「登る」と「上る」は、どちらも「上に移動する」という意味を持ちます。
しかし、ニュアンスに微妙な違いがあるため、正しく使い分けることが大切です。
本記事では、「登る」と「上る」の漢字の意味や使い方、英語での表記について、例文を交えながら紹介します。
「登る」と「上る」の意味
「登る」と「上る」は、どちらも「下から上へ移動する」という意味を持つ言葉ですが、異なる点もあります。
「登る」の意味
「登る」は、下から上へ移動するという意味です。goo辞典には、次のように解説されています。
下から上へ、低い所から高い所へ移る。⇔下る。
㋐他より一段と高い所へ移り進む。「山に―・る」「演壇に―・る」
㋑そこを通って高い所に行く。「坂道を―・る」
㋒川の上流へ向かって進む。さかのぼる。「川を―・る」
㋐は「登る」、㋑㋒は「上る」と書くのが一般的です。
ゆるやかに下から上へ移動する場合は「上る」、山のようにとても高い場所へ移動する場合は「登る」を使います。
また、「登る」には、頑張って移動する・上に移動するのに努力が伴うといった意味が含まれます。
出典:goo辞書(デジタル大辞泉)
「上る」の意味
「上る」は、「登る」と同様に下から上へ移動する意味がありますが、その他にも多くの意味合いを持つ言葉です。goo辞典では、次のように説明されています。
・地方から中央へ行く。都へ向かう。「京へ―・る」「江戸へ―・る」⇔下る。
・貴人の御座所近くへ参上する。
・(「頭に血がのぼる」などの形で)のぼせる。夢中になる。「頭に血が―・って見境がなくなる」
・数量が、無視できない相当の程度に達する。「死傷者が数百人に―・る」
・あるところで、取りたてて問題とされる。「世上の口に―・る」「話題に―・る」
地方から中央へ行く場合の「上る」は、上り電車・下り電車をイメージすると分かりやすいでしょう。
また、体が移動するだけでなく、数や話題が増える場合の表現にも「上る」が用いられます。
出典:goo辞書(デジタル大辞泉)
「登る」と「上る」の使い分け・例文
「登る」と「上る」の使い分けは、使う場面や移動する人の状況によって判断します。例文を用いて紹介します。
「登る」の使い方と例文
はしごや山・ジャングルジムなど、自分の足を使って上へ行くものについては「登る」を使います。例えば、次のようなケースでは「登る」と表現します。
- 台風で壊れた屋根に登って、応急処置をするつもりだ。
- 展望台に登り、美しい景色を眺めた。
そのほか、脚立やタワー、木にのぼるといった場合も「登る」です。
階段・坂は例外?
階段や坂も自分の足でのぼるものですが、「登る」と「上る」いずれも使うケースがあります。
あまり力を入れずに自然にのぼっていく場合には「上る」と書き、急斜面や急な階段などを踏ん張ってのぼる場合には「登る」と書きます。状況によって使い分けましょう。
また、階段は「昇る」を用いる場合もありますが、「昇る」には「昇天する」という意味合いがあるため、「天国への階段を昇る」といった使い方となります。
「上る」の使い方と例文
「上る」は下から上に移動する意味以外にも、「上京する」「頭に血が上る」「議題に上る」といった使い方もします。
- 彼の言葉を聞いて頭に血が上り、つい大きな声を出してしまった。
- 今日の会議では営業方針の変更が議題に上った。
上記のように気持ちが一気に高揚したときや、特定の話題が話し合われる場合にも「上る」が用いられます。
「登る」と「上る」の英語での違い
「登る」と「上る」は、英語に訳すと同じ単語を利用することがあります。
登る
- move up
- go up
- uprise
- lift
- rise
- arise
- come up
- go up
- ascend
上る
- jump
- rise
- climb up
- climb
- wax
- mount
- climb
- rise
- lift
- raise
出典:weblio和英辞典
日常会話でよく使われる「階段をのぼる」は、英語では「go up the stairs」です。
しかし、急いでのぼる場合は「run up the stairs」と表現します。
英語でも日本語と同じように、単語の持つ意味に微妙な差があるため、状況によって使い分ける必要があります。
「登る」と「上る」を正しく使い分けよう
「登る」と「上る」は、どちらも「下から上に移動する」という意味の言葉です。
しかし、山のように高い場所に移動する場合や、自分の足を使って移動する場合には「登る」を使います。
また、「上る」には体が移動する以外にも、数が大きく増えた場合や話題になる場合にも用いられます。「登る」と「上る」の違いを理解して、上手に使い分けましょう。
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