「留意」という言葉はビジネスシーンでは使われますが、「注意」との違いはご存じでしょうか?明確に意味が異なる2つの言葉を上手く使い分けるためには、それぞれの意味を理解することが何より大切です。
この記事では、それぞれの意味から使い方の違いについて詳しく解説。特に、目上の方に向けたビジネスメールやプレゼンテーションにおいては、正確な使い分けが非常に重要になりますよ。意味を知るだけでなく、ワンランク上の知識をインプットしていきましょう。さらに、本記事では類義語などの言い換え表現もご紹介。最後には理解度を確かめる問題も用意しているので、しっかりと「留意」と「注意」の違いを理解して、あらゆるシーンで活用してくださいね。
「留意」と「注意」の意味
「留意」と「注意」は一文字しか変わらないので、違いを意識せずに使っている方も多いのではないでしょうか。正確な違いがしっかりとあるので、それぞれの意味や取り扱い方など具体例を交えた解説をチェックして、ぜひこの機会にインプットしてくださいね。
「留意」の意味
- [名](スル)ある物事に心をとどめて、気をつけること。「健康に―する」「―点」(引用:goo辞書)
留意の意味は、 「ある物事に心を留めること。気をつけること」。「意」は意識や意見などに使われるように、「心に思うこと、気持ち、考え」 などの意味があります。また、「留」は留年や停留のように「その場所にとどめておくこと。動かないこと」という意味。
漢字から分かるように「意識や考えを心の中に留めておく」ということが、「留意」の意味です。少しややこしく感じるかもしれませんが、簡単にいうと「このことを覚えておいてください」「気にとどめておいてください」ということを伝えるときなどに使う言葉です。
「注意」の意味
- [名](スル) 1 気をつけること。気をくばること。「よく―して観察する」「日々健康に―する」 2 悪いことが起こらないように警戒すること。用心すること。「交通事故に―する」 3 気をつけるように傍らから言うこと。忠告。「過ちを―する」 4 ある一つの対象を選択し、認知・明瞭化しようと意識を集中する心的活動。同時に、その他のものは抑制・排斥される。(引用:goo辞書)
注意が留意と大きく違う意味として「気をつけるように忠告する」という意味があります。ビジネスシーンでもよくあるように、部下や後輩に対してあることを忠告するときは「注意」を使います。
一方で、留意に似た意味として「食生活に注意する」のように、気をつける、気を配っておく、という意味で使うこともあります。はたまた、「交通事故に注意する」のように警戒しておく、問題が起きないように用心するという意味で使うこともあるのです。
「注」は「そそぐ、一点に向けて集める」という意味がありますので、「注意」には文字の通り「意識や気持ちをある物事に対して向けておく」という意味合いがあります。
2つの違いは「警戒するレベルか」「具体的なことか」
以上のように「留意」と「注意」は似た意味を持つ言葉ですが同じ意味ではありません。それぞれの言葉を使う際の判断基準は、「警戒しておくことか」「具体的なことなのか」の2点です。
警戒しておく、用心しておくことに対しては「注意」を使用します。反対に、「留意」は心に意識をとどめておく程度なので、用心・警戒するような事には使用しません。留意は「健康にご留意ください」など、ある程度長い期間意識しておくようなことに対して使われます。
また、意識を向ける対象が具体的かどうかでも異なります。例えば「足元に注意してください」など、意識を向ける対象が具体的な場合は「注意」。反対に、「クライアントの希望に留意しておく」など、意識を向ける対象が抽象的なことや漠然としたことに対しては留意を使うのが正しい用法です。警戒することなのか、具体的なことなのかによってそれぞれ使い分けましょう。
「留意事項」と「注意事項」の違いとは?
説明書や資料でもよく目にする「留意事項」と「注意事項」。これらも同じような使い分け方をするのでしょうか?
