お墓の契約や維持にかかる税金は、実は消費税だけなのです。
お墓を建てるためには、墓地の購入費用と、墓石の建立費用を支払わなければなりません。具体的には、
1:墓地の永代使用料
2:墓地の年間管理費
3:墓石代金
4:墓石の工事費
…に分けられます。1と2は墓地や霊園に、3と4は石材店に支払います。
さて、お墓の建立は家の新築と比較して考えると分かりやすいでしょう。家を建てるときには不動産取得税や印紙税、また建物やもろもろの工事に対しての消費税などを納めなければなりませんが、墓石の建立の際に納めなければならないのは消費税だけです。しかも、課税対象は墓地の年間管理費、墓石代金、墓石の工事費であり、墓地の永代使用料は消費税が課税されません。その背景を詳しく見ていきます。
「墓地を買う」と言いますが、厳密には墓地そのものが利用者の所有になったのではなく、あくまでも永代にわたる使用権を手に入れたに過ぎないのです。そのため、一般的な不動産取得時と異なり、墓地を買ったからといって登記の必要もありませんし、不動産取得税や固定資産税の支払いも不要です。
お墓を建てるには上に挙げた4つの項目に支払いが生じますが、墓地代、いわゆる墓地の永代使用料に対しては消費税がかかりません。
これは不動産などにおける土地と同じ考えによるものです。消費税とはあくまでも「消費」に対して課せられる税金ですが、土地の売買や譲渡は消費ではなく資本の移転であるために、消費税がかからないのです。
ましてや墓地は営利目的で販売されるものではなく、宗教行為という非営利目的のために貸付されるものです。こうした理由から非課税対象となっているのです。
気をつけなければならないのは、万が一墓地が不要になったからといって、勝手に第三者への転売や譲渡してはいけないということです。利用者はあくまでも墓地の使用権を手に入れたに過ぎず、墓地そのものを所有したわけではないため、不要となった墓地は必ず管理者に返還しなければなりません。
墓地の使用者が亡くなると、誰かがその使用権を受け継がなければなりませんが、こうした承継の際にも相続税がかからないのがお墓の特徴です。なぜ相続税が課税されないのか。財産には「相続財産」と「祭祀財産」とがありますが、お墓は後者にあたるからです。
祭祀財産とは、祖先を祀るために必要な財産のことです。具体的には、仏壇、位牌、墓地、墓碑、家系図などが挙げられます。祭祀財産は「相続」ではなく「承継」されるもので、祭祀承継者は原則一人とされます。戦前の旧民法では、家督を継ぐ長男が祭祀承継者となっていましたが、現在の民法では、慣習に従って決めるものとしています。
一方、不動産や預貯金などの資産は、相続財産として法定相続人に分割相続されます。
祭祀財産は、その性質上相続税がかかりません。お仏壇やお墓の評価額を計算することなんてできませんし、これらを3分割、4分割して相続人で分けるなんて物理的に困難です。また、お墓は長男、仏壇は次男、家系図は三男という具合に分けることも、のちのちのトラブルの元になります。祭祀財産の相続は「一人の祭祀承継者」「非課税」が基本です。
「祭祀財産は非課税」という性質を節税に活用することができます。被相続人が亡くなる前にお墓や仏壇を買っておくことがポイントです。
現金で相続すれば、その金額に対して相続税が課税されます。しかし、生前にお墓や仏壇を買っておけば、その分の相続税を抑えることができますし、死後に遺された家族が費用負担をしなくて済みます。
一部、高額な仏壇や仏具を購入して相続税対策をする人もいます。しかし、数百万円する純金製のおりんのように、桁違いな仏具は相続財産とみなされることもありますので気をつけましょう。
税金とは少し話がそれますが、私たちが毎月支払う保険料は、葬儀や埋葬のときにその補助としてお金がもらえます。
国民健康保険以外の健康保険の被保険者が亡くなったときには「埋葬料」が支給されます。また被保険者本人ではなく養っていた家族が亡くなった場合にも「家族埋葬料」が支給されます。ともに埋葬にかかった費用のうち、5万円を上限と定められています。勤務先や健康保険組合に申請します。
一方、国民健康保険の場合は、被保険者や扶養家族に「葬祭費」が支給されます。こちらは市区町村によって支給金額が異なり、1~7万円と開きがあります。お住まいの自治体の保険課に申請します。
たとえわずかとはいえ、費用負担の足しになるありがたいお金です。葬儀のあとには故人が加入していた保険を確認し、忘れないよう申請しましょう。
お墓には消費税以外の税金がないことがお分かりいただけたかと思います。生前建墓は節税対策にもなります。そして、家族のつながりのためにも一度お墓を建てることを考えてみてはいかがでしょうか。
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