回転台を使ってコーヒーを淹れる。
かなり突飛ですが、発想の原点は「均等抽出の実現」という考え方でした。
たとえば、コーヒーミルの必須条件は
「粉末の粒度を均等にし、微粉を出さないこと」。
複数台のコーヒーミルを実際にテストして、そのことがわかりました。
ドリッパーの回転を担うのは「単式スラスト玉軸受」という種類のベアリングです。
すでに、コーヒーサーバーもさまざまな検討の結果「持ち手のない200ccビーカー」が最適と判断していました。
それに合うベアリングを探した結果、ビーカーを載せたうえで指をかけて回せる余裕もあるサイズとして、外径85mmのベアリング(写真中央)に決定しました。
※具体的な入手先は末尾にまとめて記載しています
工業製品であるベアリングは精度抜群。
快感を覚えるほど、なめらかに動いてくれます。
しかし、ほんらいは潤滑油のなかで動く設計。防水ではありません。
まんべんなくオイルをつけたつもりでも、水滴が少しついただけで、サビが浮いてきます。
とはいえ、水場で潤滑油まみれにするのも抵抗があります。
ある程度水を防げるよう、なんらかのケースに収めることにしました。
当初は防錆性を優先して、ステンレスのシャーレに入れてみました。
(上部の黒い輪は、コーヒーサーバー固定用のOリングです)
これはこれでシンプルできれいですが…
ベアリングを使っていることが外からは見えず、単なる金属ケースです(笑)
しかもベアリングとステンレスシャーレの回転軸がわずかでもずれると、金属同士が干渉して動きません。
結局、中が見えて回転軸の調整がしやすい、透明のケースを使うことにしました。
85mm径のベアリングを収めるために、内側の直径が85.7mm(誤差±0.2mm)という、ちょうどいいサイズのシャーレがありました。
それも10個で120円と、かなり安価な製品。
本来は使い捨て型のプラスチック製なので、手触りなどはペコペコとしていまひとつ。
ですが、飛沫よけには最適なので採用しました。
ただし、そのままではベアリングを収める高さが足りません(写真左上)。
シャーレの底蓋同士を向かい合わせにしてみました(写真左下)。
シャーレへの固定、そして高さの調整用に、上下にクッションゴムを貼ります。
貼るときは、表面の油を拭き取る必要がありますが、それ以外のところは拭き取らないでください。
錆び止めと潤滑を目的とした油なので、拭き取ってしまうとなめらかに回転しなくなるうえ、あっという間に錆びてしまいます。
錆びてきた場合は早めに潤滑用のグリースをたっぷり塗り込みます。
貼りつけるクッションゴムの厚みには配慮が必要です。
シャーレは底蓋同士を向かい合わせに載せているだけなので、高さが足りないとフタ同士が干渉し、回転しないのです。
かといってクッションが分厚すぎると、今度は上下の隙間が広がり水滴が入りやすくなります。
理想は1mm未満の隙間。(写真参照)
その隙間を出すため、クッションシールの厚みを計算します。
写真の作例でいうと、
・ベアリングは高さ17mm
・シャーレ内部の高さは25.6mm(±0.2)
※プラ材の厚みを含む
上下に貼り付けるクッションの厚みは
25.6-17=8.6 合計8.6mm以上必要。
なのでクッションゴムは
・Φ9.5mm × 3.8mm
・Φ11.2mm × 5.1mm
という2種類を上下で使いわけ、2種類で8.9mm厚になるようにしました。
また、ケースの底面にも滑り止めとして4枚クッションゴムを貼りつけます。
こちらは厚みの制限はとくにありません。
余ったものを適宜使います。
ベアリングの上下8個のクッションゴムの先端に、接着剤を塗ってシャーレ内側に接着します。
このとき、ベアリングは正確にシャーレと同心円になるよう、慎重に位置決め固定してください。
ここで用いているのは、透明の多用途接着剤。
セメダイン社の「スーパーX2」という、1時間程度で実用レベルで固定できる速乾タイプです。
ただしこの速乾タイプは一見透明でも、時間が経つとかすかに黄変します。
気になる場合は、固定まで時間がかかりますが「スーパーX」という、より透明度の高いタイプを使っても。
最後に、ビーカーを固定するためにOリングを接着します。
こらはビーカーの外径に合わせますが、同寸だとビーカーが冷めたときに吸盤のように貼り付いてしまうため、1mm程度大きめの呼び寸(内径)がベターです。
これで基本形は完成です。
次項以下は、オプションとして、見た目にインパクトのあるLED電飾法もご紹介します。
【注意】
今回使用したシャーレは、耐熱温度が60℃です。
大坊式のコーヒー温度は抽出時80℃なので、抽出後は50℃前後に下がるため問題はありません。
