冒頭で、「どどっと勢いよく注湯すると、えぐみや雑味成分が抽出されやすくなる」と申し上げました。
試しに、ドリップしたあとの残りかすの粉にお湯を注ぎ、口に含んでみてください。
とにかく苦くて、イヤな味が残りますよね。その味は、うがいを繰り返しても、なかなかとれないくらいです。
それがここでいう、「えぐみ」であり、「雑味」です。そうした成分を抽出しない工夫のひとつが、細口によって「細く静かに注ぐこと」なのです。
このコーヒーポットなどは細注ぎに向いています(カリタ ドリップポット 600S)。細口なうえに注ぎ口の傾斜が緩く、微妙な注湯コントロールができる点もメリット。
[カリタ ドリップポット 600S]
ただしこれの場合、蓋の真上まで伸びたハンドルが金属製です。直火はもちろん、ほかで沸かしたお湯を移し替えても、じきに熱くて持てなくなります。持ち手にシリコンなどの耐熱カバーをつけるといった工夫が必要に。
注ぎ口の細い口細(くちぼそ)コーヒーポットを選ぶだけで、静かに注げるようになり、コーヒーはぐっとおいしくなります。しかしさらにもう一段、裏技があるのです。その方法をご紹介しましょう。
それが冒頭で出ていた画像の、【万力=バイス】を使う方法です。ポットの注ぎ口を万力で少し潰して細口にし、さらに細く注ぐ加工を施すのです。
といっても、コーヒーポットも安いものではありません。適当に加工して、使い物にならなくなったらショックですよね。実は私も、これまで5個も失敗してきました(涙)
以下は苦い経験をもとにした、失敗の少ない加工法です!
それでは、どんなバイス(万力)を選べばよいのでしょう? かなりのDIY好きか、ご職業がそういう方でもない限り、バイスのあるご家庭は少ないでしょう。新調するにしても、ポットの加工だけに使うなら、なるべく安く済ませたいですよね。
私ははじめ、ネット通販で1,000円ほどの安価なバイスを買ってみました。しかし、安い商品のほとんどはアルミ合金製。今回のような、硬いステンレス鋼の加工には向かないようです。バイスの挟み口は注ぎ口の硬さに負け、ゆがんでしまいました。
向かない例:アルミ製ホビーバイス
結局、買い直したのがこちら。写真のバイスはどっしりと重い鋳鉄製で、かつ一番安価な部類です。
価格は記事作成時で2,000円台。
[trad ホームバイス90mm THV-90]
(三共コーポレーション)
本来は作業台の天板などに、ボルトで固定する使い方のようです。でも鋳鉄なので重量が4.8kgも。今回の加工程度なら、わざわざ天板に穴を空けるなどの固定は必要ありません。ベランダなどに置き、注ぎ口を慎重に挟み、様子を見ながらゆっくりと締め付ければOKです。
ただし、挟み方にはちょっとした工夫が必要です!
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・バイスは2,000円程度の入門版でじゅうぶん。
・ただし、安くてもアルミ製は避けて。
・鋳鉄製のものがベター。
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バイス(万力)で挟む箇所にも、すこし注意が必要です。
まず、失敗例の画像をご覧ください。深く考えずにグイグイ締め上げたところ中央部がくっついてしまい、「単に水が出にくいポット」になってしまいました。
実はこの失敗例は、上でご紹介したカリタのコーヒーポットのなれの果てです。購入したばかりの新品ホヤホヤが、あっという間におシャカになってしまいました。
残念ながら自分のスキルではどうやっても元に戻せず。ああもったいない…
新品のカリタのコーヒーポットをダメにしてしまい、とりあえず別のポットを購入しました。実は昔、価格だけで選んで使っていたものですが、値段の割に品質は高く満足できるものだったこともあり。
価格は2,000円前後と、上でご紹介したカリタの約半分。そして、下のリンク先のAmazonレビューでも高評価なようです。
[フィーノ コーヒードリップポット 1.2L]
(竹井器物製作所)
さて、バイスの締め方について、具体的にご説明します。
目的は「お湯を細く静かに注ぐこと」であり、そのためには注ぎ口の先端を、鳥のくちばしのように尖らせることが大切です。
これはわが家のオカメインコ。このくちばしはあまり参考になりません(笑)
というわけで、わかりやすいように図を作ってみました。
1から3にかけて、バイスの口金を挟む位置を矢印で示しています。最初は楕円の中央あたりで締め、挟む部分を徐々に先端方面にずらし、細く尖らせていきます。
これが完成形。お湯の流れを妨げず、それでいて細く垂らすことができます。
ただし、もう少し中央の締め込みを弱くした方がよかったかなとの反省もあります。ご自分で試す際は「先端のみを尖らせる」ことを念頭に実施してください。
成功すれば、これまでよりもさらに細く、透明な数珠かビーズでも連ねたような水流を繰り出せるようになります。
ぜひ試してみてください! ほんとうに、これでコーヒーの味は格段においしくなります!
