「粗熱を取る」という言葉を聞くと、すべて同じ温度の事を言っているように聞こえますが、実は用途によってその適温は違います。特に「調理中の粗熱とり」と「冷蔵庫に入れるための粗熱とり」では、目的や適温が違ってします。
例えば、茹で卵を調理するなら、茹でた卵を流水などで一気冷やして「粗熱を取って」殻を剥きますが、この場合の粗熱を取る基準は、人肌より少し暑いくらいまで温度が下がれば大丈夫です。殻を剥いて切ったり、潰したりにしたり、次の工程へ進めます。
煮物を作っている際にも、粗熱を取ってから調味をすると、調味料の香りも飛ばず味が染み込みやすくなりますが、この場合も同様で湯気が出ず「人肌より少し熱を持っている程度」で良いのです。
ということは、調理の粗熱とは人肌が36度~37度。通常人が温点や痛覚が同時に刺激されて熱い!と感じるのは45度以上(入浴温度でいえば高温の湯)ですから、38度~44度まで下がっていれば「粗熱が取れた」と判断できます。
調理工程の粗熱を取ると同様に38~44度まで下がった食品を冷蔵庫に入れて問題がないのでしょうか?答えは「NO」です。冷蔵庫に食品を入れるためには、まず冷蔵庫に先に入っている食品への影響を考えなければならないからです。
冷蔵庫の使い方などでよく目にするのは「庫内の温度が下がらないように…」という言葉。確かに先に保冷していた食品が、作り置き料理を入れたことで傷むのは避けたいところ。冷蔵庫の場合、その冷蔵庫の機能の差や、設定温度、使う方がどの程度他の食品を入れているのか、など、前提条件が違うので一概に「何度のものを入れると影響がでる」とは断言できません。
ですが冷蔵庫のメーカーよってはその基準を「室温」としています。
例えば、作った麦茶を冷蔵する場合、100度で沸騰させた熱々の状態から、粗熱を室温で取り冷ました場合、室温で置いていても、室温以下には下がりません。ですから、粗熱を取る際に目指す温度は「室温」となります。
室温は季節やご家庭の状況によって変わってきますが、厚生労働省が夏場節電のために設定を呼び掛けている温度は28度。一般的に、菌は10度~45度の間で増殖するものと考えられていて、特に30度~37度以下の温度は最も菌が活発になります。粗熱を取っても30度~37度で食品の温度をキープするのは危険ですから、この温度をより低くなったところの28度程になったところではもう「粗熱が取れた」と判断して冷蔵庫に入れても問題がないといえます。
粗熱を取る場合の目指す温度は「調理中の場合は38~44度」で、「冷蔵庫に入れるためには28度程」が目安ですから、冷蔵庫に入れるためにはある程度しっかりと粗熱を取る必要があることがわかります。
目で確認するなら、まずは湯気がでない状態であることを確認します。手で確認する場合、人の手の温度には個人差がありますが、仮に手先が36度の人が粗熱を取っている料理を触って「ぬるい」と感じる場合は、体温とほぼ近いので「まだ粗熱は取れていない」といえます。目指す適温は「ひんやり」とまでは感じないものの、手よりは「少し冷たい」と感じる温度が粗熱が取れた状態です。
これからの季節、30度以上の真夏日も増え、室温も湿度も上がります。出来上がった料理をただ室温に置いていても、冷蔵庫に入れられる程にはなかなか粗熱も取れなくなります。
冷蔵や冷凍前に発生した菌は、冷蔵されると働きが鈍くなりますが、消滅するわけではありません。冷凍庫でも、凍っている間菌は働きを止めますが、死滅してはいません。やはり冷蔵庫・冷凍庫で保存するまで菌を発生させないことが大切です。
そこで、粗熱を取るコツをいくつかご紹介します。
冷蔵庫は隙間なく食品を詰め込んでしまうと、冷気がうまく循環しません。新たに食品をいれた際にも、なかなか冷やされなくなってしまいます。大量に作り置き料理を冷蔵庫に入れる前には、かさばる不要なものなどが入っていないか、チェックして十分なスペースを確保しましょう。
冷凍庫は、冷蔵庫と反対に、ある程度ものが詰まっている方がすでに凍っているものが冷気を保ってくれるので効率的に保冷されます。ですが、この時期冷凍庫は込み合いやすいので、事前のスペース確保はしておきましょう。
冷蔵でも、冷凍でも冷気は食品の外側から中心に向かって進みます。中心までの距離が短い方が早く冷蔵や冷凍されます。背の高いサイコロ方型の容器にスープをいれた場合と、平たい豆腐のような型の容器にいれた場合は、サイコロ型の方が中心までの距離が遠くなってしまいます。
湯気が出ている状態で、器型の密閉器に入れて蓋をしてしまうと、蓋が湯気で曇り、中にも水滴がついてしまいます。冷蔵する際、余計な水分は雑菌発生のもとになり、味も損ないます。また冷凍する場合には冷凍庫では、料理や食品を冷凍する場合、それ料理や食品自体が冷凍されたのではなく「料理や食品に含まれる水分」が凍っています。冷凍の際には、この凍った水分の結晶が大きく冷凍されてしまうほど、組織が傷みます。粗熱はしっかり取り、湯気で余計な水分を発生させないようにしましょう。
ほうれん草の青止めのように、熱々に茹であげたものを流水にさらすことも粗熱を取る方法です。料理の場合には、密閉できる保存袋などにいれて流水に当てることができます。水道の温度は外気に影響されます。東京都を例にした場合、水温平均は16度程度ですが、冬場は最低6度程、夏場の最高は28度を超えるので、水温には開きがあります。ですが、温度は高い方から低い方に移ります。粗熱を取りたい料理より水温が低ければ、冷蔵庫に入れる温度28度を目指すのに活用できます。
蓋をした密閉器の上に保冷剤を置くことも効率的ですが、夏場は一時的に保冷剤が足りなくなることもあります。そんな時には、水を入れて凍らせたペットボトルや、清潔な濡れタオルを密閉型の袋に入れ、平に凍らせたものも粗熱を取る保冷剤として使うことができます。
作り置き料理の場合、一度にたくさんの料理をするので、出来上がる料理のタイミングはまちまち。「粗熱が取れたら…」のタイミングも同時ではありません。かといって温度計で料理の温度を測ってチェックするのも、家庭では難しいこと。でも、目指す適温をしっかり把握していれば、目や手でも温度を見極めることができます。どのタイミングで冷蔵庫に入れて良いものなのか?を迷わず判断できると、この季節の作り置き料理も安心ですね。
ライター:タスカジさん ふたば
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