果樹を鉢植えで育てることで、広い敷地が無くても果樹の収穫を楽しむことができます。コンパクトなサイズで育てることができることで、お手入れや収穫が楽になります。また、家庭で栽培するからこそレモンの未熟な青い実から完熟まで収穫時期によって異なる味わいが楽しめます。
複数本育成でないと実のならない果樹が多いなか、レモンは1本でも結実できるのも魅力。そのうえ鉢植えで育てると根や枝葉の伸びを制限することになります。それによって実に回る栄養分が充実します。庭植えより鉢植えの方が実付きがよい傾向にあるといいます。
鉢植えの場合、育てる場所を移動することができることもメリットの一つです。季節の変化に応じて温度管理が可能。レモンは寒さに弱い果樹なので、気温が低くなる時期は屋内に移動することで寒冷地での栽培も可能になります。
軒先のように日当たりがよく、雨が直接当たらない場所で育てることで、病気の発生を抑えることができます。また、台風や強風の日には屋内に移動することで枝折れなどの被害を防ぐことができます。
基本的にレモンは寒さに弱く、耐寒温度は-3℃ほどです。とげがあり、収穫時期は10月~2月くらいです。品種は多くあり、品種によってはとげが少なかったり、耐寒温度や収穫時期が違ったりと育成にも違いがあります。
■リスボン
レモンの代表的な品種。レモンのなかでは比較的寒さに強い。レモンの香りと酸味がしっかりと感じられる。樹勢が強く、大木になりやすいので定期的な剪定で大きさを管理するといい。
■マイヤーレモン
果皮が薄くて香りが強い。酸味はマイルドなレモン。とげは少ない。シャーベットやタルトなどのお菓子作りに向いている。
■璃の香(りのか)
日本生まれの品種。とげは少なめで、実は大ぶりの楕円形。まろやかな酸味で香りは強くない。
新しい品種でレモンなのにピンク色の果肉。酸味はまろやかで小ぶりな実。果皮は緑と黄色のストライプ。葉も特徴的で斑入りなので鑑賞性も高い。
■苗木選び
すぐに収穫を楽しみたい場合は、3年生以上の大苗を選びましょう。枝葉が多く、葉の色が濃いものがおすすめ。1~2年生の棒苗の場合は、結実まで数年かかることもある。
■生育場所
日当たりと風通しがよい場所。軒先など直接雨に当たらない場所が最適。気温が-3℃を下回る時期は、日当たりのよい室内に移動させましょう。室内で育てることが難しい場合は、不織布などで苗を覆い防寒対策を。
■水やり
土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまで、たっぷりと与えます。土の状態を観察し、水切れには注意。水やりを怠って株がしおれてしまうとダメージが大きく、翌年の実付きにも影響します。
■肥料
実付きをよくするために6月と11月には化成肥料、3月には有機肥料を与えます。与える量は肥料袋に記載されている適量を。与えすぎもよくありません。
■摘果
木の大きさに合わせて実を間引く摘果。レモンの摘果時期は8月~9月。果樹は「葉果比」という、果実1個に対して必要な葉の数が決まっています。レモンは実1つに対して葉が25枚必要。苗の葉の数に合わせて実を間引きましょう。
■剪定
3月~4月上旬が剪定適期です。毎年込み合った枝葉を間引くように剪定しましょう。レモンは枝の先端部に花や実を付けます。樹形を整えるために枝先を全体的に切り整える剪定を行うと、実がつかなくなります。
■植替え
2~3年に一度は植替えまし
病害虫を寄せ付けないようにするためには、次の3つがポイント
1、 雨に当てない
病気の原因となることが多いカビ。雨に当てないことで病気の発生を抑えられます。
2、 気が付いたら取り除く
病気被害にあった枝葉、木についた害虫を見つけたらすぐに取り除くこと。被害の拡大を防げます。
3、 落ち葉掃除
落ち葉には病原菌や害虫が潜んでいる可能性があります。落ち葉を取り除き、鉢をきれいに保つことで病害虫予防につながります。
※レモンによくみられる病害虫
・かいよう病…果実や葉に斑点が発生しコルク状になる。
・黒点病…果実や葉に小さい斑点や褐色の汚れが発生する。
・そうか病…果実や葉にかさぶた上の傷が発生し、でこぼこになる。
・アゲハ蝶の幼虫…葉を食害し、葉が激減する。春から秋に数回発生する。見つけしだい取り除く。できれば卵のうちに除去したい厄介者。
・カイガラムシ…枝、葉、果皮に黒っぽい虫や白い繭などがこびりつく。見つけたら歯ブラシでこすり取る。
・ミカンハモグリガ…葉に白い線状の痕が発生。夏枝に発生しやすい。見つけたら葉を切り取るとよいが、気にしすぎる必要はない。
果樹栽培では、一年おきに豊作と不作を繰り返すことを「隔年結果」といいます。
レモンは隔年結果をおこしやすく、豊作の次の年は収穫が激減することがあります。摘果は木の疲労を最小限に抑えるために必要な作業です。
もし、実のならない年があったら、施肥や植替え、剪定などのしっかりとお手入れをして次の年に期待しましょう。また、花期には受精のため蜂などの昆虫の力が必要になります。屋内で育てている場合の結実は、受精作業も必要になりますので、屋外に置いて受粉してもらいましょう。
三輪 正幸(みわ まさゆき)
千葉大学環境フィールド科学センター助教。専門は果樹園芸学および社会園芸学
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