住宅ローン延滞者の転落人生 金融機関担当者が目の当たりにしたエピソード集

住宅ローン延滞者の転落人生 金融機関担当者が目の当たりにしたエピソード集
投稿日: 2017年8月31日 更新日: 2017年8月31日
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夢のマイホームを手に入れた方のほとんどが、住宅ローンを借り入れ、毎月返済を行っています。しかし、中には返済が滞り、マイホームを失ってしまったり、借金地獄に陥ったり、その結果自己破産してしまうケースもあるのだとか。

今回は、金融機関の債権回収業務に10年以上従事する担当者に、住宅ローンの借り入れ後、返済を継続できなくなってしまった方々のエピソードをお聞きしました。

住宅ローンの延滞者になるのはどんな人?

住宅ローンの延滞者になるのはどんな人?

――今回は、「住宅ローンの延滞者」についてお話を伺いますが、ほとんどの方にとって未知なる世界の話だと思います。

はじめに声を大にして言いたいのが、住宅ローンの借り入れをした多くの債務者は、延滞することなく返済を続けています。今からお話しするのは、一部の方のことだということを念頭に置いて下さい。

――延滞者となってしまうのは、どんな方なのでしょうか?

多いのは、“ローンを組んだ当時の仕事を続けられなくなってしまった方”ですね。病気やケガを理由としている人もいらっしゃいますし、不況の折に解雇されてしまい、再就職先が見つからない方、見つかったものの前職からの収入減により延滞してしまう方も多いです。リーマンショックの影響で延滞が発生するケースもありました。

【ケース1】1,000万円もの繰り上げ返済をしていたのに、離婚で債務不履行に

具体的には、どのような事例があるのでしょうか。まずは、離婚が原因で返済不能になったケースからご紹介します。

結婚後、都内のマンションを購入し、夫婦で連帯債務契約として7,000万円程度借り入れ。順調に返済が続き、半年後には1,000万円の繰り上げ返済を実行していました。しかし、5年ほど経つと延滞が始まりました。奥様と電話が繋がり、家庭内別居状態であることが判明。奥様によると、ご主人がお金を管理しているものの、ルーズで困っているとのこと。結局、奥様が弁護士に債務整理を依頼。物件は競売によって処分されました。競売での売却代金では清算しきれなかったため、残債を返済する必要があり、現在も返済中です。

【ケース2】所有権を夫に移しても、連帯債務の責任は消えない

続いて、連帯債務で借り入れていた夫婦のケースです。

埼玉県の中古住宅を購入し、夫婦で連帯債務契約として1,400万円ほど借り入れ。契約面談時にはご夫婦で来店し、1歳になるお子様のことを嬉しそうに話す姿が印象的でした。その後、時々延滞をしながらも何とか返済を続けていた様子でしたが、8年ほど経つと延滞が目立ち始めました。督促のため電話をするも、なかなか連絡がとれませんでしたが、やっと奥様と電話が繋がりました。聞けば、離婚調停の結果、住宅ローンはご主人が支払うことになっているとのこと。奥様の持分はご主人に移し、奥様は既に家を出ているので「自分はもう支払わなくて良いはず、夫が払うべき」と主張されていました。しかし、持分を移しても返済義務は残ります。結局、ご主人も返済不能に陥り、現在は任意売却に向けて手続き中。残債次第では破産を検討するとのことです。

【ケース3】夫の失業~離婚の末、マイホームは任意売却に

【ケース3】夫の失業~離婚の末、マイホームは任意売却に

ケース3はご主人の失業が原因によるエピソードです。

20代半ばのご夫婦が、富山県で戸建てを購入。2,400万円の借り入れをしたものの、2年後にご主人が失業してしまいました。奥様曰く、就職活動はしているものの働く意欲が見られないとのこと。奥様は離婚してご自身でローンを払う覚悟でしたが、なかなか離婚に応じてくれないとのこと。結局は、ご主人が家を出て行き離婚。しかし、やがて奥様1人でローンを支払うのは難しくなり、元ご主人は返済意識に欠けるため、物件は任意売却で処分することになりました。任意売却は債務者全員の書面での同意がないとできないため、非協力的なご主人の同意を取るのになかなか苦労したようです。結果、任意売却は成立、残債務をかなり減らすことができました。