今回ご紹介した万力で締め付けるというアイディアは、ほかで見たことがありません。しかし、「ハンマーで潰す」加工法はかなりポピュラーで、コーヒー通にはそこそこ知られたテクニックです。
私自身、コーヒーの先生と私淑する方がユキワ製のコーヒーポットをハンマーで加工しているのを知ってから、長い試行錯誤を始めた次第です。
しかし、私としてはハンマーを使うことはあまりおすすめしません。考えなしにやると、万力よりもさらに失敗の可能性が高いためです。このやり方で何個も使い物にならなくした経験があります…
ハンマーでひっぱたくうちにポットが転がり、床をへこませてしまったり。あるいは注ぎ口全体が微妙に湾曲した結果、ポット本体との接合部がゆがみ、隙間から水漏れするようになったり…。
ハンマーを使うなら,固定用の治具を整え、きっちり加工する環境を作る必要がありそうです。
そんなことをするくらいなら、はじめからバイス(万力)を使った方が失敗がなく、おすすめできます。
[2016年7月1日追記]
これまで多くのポットで試行錯誤してきましたが、上の記事を書いてから、こうした加工そのものが不要な商品に落ち着いています。タカヒロというメーカーの【コーヒー ドリップポット 雫】です。
名前に「雫」タイプと通常タイプの2種類がありますが、この「雫」タイプがおすすめ。とにかく細注ぎに特化していて、一滴ずつきれいに落とせるのです。これを選んでからは他が使えなくなってしまいました。
ただし、お値段も約2万円と究極!?
コーヒードリップ 雫(タカヒロ)
このポットの唯一の難点は、蓋のつまみも把手も金属ということ。
直火で使えますが、ヤカンで沸騰させたお湯を移し替えた場合でも、注湯中に熱くて持てなくなってしまいます。
そこで私は把手と蓋のつまみにシリコンテープをグルグル巻いています。見た目はいまひとつですが、実用性は十分です。
・使ったのは「レスキューテープ 絶縁シリコンテープ」
※余談ですが、牛革製のハンドルをつけるなどした別注バージョンもあるようです。これこそほんとうの究極版ですね。
【カスタム版】タカヒロ コーヒードリップ雫
http://www.0141coffee.com/dorip/takahirooffset.html
それにしてもこの記事、コーヒーがテーマなのに、それらしい画像が1枚もありませんでした…
まとめです。
コーヒーポットは「注ぎ口全体が細いこと」が最重要。
そして、注ぎ口を万力で細口に加工すれば完璧。締める際は少しずつ慎重に、注ぎ口の先端だけを尖らせることを目標にします。
加工を省きたい方には、高価ですが細注ぎの最高峰といえるコーヒーポットをおすすめします。
「コーヒードリップポット 雫」(タカヒロ) 0.9ℓ
この「雫」を万力加工すれば、さらに凄いかも…ただし手軽に試せる価格ではなく、私は怖くて試せていません(笑)
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