住宅ローン減税とは、借りた住宅ローンの年末残高の1%に相当する額が、所得税から10年間控除される制度です。対象となるローン残高の上限は4,000万円(長期優良住宅または低炭素住宅に認定された住宅は5,000万円)なので、毎年の控除額は最大40万円(同50万円)です。10年間では最大で400万円(同500万円)の控除が受けられる大型減税です。控除額が納めた所得税より大きい場合は、翌年の住民税からも控除されます(上限13万6500円)。なお、減税を受けるには住宅の床面積(登記簿上)が50㎡以上であること、住宅ローンの返済期間が10年以上であることなど所定の要件を満たす必要があります。
住宅ローン減税を受けるには、住宅を購入して入居した翌年に確定申告が必要です。給与所得者にとって確定申告は馴染みの薄い制度かと思いますが、申告すれば給与から天引きされた所得税から控除額分が戻ってくるので忘れずに手続きしましょう。確定申告の期間は例年、2月15日から3月15日ですが、住宅ローン減税のように税金が還付される場合は2月14日以前でも申告できます。
確定申告をする際は所定の申告書に収入の内容などを記入し、税務署に提出します。申告書は税務署でもらえるほか、国税庁のWebサイトからダウンロードもできます。また申告する方法も税務署に持参するほか、郵送やパソコンでの電子申告も可能です。ただし、現状では平成26年分の書類しか入手できないので、来年申告をする場合(平成27年分)は、年が明けてから申告書などの準備をすることになります。
なお、住宅ローン減税の申告をする場合は、確定申告書のほかに「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」(以下、計算明細書)という書類の提出も必要です。こちらも税務署や国税庁のWebサイトからも取得ができます。計算明細書には、家屋や土地の取得対価、つまり購入価格を記入します。
添付書類のうち「住宅取得資金に係る借入金額の年末残高等証明書」は、住宅ローンを借りた金融機関から送られてきます。
住宅ローン減税の申告をする際、夫婦で収入合算して住宅ローンを借り入れている場合は、契約上の位置づけによって住宅ローン減税の対象かどうかが異なるので、注意が必要です。連帯保証で借り入れている場合は、主債務者のみが対象となるので、連帯保証人は住宅ローン減税を受けることができません。連帯債務やペアローンで借り入れている場合は、夫婦それぞれが住宅ローン減税の対象となります。どちらのケースも、年末残高等証明書は夫婦それぞれ分送られてきますが、連帯債務で借り入れている場合は、注意が必要です。記載されている金額は全体の借入金額なので、計算明細書にはそれぞれの負担割合に応じた借入金額を記入することになります。負担割合は自由に決められますが、住宅の持分比率や収入の比率に応じた割合にするのが一般的です。
また、計算明細書には取得対価(購入価格)も記入しますが、夫婦などで住宅を共有している場合は、その持分比率をかけた金額を記入することになります。住宅ローン減税の対象となるローン残高は、上記の負担割合に応じた借入金額と、持分比率をかけた取得対価のどちらか少ないほうの金額になります。なお、店舗併用住宅などの場合は、さらに居住用部分の床面積の割合もかけた金額です。
ちなみに、確定申告が必要なのは入居の翌年だけで、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きできます。初年度に確定申告をすると、税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」という書類が送付されてくるので、金融機関からの年末残高証明書とともに勤務先の担当者に提出すれば手続きは完了です。税務署からの書類は対象年数分まとめて送られてくるので、大切に保管しましょう。紛失した場合は税務署に再発行してもらう必要があります。
住宅ローン減税の手続きは、確定申告などが必要となるので難しそう、面倒そう、と思われがちです。国税庁のWebサイト内の確定申告書作成機能を利用すれば、減税額などの計算は自動的に行ってくれます。また、記入方法がわからない場合は、各税務署に相談コーナーも設けられますので、直接聞きにいくこともできます。金額が大きい税額控除ですので、忘れずに手続きしてください。
大森広司 住宅ジャーナリスト
住宅ジャーナリスト
SUUMO、All About、日経DUALなど情報誌やネットで住宅関連全般にわたって取材・執筆活動を続けている。著書に『はじめてのマイホーム 買うときマニュアル』(日本実業出版社)、『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。
【参照記事】https://magazine.aruhi-corp.co.jp/005-00056/
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