ビジネスシーンでよく使用する「応対」と「対応」。同じ漢字を入れ替えただけの熟語ですが、それぞれ意味が異なるということを知っていますか?使う場面も似ているため、漢字を入れ替えただけで意味は同じだと思っている方も多いのではないでしょうか。本記事では、そんな応対と対応の違いや、使い分け方について解説していきます。
ビジネスシーンでよく使う言葉だからこそ、上司やクライアントとのコミュニケーションなどで適切に使うことが重要です。例文や英語表現も交えて解説していますので、この機会にしっかりと使いこなせるようになりましょう!最後にはクイズも用意しているので、ぜひチャレンジしてくださいね。
「応対」と「対応」の意味
「応対」と「対応」は漢字を入れ替えただけでなく、意味も少し異なります。まずは意味を知って、適切な使い分けに繋げましょう。似ている意味ですが明確な違いがあるので、しっかりと頭に入れておいてください。
「応対」の意味
- [名](スル)相手になって、受け答えすること。「どんな客にも巧みに―する」「電話の―がうまい」
出典:goo辞書
「応対」の意味は、「人の相手になって、受け答えすること」。受け答えは人と直接会う時だけでなく、メールなどの文面や電話でのやりとりまで含みます。
つまり「応対」とは、人とのコミュニケーションを行う際に使われる言葉です。電話応対などはよく聞く言葉ですが、この場合においても電話を通して相手に対して受け答えしているので、人に対して使う言葉、ということが分かりますね。
また、「応対」は相手からの要望や言動に対して応えるという点で受動的な意味合いが強い言葉です。そのため、「応対」には自分から積極的に働きかけていく、という意味合いはあまりないので、使用する際は注意してくださいね。
「対応」の意味
- [名](スル)(1) 同種の二つのものが向かい合い、対 (つい) になっていること。「四辺形の互いに―する角」、(2) ある物事が、他の範疇 (はんちゅう) に属する物事と、対立・相当する関係にあること。「ギリシャ文字のα (アルファ) は、ローマ字のaに―する」、(3) 互いにつりあいがとれていること。「文章の書き出しと結びを―させる」、(4) 周囲の状況などに合わせて事をすること。「現実に―した処置」「―策」、(5) 二つの集合A、Bがあって、Aのどの要素にも、Bの要素が少なくとも一つ定まる規則があること。ふつう、AからBへの対応という。
出典:goo辞書
「対応」には、いくつかの意味があります。同じ種類の2つが対になっていること、対立関係にあること、釣り合っていること、周囲の状況に合わせて何かをすること、など。このようにいくつかの意味がありますが、応対と近い意味で使われるのは周囲の状況に合わせて何かをすることです。
つまり、ビジネスシーンに限らず何か問題が起きたり、処理すべき事案が起きた際に使われる言葉です。問題解決に向けて行動すること事態に「対応」という言葉が使われるため、人に対して何かをすることにも、ある事柄に対して何かをすることにも使います。対人であればその人からの要望に応えること、物事であれば適切に対処するという意味合いです。
2つの違いは「対象が人かどうか」で決まる
「応対」と「対応」、この2つの違いは簡単にいうと対象が人かどうか。応対は、人に対して何らかの受け答えをすることに対し、対応は状況を対象に処理をすることです。
対応は状況を対象にしており、物事に限らず人に対しても使うため、間違えないように注意してくださいね。
また、細かい違いとして、「応対」は受け答えする行為自体を指しますが、「対応」は受け答えすることに加えて適切に処理するところまでも指します。お客様からの電話の受け答えすることまでは「応対」で、お客様からの要望を受けて行動した場合は「対応」となるのです。
同じようなシーンでも行動によって言葉を使い分ける必要があるので、しっかりインプットしておきましょう。
シーン別の使い方
ここからは「応対」と「対応」の具体例を交え、シーン別の使い方も見ていきましょう。
シーン①:接客
接客で「Sサイズはありますか?」という質問に対し、応えることは「応対」
Sサイズの服を在庫から探したり、取り寄せたりするのは「対応」
シーン②:ホテルでの受付
ホテルの受付でお客様を迎えるのは「応対」
チェックインの手続きをしたり、部屋に案内したりすることは「対応」
シーン③:面接
面接にきた学生の履歴書を受け取り、会場まで案内するのは「応対」
その後、学生に対して質問するなど面接を行うことは「対応」
例文をチェックしてみよう
「お客様からきた要望に応対しておきます」など、間違った使い方でメールしていないでしょうか?「応対」と「対応」の使い分けをスムーズに行えるよう、例文もチェックしておきましょう。例文を確認することでより言葉の理解を深めることができますよ。
「応対」の例文
例文①
「イベントの受付スタッフは、来場者の問い合わせに対して親切に応対していました」
来場者からの問い合わせに対して受け答えをしているため、応対を使います。
例文②
「レストランの店員さんが笑顔で応対していて、素晴らしいと感じました」
店員とお客さんとのコミュニケーションを指しているので、応対が適切です。
例文③
