、仕事を始めることを言っているので「始め」になります。
ただし、どうしても迷いやすい言葉もあります。例えば、「はじめ」の一歩や、~を「はじめ」とする、まず「はじめに」、などの場合です。しかし、上記のような迷いやすい言葉の場合は、ひらがなでも誤用にはなりません。
ちなみに、「はじめ」の一歩は最初の一歩なので「初め」、~を「はじめ」とするは「いくつかの選択肢の中で特定の人やものを目立たせたい」状況で使用するので「始め」を使いますが、まず「はじめに」の場合は、始め・初めどちらも使われます。
例えば、まずはじめにやることは~など、物事の手順を説明する場合の漢字は「始め」、まずはじめにゴールしたのは~など、「最初に」の意味で使うときの漢字は「初め」を使います。
「はじめまして」はどっち?
実は、挨拶するときや文章でよく使う「はじめまして」は、始め・初めどちらも使われます。
現に、新明解国語辞典(1997年度版)では、「初めてお目にかかります」とする最初の挨拶の言葉として、「始めまして」と記載しています。そのため、どちらを使っても間違いではないのです。
ただし、先述したように「はじめまして」は「初めてお目にかかります」という意味合いがあるので、現代では「初めまして」、もしくは「はじめまして」とひらがなも使われるのが一般的です。
「始め」と「初め」の例文
意味を学んだら、例文をチェックしましょう。例文をチェックしておくと、実際どんな風に使えばいいか分かりやすくなります。
また、言葉はアウトプットすることで頭にインプットされるので、例文をチェックしたらまずは日常生活で使ってみましょう。ここでは、それぞれの例文を5つ紹介し、解説も行うのでぜひ確認してください。
「始め」の例文
「始め」の例文は以下の5つです。
- ①人類の始まりにまつわる3つの伝説を紹介する
- ②この間仕事納めを迎えたと思ったら、もう仕事始めだ
- ③20世紀の始まりは1901年1月1日だといわれている
- ④年度始めは書類の整理から行う
- ⑤この度、新事業を始めることになりました
特に④は、「年度の最初だから、年度初め?」と考える方も多いかもしれませんが、正解は「年度が始まる」という意味です。ですから、「年度始め」が適切です。
「初め」の例文
「初め」の例文は以下の5つです。
- ①お正月の書き初めは、何を書こうかな
- ②新年はまず初めに書類の整理から行うのが社内のルールだ
- ③月の初めに目標を立てて、週の初めに達成できているか確認する
- ④日本で一番初めにラーメンを食べたのは誰だろう
- ⑤人生は経験して初めて分かることばかりだ
なかでも、②は「新年、最初にすること」を表しており、新年のはじまりを表している文章ではありません。ちなみに、新年は「新しい年」を意味し、新年のはじまりは「年始」と言います。
「始め」と「初め」の言い換え
「始め」と「初め」は、さまざまな言葉に言い換えやすいのが特徴。そのため、言い換えや類語を知っておくと、表現の幅が広がるのでおすすめです。
また、言い換えや類語を知っていると、漢字で迷った場合でもすぐに言い換えることができますし、むしろ言い換えたほうがかえって文章が分かりやすくなる場合もあります。ここでは、それぞれの言い換えを5つ紹介しますので、ぜひ使ってくださいね。
「始め」の言い換え
「始め」の言い換え表現は以下です。
- 滑出し、第一歩、出出し、入、出々し、始り、序開、発端、入り、原初、水端、入りぐち、冒頭、入り口、滑り出し、初っ端、滑りだし、スタート、嚆矢、最初、出だし、入口、始まり、序開き など
出典:weblio
上記の言葉を使って言い換えるとするならば、
- 試合開始直後は快調だった→ 今回の試合は快調な滑り出しだった
- この本は文の始まりがとてもいい→ この本の出だしはとてもいい
などがあります。言い換えると文章そのものがコンパクトになり、かえって分かりやすくなる場合が多いので、場面に合わせて適宜言い換えてみてくださいね。
「初め」の言い換え
初めの言い換え表現は以下です。
- 起首、幕開き、出出し、出々し、幕開、始り、序開、発端、起こり、幕開け、起り、水端、源流、濫觴、起原、源、振りだし、冒頭、振出、権輿、事端、起源、振出し、振り出し、芽出し、幕明、初口、芽出、元始、最初、出だし、幕明き、始まり、序開き など
出典:weblio
上記の言葉を使って言い換えるとするならば、
- 日本で初めて登場した寿司は「なれずし」というものだ→ 寿司の起源は、東南アジアの「なれずし」という発酵食品だ
- 初めに口を開いたのはあいつだ→ 最初に口を開いたのはあいつだ
などがあります。言い換えの多くは前後の文を調整する必要がありますが、調整することで、読み手を惹きつけるようなレベルの高い文章に仕上がりますよ。
「始め」と「初め」の英語表現
「始め」の英語表現は「start(スタート)」「begin(ビギン)」がメインで使われます。物事を始めるときに使われるので、英語表現の場合でもその意味合いがあります。
一方、「初め」の英語表現は「beginning(ビギニング)」「start(スタート)」「first(ファースト)」「origin(オリジン)」「source(ソース)」「root(ルート)」「rootage(ルーテージ)」など、さまざまです。
「初め」は「 始め」とまったく同じ表現がありつつも、「first」や「source」などほかの表現もあります。
なかでも、「root」は「根」という意味があり、複数形にすると「起源」「祖先」といった意味になります。日本語でも「縄文人のルーツは〜」などとよく使われます。
まとめ
今回は、「始め」と「初め」の違いについて解説しました。意味や例文、言い換え表現を見てみると、意外と知らなかったことが多かったのではないでしょうか。
言葉を学ぶには意味だけでなく、さまざまな角度から確認することでより学びが深まります。学びが深まると忘れにくいですし、日常生活やビジネスシーンでアウトプットしたくなりますよ。ぜひ、今回の学びを初めに、さまざまな言葉を学んでいきましょう。
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