しかし熱湯で淹れると曲がったり溶けたりするおそれがあります。
ここからは実用性ゼロ、コーヒーの記事なのになぜか電飾の話になります(笑)
あくまで見た目をよくするためのオプション加工で、LED電飾を仕込むやりかたです。
基本的にハンダづけも不要なので、敷居は低いと思います。
まず、どうせLEDを置くなら光が反射したほうが楽しいので、サイズの合う円形ミラーを探して底に貼り付けてみました。
プラ製シャーレの内径が85.7mmで、ドンピシャではありませんが直径80mmのものをつけています。
※鏡をいれると、当然そのぶんだけ厚みが増えます。
クッションゴムの厚みも鏡の厚みに応じて調整が必要です。
写真右下に写っているのは、中の銅線を傷つけず、外周の被覆樹脂だけをきれいにむけるワイヤーカッター。
こういうのがあると、ストレスなく作業ができて便利です。
TRUSCO ワイヤストリッパー(細線用)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00HLJ0Q66/
まず、底蓋の底面にLEDの配線を通すための幅3mmちょっとの穴をドリル類の工具であけます。
電飾には、幅2.5mmの超極細テープLEDを使いました。
テープLEDというのは、弾性のあるテープ状基板にLEDと定電流ダイオードが配置されたもののこと。
基本的に3つのLEDと定電流ダイオード1個が基本ユニットになっています。
そのユニット単位で切り離して光らせることができます。
発光色については、3種類ほど試しました。写真は電球色を組み込んだところ。
予想よりも色温度が高くて白っぽくなり、眩しすぎたため却下しました。
結局、赤色のLEDを採用しています。
一見するとハロゲンヒーターのような、保温効果がありそうに思えます。
でもLEDなのでほとんど熱くならず、単なる飾り(笑)
写真映えを考えて光らせただけなので、コーヒーの味にはまったく影響しません。
本体の側面から導線を通す幅3mmほどの穴をミニドリルなどで開け、DCジャックを通します。
写真ではLEDテープとDCジャックをハンダづけしてしまっているのですが、このDCジャックはハンダなしでも接続できるタイプです。
(プラ製端子が大きいので、少々スマートさは損なわれます)
端子を固定する際はプラスとマイナスの極性をまちがわないように接続します。
通常は赤い線がプラス、黒い線がマイナスです。
斜めに写っている透明なチューブは、「スミチューブ」あるいは「熱収縮チューブ」と呼ばれるもの。
ライターやドライヤーで加熱すると、直径がギュッと収縮するもので、配線の絶縁などに使われます。
今回のLEDテープは非防水で、プリント基板が露出しています。
炭素鋼製のベアリングパーツと接触するとショートするため、このチューブに通して絶縁します。
LEDテープの幅が2.5mmなので、直径3mmの熱収縮チューブを使いました。
チューブの中にテープを通したあとライターの炎で軽く炙ると、チューブがテープをぴったり覆います。
これで多少の湿気なら耐えられるようになります。
小さくて見づらいのですが…
熱収縮チューブに収めたLEDテープは、ベアリングの内側に沿わせて多用途接着剤で固定しています。
シャーレ側面にあけた小さな穴から、写真上側に向かってDCジャックケーブルが伸びています。
熱収縮チューブに収めたテープLEDは、多用途接着剤が固まるまではマスキングテープで仮固定。
念のため、一晩ほど放置しておくと安心です。
DCジャックは写真のようなACアダプターと接続します。
今回使ったLEDテープは12V専用。入手したショップで、適合するACアダプターも販売されています。
※この工程は電飾のないバージョンと同じです。
回転台の上には、200ccの耐熱ビーカー固定用のOリングを載せます。
ビーカーはいい加減に載せるだけでは回転軸がぶれてしまいます。
きちんと同心状に配置できるように、設置ガイドとして極太のOリングを接着します。
慎重に同心円になるように位置決めし、先述の多用途接着剤で接着します。
これで完成です。
(写真の回転台は底面に直径80mmの鏡を敷いています)
通常バージョンの回転台と、LED電飾を施した回転台。
通常バージョンの方は鏡を入れていないため、そのぶん分厚いクッションゴムを使いプラケースの隙間を調整しています。
両者で全高が若干違いますが、これは電飾バージョンの方にだけ、ケース底面にも滑り止め用にクッションゴムをつけているためです。
ここからは今回つくり方をご紹介したドリッパー回転台の使い方です。
