――テーブルコーディネートを学びに来るのはどんな方ですか?
30代前後の新婚さんと、子育てが終わって時間にゆとりができた60代の方が多いですね。特に若い方は、これから食事づくりを頑張りたいと思っていらっしゃる方がほとんどです。
食事の時間は、家族がコミュニケーションを育む貴重なひととき。お子様がいる家庭では特に大切です。実際に、いつも一人で食事をしているお子様は、家族が揃って食卓を囲んでいるお子様と比べて、心身に問題が生じがちという統計もあるそうです。共働きの家庭では家族で食事をする時間がなかなかとれないかもしれませんが、仕事前に「行ってくるね」とお子様の肩に触れるなど、ちょっとしたコミュニケーションをとるだけでも効果があります。
――仕事でお子様と入れ違いになってしまう家庭でも、できることがあるということですね。
自炊をする時間がなくて、出来合いの食べ物を準備する時にも、お皿に盛りつけたり、「お留守番よろしくね」とメッセージを添えてあげたり、ちょっとした工夫で受け取る気持ちが全く違います。
本物の器を使うことも大切です。2~3歳になったら、プラスチックではない食器を使ってあげましょう。時には食器が割れてしまうこともあるでしょうが、お皿が割れる経験をすることも大切ではないでしょうか。
【写真】日本テーブルデザイナー協会認定校「アトリエRecoco」を主宰する谷崎玲子さん
――そうした心遣いの延長線上にテーブルコーディネートがある、ということでしょうか?
テーブルコーディネートとは、食卓を彩って食空間を演出すること。高級な食器を並べて豪華なディナーをするイメージをお持ちの方も多いと思いますが、一番の目的は「わー、すごい!」と家族やゲストに喜んでもらい、そこからコミュニケーションが生まれることです。お皿やグラスの並べ方を学んで実践してみたり、箸置きを使う習慣をつけたり、ちょっとした心がけで食卓が一変します。「あそこにしまってある豆皿などを使ってみよう」など、家にある食器でイマジネーションも広がりますよね。
【写真】谷崎さんは、恵比寿や高輪でテーブルコーディネート教室や食育講座を開いている他、講習会やセミナーで全国各地を飛び回っている。
――家族との食事やホームパーティなどの際は、大皿料理を作って取り分けているご家庭も多いかと思います。個々にセッティングをすることに意味があるのでしょうか?
大皿料理にもメリットがあり、みんなでひとつの料理をシェアすることでコミュニケーションが生まれると思います。ですが、いつもの料理をお膳に並べることで、より美味しく食べられるケースも多いんです。コーディネートにはそういった、魔法のような力があります。ランチョンマットがなければ、画用紙で代用できますし、布のナプキンがなければペーパーナプキンで十分です。ペーパーナプキンをグラスに入れて飾る、ネームカードを添える、テーブルランナーの代わりにレースナプキンを並べるなど、100円ショップで手に入る材料だけでよそいきのコーディネートができて、サプライズを演出できます。
――いつもと同じ食事でも、装いが変わると新鮮な気持ちになったり、おいしそうに感じたりするというのは分かる気がします。他にもポイントはありますか?
テーブルコーディネートに季節感を取り入れることですね。私は13年前にテーブルコーディネートを学び始めましたが、「日本にはこんなにたくさんの季節行事があるのか!」と驚きました。具体的には、半月ごとに季節の変化を示す「二十四節気」や、さらに5日おきに分けた「七十二候」に沿って行事があります。中でも、正月やひなまつり、子どもの日、七夕、9日9日の重陽の節句などは特に大切です。雛人形を出したり、柏餅を食べたりするだけで季節を感じますし、旬の食材は一般的に、旬の時期が最も美味しく栄養価も高まります。また、日本には四季を感じさせる素敵な和食器がたくさんありますから、取り入れると良いでしょう。箸置きや箸袋を手作りして、簡単に季節感を出すこともできます。
【写真】谷崎先生のレッスンは、テーブルコーディネートと簡単なフラワーアレンジメント、講義がワンセットになっている、充実の内容だ。
<取材協力>アトリエRecoco
斎藤若菜 住宅ライター
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。
参照記事:https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-1170/
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