【ケース4】住宅ローンの延滞は一切ないものの、税金の滞納で自宅を処分

続いては、住宅ローンを一度も滞納したことがない方の、レアケースです。

とある県で住宅を購入し、5,500万円を借り入れ、月々の住宅ローン返済額は20万円超で高額でしたが、延滞は一度もなく支払を行っている方でした。ある日、税金を長期間滞納していたことが原因で、その回収のために自宅を「公売」にかけるという通知が市から届きました。税金の支払は放置していたわけではなく、滞納分の支払方法については税務署と話がついていたそうなので、市とはかなり揉めたようですが、市に押し切られてしまった形。公売代金により滞納税金が支払われた後の、当社での債権回収額はでたった1,800万円でした。当然、高額な残債があり、賃貸住宅に引っ越してからも、毎月お支払いいただいております。

自分が「滞納者」とならないためにすべきこと

――ここまで、様々な延滞者のお話を伺いました。マイホームが競売に掛けられるだけでも辛いのに、ほとんどの方がその後も残債を抱え、賃貸住宅の家賃を払いながらローンの支払いを続ける……恐ろしいですね。

住宅を処分した後の残債は、無担保の債務となります。知り合いのサービサー(債権回収会社)から聞いた話によりますと、年14%程度の遅延損害金が残金に付加されるため、今まで以上に支払いが厳しくなるケースが多いそうです。ただ、金融機関や、金融機関から依頼されたサービサーは「早期・極大回収」を望んでいますし、滞納者も、全部終わらせてすっきりとしたいところ。

そこで、現在の価値で引き直し計算をして、一括返済して支払いを終了できる額を提示するのだそうです。親族などからお金を借りて、対応される方が多いようですよ。

――利息14%で返済を続けるよりは完済した方が良いでしょうが、家族を巻き込むのも心が痛みます。こうした事態に陥らないために、住宅ローンを組むタイミングで気を付けるポイントはありますか?

事前に無理のない返済計画を立てることに尽きると思います。収入面等の条件を満たして審査が通れば住宅ローンを組むことは可能ですが、延滞者から話を聞くと、実は返済開始当初から余裕はなかったという事例も少なくなく、こうした場合、臨時の出費があるとローンを延滞してしまう危険性が発生します。

また、ローンを組んだ後に子どもが産まれれば支出は当然増えます。お子様の進学にともなう学費の工面を延滞理由として挙げる方も多いです。これらは将来起こりえることとして想定できるはずです。月々の返済金額は、無理のない範囲に設定しておくことをお薦めします。

――肝に銘じておきます(笑)。それでも万が一、返済を続けることが難しくなってしまったら……どのように対応したらいいのでしょうか?

延滞が続くお客様にはこちらから何度もご連絡をしますが、「電話に出ない」「書面が届いても、自宅を訪問しても無反応」の状態が続き、いざ競売が決まった時点で慌てて連絡を下さるケースも見受けられます。こちらからの連絡に応答し、事情を説明していただければ、多少の猶予をすることができる場合もあります。支払いができない状況で連絡をするのは勇気がいると思いますが、“音沙汰なし”は避けるべきですね。

執筆者プロフィール

斎藤若菜 住宅ライター
ラジオパーソナリティを経てフリーライターに。住宅・インテリア・不動産分野を中心として、介護・グルメ・トラベルなどのジャンルでも執筆。リフォームや注文住宅関連の住宅情報誌をはじめ、雑誌、書籍、新聞、インターネットなどのさまざまな媒体で取材・執筆を手掛けている。ARUHIマガジンでは、「住宅購入者ストーリー」などを担当中。

【参照記事】https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-1168/
https://magazine.aruhi-corp.co.jp/0000-1191/


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