ふるさと納税が脚光を浴びたのは2015年のこと。制度改革により寄付控除上限額が2倍に引き上げられたこと、給与所得者が確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる「ワンストップ特例制度」が導入されたこと(1年間の寄附先が5自治体までの場合)、それを受け、寄付をすると特産品を貰える自治体が増えたことから、利用者も急増しました。
自治体が競って豪華な返礼品を揃え、一大ブームを巻き起こしたふるさと納税は、地方活性化に大きく貢献しています。その反面、いつの間にか「豪華な特産品」を貰うための制度になってしまい、本来の趣旨から外れてしまった側面も。物産品がない都市部など、ふるさと納税をしてもらえない自治体が赤字になったり、返礼品にお金を掛け過ぎたりすることで、住民サービスに十分なお金を回せていない現状が問題視されています。そこで総務省は、「ふるさと納税の返礼品価格は、寄付額の3割まで」「商品券や家電製品など換金しやすい返礼品は控えるべき」といった内容の要請を通知。法的拘束力はありませんが、早速返礼品の再考を進めている自治体も少なくありません。
ふるさと納税制度ブームは、各自治体に様々な影響を与えています。東日本大震災で工場を失った水産加工品会社は、ふるさと納税の返礼品に活路を見出し、震災前の水準まで売り上げを回復しました。岩手県陸前高田市では、障がいのある人たちに返礼品の箱詰め作業を依頼することで、障がい者の雇用機会が増加し、自立をサポートする仕組みができました。
一方、1万円を寄付すると7,000円分の「かつうら七福感謝券」を提供し人気を集めてきた千葉県勝浦市は、ネットオークションによる転売などの問題により、2017年2月末で廃止。大手家電メーカーなど電化製品の工場がある長野県伊那市では家電製品の返礼品が人気ですが、総務省の要請を受けて高額な家電製品などの取り扱いを終了するなど、返礼品は今後、縮小すると予想されています。
筆者は昨年から、ふるさと納税を行っています。今年も少額ではありますが、せっかくの制度を利用したい。そんなことを考えながらネットサーフィンをしていた時に、以前から気になっていた宿のホームページを目にしました。
そこには、能登町で1万円以上のふるさと納税を申し込むと、返礼品に加えて「のっとりんパスポート」による優待が受けられることが記載されていました。具体的には、能登町の指定された宿泊施設で1泊すると1人3,000円の割引となり、1枚のカードで4名まで、2泊分の利用が可能。恩恵をフルに受ければ、宿泊料から最大2万4,000円も安くなるというお得な制度です。
【写真】「能登イタリアンのお宿ふらっと」のホームぺージでは、ふるさと納税による宿泊施設優待サービスを紹介している。
能登町は5年前に訪れて以来「もう一度行きたい」と思っていたものの、羽田空港から能登空港へのフライトが1日2往復しかないこと、2005年に能登線が廃止されてからは交通手段が乏しく、レンタカーで移動するしかないことから、足が遠のいていました。でも、「せっかくお得な制度があるのだから、利用しない手はない!」と思い、まずはインターネットサイト経由で、ふるさと納税の申し込みを行いました。
【写真】能登に本店がある人気ジェラート店の商品。能登の塩や特産品の魚醤「いしり」など地元の食材を使ったジェラートを食べて、能登に想いを馳せる。
のっとりんパスポートは、商品が届いた翌月に郵送で到着しました。能登町役場によると、月に1回、申込者を集計後にまとめて送っているとのこと。旅行したい時期が決まっている場合は、早めの申し込みをお薦めします。
ちなみに、筆者が利用した当時、のっとりんパスポートを利用できるのは平日のみでした。今年度からは土曜日や祝祭日前日も原則可能となり、ますます便利になっています。
【写真】0のっとりんパスポートはナンバリング管理されているため、ふるさと納税利用者とその同行者以外は利用できない。転売サイトなどで見かけて購入しても割引にはならないのでご注意を!
ちなみに、能登町ではのっとりんパスポートの他にも、旅行者にお得な制度を用意しています。能登空港に到着後、能登町の指定された宿泊施設を利用した場合、大人1人につき2,000円、レンタカーを借りて同様に宿泊すれば、車1台につき2,000円の助成を受けることができます。今回、筆者はこれら全てを利用しました。2人で宿泊したので、のっとりんパスポートを提示して6,000円、飛行機の利用で2人4,000円、レンタカーの利用で2,000円。宿泊料から、2人で1万2,000円も割引となりました。
【写真】見附島など観光地を巡ったり、道の駅へ行ったり、輪島の曳山祭りに遭遇したり。今回選んだ返礼品を発送するジェラート店も訪れた。宿泊や飲食、観光など現地でお金を使うことが、地域の活性化に繋がるはずだ。
筆者は今回、前述した「民宿ふらっと」に宿泊しました。ふるさと納税制度が導入されてから、宿泊客に変化はあるのか、女将の船下智香子さんにお聞きしたところ、「宿泊者数が急激に増えたということはないけれども、宿泊者に制度の案内をしていることも奏功し、常連さんが今までよりも頻繁に足を運んでくれたり、リピーターが増えたり、ある程度の効果を感じている」とのこと。筆者も実際に制度を利用して「また近いうちに行かなくては!」と心に決めています(笑)
【写真】能登の海を一望できるロケーションにたたずみ、能登の伝統食材を使ったイタリアンを味わえる人気の宿。ふるさと納税制度を活用すればお得に宿泊できる。
ふるさと納税制度の趣旨は本来、応援する自治体に貢献すること。納税者が税金の使い道をある程度選べることが、実は一番の魅力です。昨年は地震で大きな被害を受けた熊本県でふるさと納税の申し込みが急増するなど、「応援」の気持ちを忘れていない納税者がたくさんいることも事実です。
返礼品の還元率に目を光らせなくても、自治体や私たち納税者が節度ある対応を心掛ければ、ふるさと納税制度はこれからも失速することなく続くでしょう。ふるさと納税に興味がある方は、「自治体への還元」も視野に入れながら利用してみてはいかがでしょうか?
のっとりんパスポート http://www.notocho.jp/feature/nottrin-passport/
斎藤若菜 住宅ライター
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。
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