これらは、先ほど述べた「留意」と「注意」のような使い分け方で間違いありません。意味としてはどちらも「意識すべきこと」ですが、「留意事項」の方がより広い範囲を指す際に使用されます。一方で、「注意事項」や「注意点」は、印象としてやや強い語感になるため、ビジネスシーンでは柔らかい表現である「留意事項」のほうが多く用いられていますよ。
例文をチェックしてみよう
目上の方へのビジネスメールなどで、「注意事項に留意してください」「注意点に留意して」など、意味が重複した使い方になっていないでしょうか?「注意点」や「留意点」は公的な場所でよく使われる言葉だからこそ、使い方には注意が必要です。以下で紹介する例文をチェックして理解度を深めていきましょう。
「留意」の例文
例文1
「新規プロジェクトを開始する際には、以下の留意点に沿って計画を進めてください。」
意識しておく事柄を意味しているため、注意点に置き換えることもできますが、警戒するようなレベルではないため、より柔らかい表現である留意が好ましいでしょう。
例文2
「システムメンテナンス中。一時的にサービスが中断されることがあるのでご留意ください」
サービスが使えなくなることがあるというお知らせであり、ある程度の期間心の中に留めておいてほしいことを表しているため、留意が適切となります。
例文3
「健康に留意し、毎日の食生活を改善しましょう」
警戒しておくほどの事柄ではなく、日々少しの意識をしてほしいということを伝える文章のため、ここでは留意を使うのが適切です。
「注意」の例文
例文1
「詐欺メールやフィッシングメールにご注意ください」
詐欺メールやフィッシングメールは用心・警戒して意識を向けておくべきことなので、注意が適切です。
例文2
「こちらの商品をご使用の際は注意事項を確認してからご使用ください」
誤った使用方法だと危険に触れる恐れがあるほとんどの商品に忠告が記載されています。
例文3
「プライバシー保護のため、個人情報を他の人と共有しないようご注意ください」
共有するという具体的な事柄に対して意識しておくことを指しているうえ、共有することで危険が及ぶため、注意を使うのが適切。
英語表現の違い
「留意」と「注意」は、英語表現でもそれぞれの表現が異なります。それぞれの英語表現を学ぶことで、違った角度から言葉の理解を深めることができるでしょう。また、ビジネスシーンで英語を使う方も誤った使い方をしないよう、英語表現の違いも知っておきましょう。
「留意」の英語表現
留意の英語表現は、一般的には「attention」を使用します。とくに、注目を促す意味として「attention please(アテンション プリーズ)」はよく耳にする表現ではないでしょうか。
ここから分かるように、「気を付けておく」「意識しておく」という意味で使うため、留意の英語表現として使われます。ほかにも「consideration(コンシダレーション)」は考慮や熟慮という意味であり、考慮しておくという点で留意の意味と近い表現です。
また、「notice(ノーティス)」は掲示や案内の意味で、重要なことに対して注目しておく、心に留めておくということなので、留意の英語表現として使用されることがあります。
「注意」の英語表現
注意の英語表現は留意と比べ、複数あります。よく使われる英語表現としては「caution(コーション)」が挙げられます。誰かに対して警告するという意味や、物事に対して警戒心を持って意識しておく、用心しておくという意味を持ちます。
ほかにも「care(ケア)」は「take care(テイクケア)」と使われるように、注意しておく、意識を向けておくという意味があります。より強い意味での注意だと、警告・警報を意味する「warning(ワーニング)」があります。
注意という一つの言葉でも様々な英語表現があるので、意図と異ならないように上手く使い分けましょう。
「留意」と「注意」の類義語
「留意」と「注意」の主に挙げられる類義語として、「配慮」「忠言」「用心」の3つがあります。
配慮は心を配るという意味で留意に近いですが、留意と比べて気遣いの意味が強い言葉です。忠言は他人をいさめる言葉という意味、用心は警戒するという意味なので、厳密には注意の類義語。
ほかにもビジネスシーンでよく使われる言い換え表現として「含みおく」があります。留意の意味を持っており、例えば取引先などへ把握しておいて欲しい事柄に対して「お含みおきください」という表現は、よく使用するのではないでしょうか。また、「念頭に置く」というのも、留意しておくという意味で馴染みある言い換え表現ですね。
3つの例文クイズにチャレンジ!
「留意」と「注意」についてさまざまな角度から解説しましたが、しっかり理解できたでしょうか。出題される3問のクイズに挑戦して、自分の理解度を試してみましょう。
クイズ①
来年度予算を組む際は下記の「注意事項」をご確認ください。
クイズ②
契約書を確認する際は、細かい条項にも「留意」して内容を把握しましょう。
クイズ③
プレゼン資料にミスがないか「注意」して確認してください。
答えと解説
クイズ①:×
ここでは気に留めておく事柄を指しており、警戒するようなことではないため留意事項と表現するのが正しいでしょう。
クイズ②:◯
情報を考慮することを意味して使用しているため、留意するが正しい表現。
クイズ③:◯
ミスがないか用心することを指しているため、注意が正しい表現です。
まとめ
クイズは全問正解できたでしょうか?「留意」と「注意」は意味を混合して使っている人が多いので、使い分けができればビジネスシーンでも一目置かれるでしょう。また、言いかえ表現や英語表現も知っておけば活躍できる場がもっと広がります。日常生活でも積極的に使って、マスターしてくださいね。
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