まず、こちらがドリッパー回転台をセット。
耐熱ビーカーの回転がぶれないための固定具として、極太Oリングを上部に接着しています。
極太Oリングの上に、ビーカーを載せています。
今回の回転台は、以下の3つの理由から、まずコーヒーサーバーとして耐熱ガラスビーカーを使うことを決め、そこからサイズを逆算しています。
1. 注湯量がひとめでわかる目盛りがついていること
2. 大坊式でコーヒーを2杯分淹れたときに余裕のある容量
3. 細く注湯するときにポットを保持しやすい高さ
ビーカーの上には、ドリッパーを載せます。
ドリッパーも何種類も試したのですが、これにも条件がありました。
1. ネルの濾し袋(フィルター)としての特性が活かせること
2. 回転がぶれないこと
3. 大きすぎない適切な容量
これらの観点で選ぶと、ほとんどの製品が脱落してしまいました。
結局、いまのところ、
セイントアンソニー・インダストリーズ社の「Phoenix70 Brewer(フェニックス70 ドリッパー)」に落ち着いています。
こちらについては、別記事で詳細をご紹介しています。
通常、ネルフィルターはハンドルつきの丸いワイヤーフレームに装着して使います。
しかし今回はドリッパー回転台に合わせるため、動きにじゃまにならないよう、ハンドルなしで使用しています。
ネルフィルターを回転させて使っているのは、世界中でだれもいないのではないでしょうか。
そのため目的にぴったり合うネルフィルターがなく、現在のところ個人的にベストと思っている丸太衣料の両面起毛ネルドリップの3杯用を使っています。
長くなったので、ドリッパー回転台のつくり方だけをまとめます。
1. ベアリングの上下に衝撃吸収用のクッションゴムを貼りつけてプラスチックケース内に固定する
2. ケースの底にもクッションゴムを貼る
3. ケースの上にはコーヒーサーバー固定用のOリングを貼る(コーヒーサーバー=200ccのビーカー)
…たったこれだけです。
あとはビーカーの上にドリッパーを載せ、レコードプレイヤーのように回しながら注湯すれば…
コーヒー粉に均等に湯が行き渡る、正確な渦巻き注湯ができるというわけです。
※ニュースアプリなどでこの記事をご覧の方は、材料リストなどのリンクが切れているかもしれません。その場合はオリジナルサイトでご覧ください。
(価格はすべて記事作成時のものです)
・単式スラスト玉軸受[51112番]1112円(税抜)
https://www.monotaro.com/p/1766/1866/
・滅菌ディスポシャーレ(PS製) 119円(税抜)
https://www.monotaro.com/p/3468/0597/
・2箇所に目盛りの入った iwakiビーカー 270円(税込)
https://www.amazon.co.jp/dp/B002YSIPNK
・Oリング 75円(税抜)
https://www.monotaro.com/p/3549/4426/
※耐油・耐老化性の高いニトリルゴム製
数種類試した結果、一般的なビーカーには呼び寸法(=内径)62mmを使っていますが、これより大きければ問題はありません
・3M しっかりくっつくクッションゴム 各種
・超極細2.5mm 2012テープLED 非防水 赤色 50cm 640円(すべて税込)
http://www.led-paradise.com/product/2044
・熱収縮チューブ透明 直径3mm 厚さ0.2mm 100円
http://www.led-paradise.com/product/1369
・12V ACアダプター
(DCジャック標準 5.5mm×2.1mm)820円
http://www.led-paradise.com/product/547
・8mm2芯DCジャック付きコネクター 150円
http://www.led-paradise.com/product/1353
※ハンダづけの際は、先端の端子は外します
・点検鏡(直径80mmの鏡とり用)599円
https://www.monotaro.com/p/3509/6144/
※単に鏡の部品取り用として使いました
・TRUSCO ワイヤストリッパー(細線用)
https://www.amazon.co.jp/dp/B00HLJ0Q66/
・セメダイン 超多用途接着剤スーパーXクリア
https://www.amazon.co.jp/dp/B000TGLKPE/
・ミニドリルまたはモーターツール(リューター)
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