プレスリリース

「人間の才能 生みだすことと生きること」展を開催

~どうしてこんなに心が揺さぶられるのだろう 人間に潜む驚くべき創造の力~ 

滋賀県立美術館 企画展 <会期:1月22日(土)~3月27日(日)>


 滋賀県立美術館(滋賀県大津市)は、当館が多く保有する「アール・ブリュット」にフォーカスした企画展「人間の才能 生みだすことと生きること展」を、本年1月22日(土)から3月27日(日)まで開催します。

 「アール・ブリュット」とは、専門的な芸術教育を受けていない人が生み出すアートのことで、近年、日本の芸術家を紹介するアール・ブリュット展が海外でも高い評価を得ています。
 本展では、時代の流れにとらわれず、つくりたいという真摯な要求に基づき、独自の方法論で生み出された作品を紹介します。 「生み出すこと」と「生きること」が一体となっているような人たちの作品の中には、「アール・ブリュット」と呼ばれるものもありますが、そうではないものもあります。 「アール・ブリュット」を相対的に捉えられる展示構成にすることで、「アール・ブリュット」という概念は今後も必要か、そもそもアートとは何か、人間にとって重要な才能である“つくる”とは何か、といった問いを、来館者とともに考える場にしたいと思います。
 なお、キュレーションは、当館の館長(ディレクター)である保坂健二朗が担当します。

  鵜飼結一朗《妖怪》2021年、やまなみ工房
  (C) Yuichiro Ukai / Atelier Yamanami Courtesy Yukiko Koide Presents

<展覧会概要>
令和3年度 文化庁 文化芸術創造拠点形成事業
滋賀県 文化芸術×共生社会フェスティバル事業
【展覧会名】 「人間の才能 生みだすことと生きること」展
【会  期】 2022 年1月22 日(土)~3月27 日(日)
【開館時間】 9:30-17:00(入館は16:30 まで)
【会  場】 滋賀県立美術館 展示室3
〒520-2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1 tel:077-543-2111
【休館日】   毎週月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休館)
【観覧料】 一般1,300 円、高・大生900 円、小・中生700 円
【主  催】 滋賀県立美術館
【後  援】 エフエム京都
【企  画】 保坂健二朗(滋賀県立美術館ディレクター/館長)
【公式HP】 https://www.shigamuseum.jp

<出品作家>*五十音順
井村ももか、鵜飼結一朗、岡崎莉望、小笹逸男、上土橋勇樹、喜舍場盛也、古久保憲満、小松和子、澤井玲衣子、澤田真一、アルトゥル・ジミェフスキ、冨山健二、中原浩大、福村惣太夫、藤岡祐機、山崎孝、吉川敏明

<展示内容>
● Chapter 1 【起】 ~アール・ブリュットとは何か?歴史を遡り思いを巡らせる~
アール・ブリュット(art brut)とは、フランスの芸術家であり、アール・ブリュットの作品のコレクターでもあったジャン・デュビュッフェが提唱し広めた言葉。
ブリュットとはフランス語で「生(なま)の」という意味を表します。展覧会では、まず、アール・ブリュットという言葉の定義を紹介した上で、それと「アウトサイダー・アート」という英語の言葉はどう違うのか(あるいはどう同じなのか)を確認します。
また、ファッションブランドのCOMME des GARÇONSが2014年のDMで特集するクリエイターとしてイギリスのアール・ブリュット専門誌『RAW VISION』を選んだ事例も紹介。美術史の枠に収まらないアール・ブリュットの作品が、どのように認知されてきたのかという歴史を振り返ります。

