年収1,000万円が高収入であることは、「平成27年分民間給与実態統計調査(国税庁)」のデータを見るとよくわかります。これによると、男性の平均年収は521万円(平均年齢は45.4歳)、また、男性の給与所得者3,831万人のうち、年収1,000万円超の人の割合は6.8%(約15人に1人)です。年収1,000万円は、ごく限られた人だけが得られる収入だということがわかります。
若い会社員にとって、年収を1,000万円の大台に乗せることは、ひとつの目標でもあるでしょう。これだけの年収があれば、生活水準を高くしても比較的楽に暮らしていけると思えるでしょう。
上記の事例で、年収1,000万円の場合、手取り額(可処分所得)がどの程度になるか計算してみましょう。
住宅価格の安い地方に住んでいる場合や、都会であっても子どもがいない夫婦の場合は、年収1,000万円、手取り730万円あれば、ゆとりある暮らしを送ることができ、老後の資金もさほど苦労せずに準備できるしょう。しかし、住宅価格の高い都会に住み、子どもを私立学校に通わせる場合、家計の運営は思ったほど簡単にはいきません。
まず、住宅ローンの返済額について考えてみましょう。住宅金融支援機構の「2016年度フラット35利用者調査」によると、新築マンションの平均購入価額は、首都圏で4,754万円、近畿圏で4,267万円、東海圏では3,621万円となっています。
仮に首都圏で住宅ローンを借りてマイホームを取得し、ローンの条件が「借入額4,000万円、金利1.3%、返済期間30年、元利均等返済方式、ボーナス返済なし」であった場合、毎月返済額は13万4,241円、年間返済額は161万円になります。
次に教育費をみてみましょう。
上記は小学校・中学校・高校の年齢別および学年別の学習費総額です。
上の教育費のデータをみると、私立の学校に子どもを通わせる場合、子ども一人につき1年間で100万円以上かかることがわかります。大学の費用は金額が大きいため、必要資金の一部を長期的に準備したとしても、毎年の手取り額から子ども一人につき年間100万円程度は支出をする必要があると見込んでおいたほうがいいでしょう。
住宅ローンの返済額が年間160万円(月13.4万円)、子ども二人が同時期に私立の学校に通って年間200万円かかるとすると、先の例の年収1,000万円の人の手取り額730万円のうち、約半分の360万円が住宅ローン返済と子どもの教育費に使われることになります。
残りの370万円から食費、日用品費、医療費、お小遣い、水道・光熱費、通信費、マンション管理費、修繕積立金、固定資産税、生命保険料などを負担しなければなりません。
上に主な支出項目の平均的な金額を記載しています。
合計額は約315万円となっています。
手取り額730万円から、住宅ローンと教育費の合計額360万円、さらに主な支出項目の平均的な金額を合計した315万円を差し引くと、残るのは55万円です。 残金55万円の中から、家族の旅行やレジャーなどの費用を捻出し、さらには、貯蓄もする必要があります。自動車を保有するなどは難しいでしょう。 この家計は、実際には収支がほぼギリギリで、貯蓄をする余力はほとんどないのではないでしょうか。
年収1,000万円で贅沢をせずに普通の日常生活を送っていれば、希望するライフイベントがすべて実現できるわけではありません。住宅ローンの返済と子ども二人が私立の学校に通う時期が重なると、年収1,000万円世帯でも、家計収支がギリギリになる状況が続き、住宅ローンの繰上返済をするための貯蓄はおろか、夫婦の老後資金を準備する余裕もない状況になるかもしれません。
そのような事態に陥らないようにするには、早くから長期的なライフプランを立て、個々のライフイベントの実現にいくらの資金が必要になるかを見積もることです。
そして、例えば、「子どもを私立の学校に通わせる場合、小学校からにするか、あるいは中学校、高校からか?」、「二人の子どもの教育費が重なる時期はいつからいつまでか?」、「マイホームの予算はいくら程度にするか?」、「大学に必要な資金を準備できる時期はいつか?」、「夫婦の老後資金の準備はいつからできるか?」などを検討し、実現したいライフイベントや予算に優先順位をつけることなどが必要です。
1,000万円の年収があると、つい気持ちが大きくなり、深く検討せずマイホームの契約をしたり、子どもの私立学校への進学を決めたりしてしまいがちです。後悔しないためにも、慎重に検討をしたいものです。
参照記事:https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-1197/
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