ヨーロッパの食文化を支え、16世紀頃から発展したのがハーブ料理です。そのワケは、まだ冷蔵庫も無い頃から、捕って輸送などで時間の経った素材を、臭みを押さえて美味しく食べるため。肉や魚や野菜それぞれの持つ独特な風味は、ハーブの香りで美味しく変化させることができることに気付いた先人の知恵から生まれた料理法なのです。
冷蔵保存も流通も整っている現代では、新鮮な素材と、ハーブを使って料理することは、手軽に豊かな香りの料理を作ることができる嬉しい料理法です。
和食などの家庭料理を作り慣れた方でも「ハーブは憧れるけど、どんな香りかわからないから使うのをためらってしまう」というお声も聞きますが、外食などで、子供から大人まで、すでに身近でハーブを使った料理は、よく食べられています。例えば、ピザの定番の「マルゲリータ」の上に載っているバジルもハーブですし、肉や魚に振りかけて焼くだけでおいしく調理できるとヒットした「調味塩」の中には、ハーブが数種類ブレンドされているものが多くあります。また保育園や小学校の給食でもカレーやシチューを煮込む際に、ハーブであるローリエの葉を臭み取りに入れることは決して珍しいことではありません。ですから「美味しいと感じている香りのもとが、実はハーブだった」ということは多くあります。これからのクリスマス料理や年末年始の華やかな料理、また普段の料理に取り入れたらきっと好みの味や香りにも出会えるはずです!ぜひ試してみてください。
市販されているハーブには同じ植物でも、その状態や形状によって主に3種類に分かれます。
1.フレッシュハーブ
→生のままで食べたり、煮たり、焼いたり、と幅広く使えるハーブ。
2.ドライハーブ ホールタイプ
→乾燥させたハーブ。葉の形そのものや、1~2㎜程度に細かくしたもの。
3.ドライハーブ パウダータイプ
→乾燥させたハーブを顆粒にしたもの。
購入はスーパーマーケットなら、フレッシュハーブは「野菜コーナー」に、ドライハーブなら「ハーブ&スパイス」の棚などに陳列している店は年々増え、購入しやすくなっています。ドライハーブはネットでも手軽に購入することができるようになっていますから、珍しい種類でも購入しやすくなっています。
まずはそれぞれの特徴、料理での使い方、保存方法をご紹介します。
特徴:
摘んだ生のままの状態で使用することができるハーブ。サラダなど生で食べる際にはフレッシュハーブが最適。フレッシュなので香りが強く、プロのシェフのような本格的な一皿を作ることができる。
料理での使い方:
フレッシュハーブは水で洗浄すると傷むため、市販のものは摘み取ったままパック詰めされている。使う際にはボールなどに溜めた水で、軽くすすいで洗い汚れを落とし、キッチンペーパーで水気をとってから使う。料理に入れる直前に軽くたたいて香りを引き立てることもできる。
価格:
1パック 200円~300円代のものが多い。
特徴:
フレッシュハーブの茎などを外して、葉の部分を乾燥させたもの。そのままの葉の形で乾燥させたものや、微塵切りにして1~2㎜程度に細かくしたものもある。
料理での使い方:
シチューやポトフなどの煮込み料理にも向いている。肉や魚の下味をつける際にも一緒に漬け込むのに便利で、パウダータイプより香は強いとされている。さらに香を引き立てるには、ローリエなど「葉の形をしいたものは指で2~3ヵ所ちぎってから使う」「微塵切のものは、指先でつまんでから擦りながら、少し形を崩しながら料理に入れる」と更に香が引き立つ。
価格:
ミニボトル入りで 100円~300円代のものが多い
特徴:
ドライハーブのホールタイプをさらに細かく粉末や顆粒状にしたもの。
料理での使い方:
顆粒や粉末のものなので、液体のものとも混ざりやすいので、ドレッシングや素材への下味を付けるのにも最適。
価格:
ミニボトル入り(または袋入り) 100円~300円代のものが多い。
フレッシュハーブ
生野菜と同じく、基本的には長期保存は難しいものです。購入してから2~3日など、数日で使い切るのがベスト。数日経つと、傷んで黒ずんでくるものもあります。
保存の際には水で濡らしたキッチンペーパーで根本を包んで、袋型の密閉器などにいれて「冷蔵庫保存」がしてください。(ただしバジルだけは保冷に弱いので、生花のように小さなコップに水を入れて茎の部分だけ水を吸わせるように刺して「常温保存」になります。)
ドライハーブは、フレッシュハーブに比べると長期使用や保存が可能です。
市販のミニボトルや袋入りの場合、開封前には、商品表示されている長い期間の「冷暗所保存」(紫外線、熱、湿気などを避けた場所での保存)で鮮度を一定期間保つことができますが、開封後はなるべく早めに使い切るのがベストです。空気に触れることで酸化がすこしずつ進み、香りも薄くなってくるからです。賞味期間は保存の状態で香りの持続期間は変わってくるため、一概には言えません。