  《コム・デ・ギャルソン2014 年DM》

● Chapter 2 【承】 ~圧倒的な作品の力 生み出すことは生きること~
国内外で注目を集めている日本のアール・ブリュットの作家をご紹介します。
ハサミで紙を櫛状に細かく切ってゆくことでふわふわとした繊細な立体物を生み出す藤岡祐機。独自のカリグラフィと、架空の映画の絵コンテのようなコマ割りの絵を描き出す上土橋勇樹。ユーモラスな表情を浮かべる不思議な粘土の生き物のようなオブジェをつくる澤田真一。古久保憲満はテレビのニュースやインターネットで情報を集め、大きな画用紙にどこにもない空想の都市を緻密に描き出します。大型の作品としては、鵜飼結一朗の作品があります。恐竜の骨や骸骨、動物たちや様々なキャラクターがみっしりと描かれた画面は、妖怪たちが列をなして練り歩く百鬼夜行の現代版のよう。幅82.5cmの画用紙に描かれた作品は、右から左に向けてつながるように描かれていて、今回は14 メートルに及ぶ長大な絵巻として展示します。
その他、井村ももか、岡崎莉望、喜舍場盛也、冨山健二等9名の作家の作品を展示。作家のスタイルには様々な特徴がありますが、彼らは誰に頼まれたわけでもなく、ものをつくり続けているという点で一致しています。「生みだす」ことと「生きる」ことが一体となっているのです。作品からは、人が本来持っている圧倒的な創造力(人間の才能)を感じていただけることでしょう。

● Chapter 3 【転】 ~アール・ブリュットの多様性 つくることの根源に迫る~
アール・ブリュットという概念とその難しさを確認するパート、アール・ブリュットならではの圧倒的な作品のパートに続いて、ここでは、アール・ブリュットを相対化するような作家やプロジェクトを紹介します。
眼の見えない人に絵を描いてもらう「Blindly」という短編映画を制作したポーランドのアルトゥル・ジミェフスキ、京都の亀岡にある知的障害者の入所施設「みずのき」の絵画教室での実践がわかる作品と資料などを紹介します。
アール・ブリュットは芸術的文化によって傷つけられていない(美術の専門的な教育を受けていない)人による「生(なま)の」芸術だと言われていますが、これらの作品はそうした意味でアール・ブリュットの枠には収まりません。
アール・ブリュットとは一体何なのか? を改めて考えると同時に、人はなぜものをつくるのかという人間の創造の根源に迫ります。


  アルトゥル・ジミェフスキ《Blindly》2010 年
  Courtesy the artist, Galerie Peter Kilchmann, Zurich, and Foksal Gallery Foundation, Warsaw

●Chapter 4 【結】 ~アール・ブリュットっていったい? 一緒に考えていきましょう~
展覧会全体を通して、アール・ブリュットとは何かという理解が深まるどころか、じゃあいったい何なんだと「?」が頭に浮かぶ方もいらっしゃるかもしれません。
そうです。この展覧会は、アール・ブリュットの定義を再確認するために開催されるものではありません。アートのどのカテゴリに当てはまるかどうかではなく、その根源にある人間の才能のひとつである「生みだすこと」について皆さんと一緒に考える場として美術館が機能できればと考えています。そこで最後のこのパートでは、皆さんの「声」を書き込めるミラー状の壁を用意する予定です。

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いま、「つくること(Making)」に注目が集まっています。
人類学者のティム・インゴルドは、人間にとって「つくること」というのは、最初に想像していた形にあわせてつくりあげる行為などではなく、自分が手にしている材料と対話をしながら、なにかを育てていくかのようにする行為だと言っています。そんな人間が持っている才能のひとつである「つくること」の本質を再確認するべく、本展では、育てるようにつくること、つまり「生みだすこと」が、「生きること」と一体になっているような人たちの作品を紹介します。
たとえば藤岡祐機は、幼少期から切り絵をつくっているうちに、紙に鋏で櫛の歯状に切れ込みを入れると小さくも美しいオブジェが生まれることに気づきました。澤井玲衣子は、かつて自分が訪れた場所や時間の記憶をもとに、たおやかなリズムの感じられるイメージを生みだします。彼らのほとんどは、プロのアーティストではなく、また、なんらかの障害を持っています。誰かに評価されるなど望まず、日々の生活の中で独自の方法論を編み出しながらつくっていく彼らの作品からは、「生みだすことと生きること」を接続させていくことの大切さを深く感じ取れるはずです。
展覧会企画 保坂健二朗/滋賀県立美術館 ディレクター(館長)

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