「会議でのプレゼン中は、参加者からの質問に的確に応対することが重要です」
参加者からの質問に受け答えをするという意味で使われているため、応対を使います。
「対応」の例文
例文①
「システム障害が起こったが、迅速な対応があったため影響範囲が広がらずに済んだ」
システム障害という問題に対して行動しているため対応が良いでしょう。
例文②
「顧客からの要望に対応するため、商品ラインナップの拡充を検討しています」
顧客からの要望に対して行動をしているため、対応が正しいです。
例文③
「環境問題に対して具体的な対応策を講じる必要があります。」
状況に対して策を講じているため、対応が適切な使い方です。
英語表現の違い
「応対」と「対応」は、英語表現でもそれぞれの表現は異なります。英語表現を学ぶことで、違った角度から言葉の理解を深めることができるでしょう。
また、ビジネスシーンで英語を使う機会が多い方は、誤った使い方をしないよう必ずチェックしてください。
「応対」の英語表現
応対の英語表現はいくつかありますが、主な表現として「recive(レシーブ)」があります。「recive」には、受け入れるや受け取るという意味のほかに、迎え入れるという意味もあります。窓口などでお客様を受け入れる際や、来客を迎え入れる場合に「recive」が使えます。
また、名詞形の「reception(レセプション)」には受付や歓迎、接待、フロントという意味があり、こちらも応対するシーンを指す言葉です。日本語訳からもわかるように、コミュニケーションを重点においた意味として使われる英単語です。
ちなみに、応対する人=応対者は「attendant(アテンダント)」という単語を使います。
「対応」の英語表現
対応は、日本語としてもいくつかの意味があるように、英語での表現方法も幅広くあるのが特徴です。
例えば、問題に対して「対応する」という意味で使われる表現としては「deal(ディール)」が挙げられます。ただ、「deal」だけでは対応するとは使われず、主に「deal with(ディール ウィズ)」として表現します。「deal」だけでは、トランプを配る役のディーラーのように、配るという意味があります。そのため、ディーラーは対応者としての意味は持たないため、注意が必要です。
また、いくつかある対応の英語表現の中でも「deal with」は、問題を解決するために積極的に働きかけて作業していくというニュアンスを持っています。名詞で「deal」を使う場合は「取引」という意味合いを持ち、商談の場では頻出する単語です。
「応対」と「対応」の類義語
「応対」と「対応」が違う意味をもつため、それぞれの類義語も異なります。「応対」の類義語には、応接と接待の2つが挙げられます。どちらも応対と同じく、人に対して受け答えをするニュアンスを持ちますが、応接や接待は応対よりも「おもてなしをする」意味合いが強い言葉です。
次に、「対応」の類義語には対処、収拾、処理などが挙げられます。ただし、「処理」は対応のニュアンスとはやや異なり、より機械的に問題に対して行動することに対して使われます。人を通じて適切に行動するというよりは、物事に対して淡々と行動するような雰囲気です。
言い換えとしては「善処する」がよく使われる表現。より最善の方法で対応する、という意味でビジネスシーンや公的な場ではよく使われる表現なので、ぜひ覚えておいてくださいね。
「対応」と「即応」はどう違う?
対応によく似た言葉として「即応」があります。対応と語感が似ていますが、どういう意味かご存知でしょうか。
「即応」は読んで字のごとく、「即座に対応すること」です。行動することは対応と一緒ですが、行動に移すまでの早さが異なります。また、「即応」は「状況に当てはまる」という意味として「即応性」と使われることも。順応性や適応性と近い意味で使います。普段あまり耳にしない言葉かもしれませんが、場面によってぜひ使い分けてみてくださいね。
3つの例文クイズにチャレンジ!
それでは最後にクイズに挑戦してみましょう。迷う問題が多いですが、ぜひ全問正解を目指してください。迷ったらそれぞれの意味や類義語を思い出すと答えが出やすいですよ。
クイズ①
彼は、私の質問に対して親切に応対してくれてとても好印象だった。
クイズ②
彼女の問題への対応力は非常に高く、周りから一目置かれている存在だ。
クイズ③
それぞれのお客様からいただいた意見には、適切に応対することが非常に重要です。
答えと解説
クイズ①:○
対人のコミュニケーションにおける受け答えを指しているため、応対が正解です。
クイズ②:○
対人ではなく状況への処理に対して使われているため、対応が適切です。
クイズ③:×
人とのコミュニケーションではなく意見に対して処理していくという意味合いのため、対応が正解です。
まとめ
クイズは全問正解できましたでしょうか。「応対」と「対応」は漢字の順番が変わるだけで意味が異なるなんて、なんだか不思議ですよね。
普段、何気なく使い分けている方も多いと思いますが、意味を理解しているのと理解していないのとでは雲泥の差があります。意味の違いを意識しながら、日常でも積極的に使ってどんどんマスターしてくださいね。
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