どちらも、使う際に時々香りをチェックすることが必要ですが、目安としては、ホールタイプなら「開封後から半年を目安に、長くても1年以内」には使いきりましょう。
パウダータイプでも、ホールと保存方法は変わりません。ただ保存期間はホールタイプより(粒子が細かいので酸素に振れやすくなるため)短くなります。「開封後から半年程度」で使い切るのがベストです。
またドライハーブのミニボトルに中蓋がついているものは必ず香りを守るために「中蓋を捨てずに使う」ことも大切なポイントです。
フレッシュハーブ(画像左)
→湿らせたキッチンペーパーで根本を包んで保存袋にいれて冷蔵庫保存
ドライハーブ(画像右)
→密閉容器に入れ(スティックタイプ珪藻土など乾燥剤入れて)冷暗所保存
レストランクオリティーの一皿を目指すのであれば「フレッシュハーブ」で勝負!となりますが、日々大量の料理を作るレストランと違い、家庭のキッチンでは消費できるハーブの量には限りがあります。フレッシュハーブを傷ませないうちに1パック分使い切るのは、初心者にはなかなか骨が折れます。また価格の面でも数種類のフレッシュハーブをキッチンに常備するのは、費用がかさむものです。その結果ハーブを使った料理へのハードルが高くなってしまうのであれば、断然ドライハーブで普段からあれこれ料理するのがおすすめです。
フレッシュハーブならば数日で使い切らなければならないところ、ドライハーブならホールもパウダーも何週間、何か月という単位で使うことができますし、よりたくさんの食材と合わせたてみたり、料理するチャンスに恵まれるということとも言えます。
ドライハーブのパウダータイプは、ホールタイプほど風味は強くありませんが、味馴染みが良いので使いやすさがあります。魚の下味をつける際にすり込むことができ、短時間で香りがつけられるのも利点です。ポタージュスープなどに使用しても、ホールタイプでは舌に残るような場合でも、パウダーならばスープの中に溶け込むように広がってくれますから、舌に残ることもありません。また風味がフレッシュハーブやホールタイプほど強くないということは、裏を返せば、隠し味程度に少量から料理に加えて試すこともできるということ。
多めに加えてしっかりとしたアクセントにすることも、控えめに使いふんわりと香らせることも出来るので、お好みに合わせて料理がしやすいといえます。
家族の食事を作る際には「自分はハーブ料理が好きなのだけれど、家族や子供が気になるので…」という方もいますから、ドライハーブのパウダータイプは、加減しやすくその点でもおすすめです。
例えば、上の画像のように肉や魚に塗って下味をつけて調理するのにもパウダータイプがおすすめです。
上の画像では、ブリの切り身にオレガノパウダー+白ワイン+おろしニンニクを適量塗って下味をつけていますが、青魚特有の臭みは抑えられ、オレガノの豊な風味と良く合います。
初めてハーブを使おうとする方から、よくいただく質問です。たしかに気になりますね。
ハーブとスパイスの違いには諸説ありますが、どちらも「植物由来」ということが共通点。植物学的にはその植物の「葉・花」はハーブ「種・実・樹皮」はスパイスという区別があるものの、実際には、これに当てはまらず浸透しているハーブやスパイスもあるのも事実です。(タンポポのように使われるのは「根」なのにスパイスではなく「ハーブ」として扱われるものや、クローブのように「樹皮」が使われるのにハーブではなく「スパイス」として扱われるものなど。)
ですので、厳密な区別することは少し難しいものなるので、ざっくり捉えてみても良いかもしれません。 なお、本記事中のハーブとしては主に「葉・花」を使っていて、一般的にハーブとして扱われているものをテーマとしています。
筆者はタスカジの作り置き料理でも、自宅での料理でも日常的にハーブを使って料理をしますが、ハーブの香りは、簡単に肉や魚でも様々な風味に変化させてくれるので、嬉しくなります。ホッとさせてくれる和食の出汁や醤油や味噌の香りとはまた違った魅力ですが、どちらも「料理することを楽しくしてくれる香り」です。お料理することを楽しみながら、ぜひハーブ料理の達人を目指してみてはいかがでしょうか?今後のハーブシリーズでは初心者でも使い易いハーブや料理法などをご紹介予定です。どうぞお楽しみに。
ライター名:タスカジさん ふたば
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